事例2:男性会社員のベーカリー利用増加の背景は?消費行動の変化を捕捉
2つ目の事例として、渋谷氏は「コロナ禍の影響に対応するため、顧客層や行動の変化を把握したいベーカリー業態」を紹介した。まずは顧客を決済行動から、ベーカリー利用の増減で分類。そしてそれぞれを「属性×決済行動×意識データ」で分析した。
カードの基礎情報から利用減少者層は、50代以上の女性のファミリー層かつ世帯年収は800万円だとわかった。決済情報から、コロナ禍以前は旅行・レジャー・外食などを楽しみアクティブに活動していた人々だということもわかった。またコロナ禍で、デリバリーや健康食品の購入が大幅に増加している。
アンケートの結果から、「健康意識が高まり、料理はするものの、デリバリーでプチ贅沢をしている」ことも見えた。ベーカリー利用が減少した理由をアンケートすると、「外出できないストレスをパンやお菓子作りで発散している」「健康意識が高まったため、パンは不健康というネガティブな理由が付いてしまった」ことが浮かび上がった。
同じ手順で利用増加者を見ると、20~30代の独身男性かつ在宅ワークの会社員が多い結果となった。コロナ禍で、行動範囲が自宅周辺と一気に狭くなり、衣服・旅・遊び関連のシェアは一気に下がった。逆に、スーパー・コンビニなどの食品関連は増加した。
アンケートからは、朝の散歩が習慣化し、朝から営業する近所のパン屋を目的地として散歩していることがわかった。また「隙間時間で食べられるベーカリーパンは便利で、家の中にいることが多いため味の変化を楽しめるバラエティ性が欲しい」というニーズも見えた。
このように、決済行動や意識データを元にすると、消費行動およびその背景となった意識・態度変容の要因がわかる。「背景理解は、施策実施時の単価の上り幅に影響します。アンケートとプロモーションで、結果検証までつなげられるのが当社の強みです」と細谷氏は述べた。
企業の持つデータとの組み合わせで広がる可能性
前述のCustella Research以外のCustellaシリーズにも、AIは活用されている。「ライフイベント・ライフスタイル・商品サービスの予測など、幅広い属性や購買履歴を持つキャッシュレスデータから、約1200項目の説明変数を駆使したAIモデリングをしています」と細谷氏は語る。
さらに、キャッシュレスデータには購買時間・性別・年代などが含まれるため、小売店のPOSデータやウェブの行動データとの結合性が非常に高い。たとえば、小売店が持つ自社商品単位のデータにキャッシュレスデータを突き合わせると、消費者行動を別角度から理解することができる。
「自社データでは、購入頻度、単価、ロイヤルティのすべてが低め設定だった方が、実は競合店舗では高頻度に高級志向の買い物をしていることがあります。ロイヤルティ向上のポテンシャルがあるお客様だと判別できるので、新たなプロモーションを実施し、検証できるのです」と細谷氏は解説した。
したがってCustellaシリーズと企業データを活用すれば、顧客理解はさらに深まり、AIの予測モデルで適切なアプローチができる。コロナ禍により事業の柔軟な変化を求められる中、BtoB企業がBtoCへとモデルを転換するような場合であっても、企業の顧客データ不足を補える。
「Custellaシリーズではあらゆるデータを活用・分析・分類して、お客様に最も適したコミュニケーションを図ることが可能になります。弊社のデータと企業様のデータを突き合わせ活用することで、施策のレベルアップに貢献していきます」と細谷氏は締めくくった。