BtoCから、BtoB・BtoGへ
「私たちNECは2020年にパーパスを策定し、現在社内外に発信している最中です」そう語るのは、NECで、コーポレートブランディングを担当する、石川貴章氏だ。
NECの創立は1899年。現在は連結子会社数を含め約300社におよび、「海底から宇宙まで」という言葉に表わされるように、先進IT技術を活用した社会インフラ関連の事業やネットワークサービスなどを展開している。
かつて、NECはPCや折りたたみケータイなどのBtoC製品の製造販売と、BtoB事業の両方を事業領域として手掛けていた。そこから2013年に「社会価値創造企業への変革」をキーワードとして掲げ、事業ドメインをBtoB、BtoGへとシフトした。
ブランドステートメントをパーパスへ
NECは「Orchestrating a brighter world」というブランドステートメントと、続くメッセージが組み合わさったものをパーパスと位置付けている。
人と社会の両方に対しITCやネットワーク、その他の最先端技術を活用して、安心や安全といった社会価値を創造していくという意思が表明されたものだ。
「特徴的な点は、元々あったブランドステートメントがパーパスへと昇格したことです」(石川氏)
時系列を整理すると、最初に起きたことはブランドステートメントの策定だ。
2013に発表された中期経営計画立案の際に、これから先の100年を見据えて何をしていくか? を当時のボードメンバーが考えた。事業ドメインを再定義し、社会価値創造企業へと変革する想いを落とし込むことで生まれたのが、ブランドステートメントだった。一方で、社員の行動規範である「NEC Way」は改定されず維持されたままだった。
2018年に改めて変革の必要性が議論され「119年目の大改革」と称した様々な取り組みが進められる中で、NEC Wayも改定されることとなった。また、NEC Wayを整理する中でパーパスの必要性が浮かび上がり、検討の末にブランドステートメントをパーパスに位置付けることとなった。
「改定されたNEC Wayの浸透がパーパスの浸透につながり、ブランドの浸透にもつながる点がNECのパーパスの特徴です」(石川氏)
ではなぜ、パーパスの策定が必要となったのだろうか? 石川氏は「重要なポイントは2つ」だと語る。
一つ目は、企業が社会的な存在であるということをより強く意識していくため。2つ目が、ミッション・ビジョンとの違いを明確にすることだ。NECではこれまでもミッションやビジョン、バリューを策定していた。しかしこれらは一人称視点の「私はこうしたい」という使命感が強い内容だった。パーパスの策定では、これからの企業は「社会においてこうありたい」という存在理由を説明する必要があると判断したからだ。
こうした2つの理由から、思いや企業理念、SDGsの観点なども踏まえ、ブランドステートメントを活かしたパーパスが生まれた。