目的別事例3:営業リソース不足の克服
3つ目のケースは、SaaS系の新規プロダクトの認知・集客を支援するプロジェクトだ。営業リソース不足という問題を抱えながら、認知拡大と新規を獲得できる組織構築に取り組んだ事例となる。
同事例先企業において、当時の営業は案件をこなすことに手いっぱいで新規開拓にまで手が回っていない状態だった。そこで目指したのは、営業がピュアセールス(本来の仕事である、クライアントや代理店と商談する時間)に専念できる環境作り。
具体的には、ターゲット選定・商談創出・顧客をサポートするカスタマーサクセス部分に人員を割り当てて営業が顧客に向き合う時間を確保できるよう、分業体制を構築していった。

プロジェクトは、デジタルとフィールドセールスを統括するそれぞれのリーダーの連携が上手く取れスムーズに進んでいったというが、マーケティングと営業の連携の難しさというのは、問題になりがちな部分だ。そこで同プロジェクトでは、メンバーの意識統一を重要視した。
「肝心なのは、マーケティングと営業のどちらも目指すゴールが一緒である点をメンバーに理解してもらうことです。各施策を実行するマーケターに対しても、全体像を見せながらゴールを見失わないよう丁寧に説明するよう心掛けました。営業にも参画してもらい、組織慣性が働かずに1つのチームとして活動できたのが良かった点です」と、内村氏は振り返った。
顧客と会社単位でのコミュニケーションを
最後に、BtoB企業がマーケティングを推進する組織を構築するために何をすべきか、内村氏は自社のデマンドジェネレーション組織を例にあげた。
いざマーケティング組織を導入しようと思っても、最初はどうしてもマーケター人員が不足しているケースが多い。そこではじめの段階では支援会社の力を大きく借り、自社で自走していけるようなマーケターを育て、組織を作る流れを取ることが必要になる。
理想はそれぞれの事業部門がデマンドセンターを有することだが、最初からそれは難しい。よって、まずは特定の事業部からプロダクトを選定して、外部支援会社の力を仰ぎつつクイックウィンでスタートする。そうして1つのモデルを作り、支援会社から横展開して各事業部門にマーケティング機能を少しずつ醸成していけば、個々の事業部が自走を始めるようになると内村氏は説明した。

そして次のステップでは、マーケティング組織を横断させて企業・ブランドから一貫したメッセージ、コミュニケーションを統合していく。顧客との関係性を「事業部単位」ではなく、「会社単位」にするのが理想の世界観だ。内村氏は「各事業部がそれぞれお客様とコミュニケーションするのではなく、数あるブランドを複合的にお客様にご紹介してコミュニケーションを導入していく状態が理想です」と強調した。
「自身が変わらずともマーケティング市場、競合他社、それと顧客は変化していきます。その中で事業が安泰しているからと留まることは、事実上の後退です」とマーケターに向けて内村氏はメッセージを投げかけ、講演を締めくくった。
