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MarkeZine Day 2022 Autumn

オンラインで合理化し、オフラインの非合理に投資――チョコレートベンチャーMinimalのOMO設計


 コロナ禍を経て、リアル店舗を顧客接点の起点にしていた企業も、ECやオンラインでの展開を余儀なくされた。カカオの現地買い付けからチョコレートの製造までを一貫して行う東京発のBean to Barチョコレートブランド「Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)」もその一つだが、店舗販売ならではのブランド価値を損なわずにオンラインでの顧客接点の拡大を成功させたという。本記事では、MarkeZine Day 2022 Autumnに同社の取締役COO緒方恵氏が登壇。その成功の裏側をレポートした。

チョコレートを新しくするMinimal

 Minimalは、Baceが運営するチョコレートブランド。世界中のカカオ農園に直接足を運び、良質なカカオ豆を仕入れ、自社工房で職人が全て手仕事で製造し販売しているのが特徴だ。

クリック/タップで拡大
同社は「チョコレートを新しくする」をミッションに掲げ、
チョコレート産業のエコシステムにも新しい風を吹き込んでいる。
(クリック/タップで拡大)

 チョコレート産業では、カカオ農家の貧困は大きな課題だ。そこで同社は、従来の中間流通を抜く一気通貫したD2C(直販)モデルを採用し、持続可能性のあるエコシステムを推進している。

 「既存の産業構造にいない新参者の私たちが新しいモデルをマーケットに提示することで、チョコレートに関わる全員が幸せになる持続可能なエコシステム作りを目指しています」(緒方氏)

Minimal - Bean to Bar Chocolate -(株式会社βace)<br />取締役COO 緒方恵氏
Minimal - Bean to Bar Chocolate -(株式会社βace)
取締役COO 緒方恵氏

コロナ禍で下した2つの決断

 そんなMinimalが壁にぶつかったのが2020年の2月。バレンタインデー、ホワイトデーを控えたチョコレート業界の最繁盛期に、新型コロナウイルスの拡大が大打撃を与えた。リアル店舗が中心のブランドだったため、売上は急速に減少した。

 さらに2020年4月に緊急事態宣言に入るとお客様にも「来てください」とはいえない状況。緒方氏は「いくら心を込めて作ってもお客様に届けられないと、存在意義を喪失したように感じた」と当時を振り返る。

 そこで、Minimalは2つの大きな決断を下した。

 一つ目は、送料無料セットの販売だ。催事が消滅し、大量の商品が行き場をなくした。廃棄するくらいだったら赤字でもお客様へ届けようと、送料無料セットの販売を決めたという。実施にあたって社内で議論もあったが「チョコレートやスイーツが提供する価値」に立ち戻って実行するに至った。

 「Minimalが、この状況でお客様に提供できる価値は、甘いものを食べて幸せになっていただくことでした」(緒方氏)

 その思いが二つ目の決断、オンラインへの業務形態変更にもつながった。リアル店舗を主体に成長してきたMinimalは、五感の体験を大切にしているブランド。店舗に来店してもらい丁寧に接客することでファンを増やしてきた。

 しかし状況は長期にわたると踏んで「リアルでの成功体験を捨てるという決断をした」と緒方氏。工房兼店舗であった白金高輪の店舗機能を閉じ、製造に特化。ECで販売するためのおいしい冷凍スイーツ開発のためにレイアウトや機材の見直しを急ピッチで行った。

 この意思決定によって1店舗分の収益が失われるのにも関わらず、大規模な機材投資をするというのは、かなりチャレンジングな決断だ。経営層の強い意志が感じ取れる。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/30 09:49 https://markezine.jp/article/detail/40370

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