垂直型に顧客とつながるブランド群「DNVB」
デジタルが浸透した現代において、24時間365日顧客とつながり続けられることが当たり前になってきている。顧客とのつながりを強めるための施策として、D2CやOMOがよく話題に挙がるが「仕組みだけを整えても、必ずしも成功するとは限りません」と、ビーアイシーピー・データ代表取締役の渡邉氏は語り、次のように続けた。
「成功するために重要な点は、今回のテーマでもある『真実の瞬間作り』だと考えています。デジタルマーケティングに従事していると、レポートの数字だけを気にして最適化をする状況に陥りがちです。しかし、どんな施策でも必ず『人』がいます。だからこそその人にとっての真実の瞬間を、企業として生み出していけるかが重要になってきます」(渡邉氏)
セッションの冒頭ではマーケティング面で、顧客とつながり続けられる方法を解説。それを実践している、DNVB(Digitally Native Vertical Brand)を紹介した。DNVBとは、確固たる理念を持ち、発信しながら、お客様とダイレクトにつながってデータをやりとりし、サービスを改善していくブランド群を指す。これらは従来のブランドとは異なる手法を取っているとベストインクラスプロデューサーズのマネージャーである伊藤氏は語った。
「従来のマスブランドは、認知を広く取り、フェーズが進んで購入に近づくほど少数になる、ファネル型のモデルを取っています。
一方でDNVBは、バーティカルと名前がつく通り、垂直型です。自社が示した理念に共感する、共通の価値観を持つお客様とダイレクトにつながる。そして信頼をベースとしてお客様のデータをお預かりし、活用することによってブランド体験やプロダクトサービスを進化させ、パイプ型につながっているのです」(伊藤氏)
一方でDNVBにも課題があるという。BICPグループで、DNVB数社の決算書を分析して抽出したデータを見ると、売り上げ規模はかなり大きくなっているものの、ほとんどの企業が赤字だ。
ブランドとしても知名度も出てきて、顧客とつながり続けるという点はクリアしているものの、収益は生み出せていない。では、どのようにして収益を生めばいいのだろうか。
収益化につながる顧客体験の要件とは
伊藤氏はまず、「つながり続ける」ことと「収益」の関係性について、「紙芝居」と「飴玉」にたとえて紹介した。
紙芝居屋さんのビジネスモデルをご存じだろうか。広場や公園に紙芝居屋が自転車で現れ、「紙芝居だよ、見においで」と呼びかけると子供達が集まってくる。この段階では、紙芝居屋はコンテンツを提供するだけで、まだ何も売り上げを立てていない。しかしその場で紙芝居屋が販売している「飴」。これを子供達が購入し、なめながら紙芝居を楽しむ。すると初めて紙芝居屋の売り上げが立ち、収益化されるのだ。
この「つながり続ける」仕組みが紙芝居屋の「コンテンツを見せる部分」で、「収益化」をするところを「飴玉」と呼ぶ。本セッションでは、この「紙芝居」と「飴玉」にまつわる以下、2つの論点について語られた。
1つ目の論点:「飴玉」につながる「紙芝居」の要件は何か
=収益化に向けた、つながり続ける仕組みとはどういうことか
2つ目の論点:「紙芝居」を活かした「飴玉」の要件は何か
この2つの論点について、米国で急成長中のサービスで、ペット用品を定期便で届けるChewy(チューイー)の事例を紹介した。