目的別事例1:リソースとスキルを把握する
続いて、実際に東芝デジタルマーケティングイニシアティブが事業会社のマーケティングを支援する中で出てきた、特徴的な3つの事例を内村氏は紹介した。
まず1つ目のケースは、ある事業会社のPoC(概念実証)として起こされたプロジェクトだ。必要なマーケティングスキルや人員の把握、他プロダクトへ横展開する各種データの取得を狙いとして、マーケター候補のマーケティング活動未経験者が参画し進められた。

このプロジェクトでは、製品サイトのSEOやWeb広告施策の実施、LPで顕在層をキャッチアップしつつMAを活用したナーチャリングまでの一連の活動を実践。事業会社側はマーケター候補とプロジェクトリーダーたちを参画した10名ほど、そこに東芝デジタルマーケティングイニシアティブがマーケティングプロデューサーとして入る体制で行われた。
活動の中で色々な視点からデータを取り、得られたデータをレポートにして資産化。結果的に、プロジェクトの狙いであった必要な人的リソースやスキルの把握も叶ったと内村氏は説明する。
目的別事例2:デジタルチャネルならではのメリットを得る
2つ目のケースは、展示会にデジタルチャネルを追加することで効果の最大化に取り組んだプロジェクト事例だ。ステージの位置づけでいうと、「集客」「実名化」と「カスタマーサクセス」の部分にあたる。
昨今、コロナ禍の規制の緩和にともない、リアル会場とオンラインの両方でイベントを開催する「ハイブリッドイベント」の形式が普及している。従来のように展示会をリアルで開催した場合は、ブースへの訪問者に対し製品コーナーで説明員がプロダクトの説明を実施し、カタログやパンフレットの配布、名刺交換が行われる。そして興味を持ってもらえたら、製品サイトや問い合わせフォームからコンタクトを取るというルートになる。オンライン開催の場合は、オンラインの展示会エリアから製品コーナーに誘導してプロダクトの情報を取ってもらい、さらに情報が欲しい参加者のために特設サイトを設けている企業が多い。

この特設サイトは、情報補完としてだけでなく来場喚起やフォローアップ、リレーション構築においても役立てられる。そこでこのプロジェクトでは、特設サイトのようなデジタルの顧客接点を活用して、顧客エンゲージメントの向上を目指した。プロジェクトメンバーには、デジタルマーケティング活動がほぼ未経験、かつ従来のリアル展示会への出店を行ってきたメンバーが集められた。
ここでは主に次の3点がポイントになったと、内村氏は解説する。まず、1つ目のポイントは「展示会に関わるデジタルコミュニケーションの統制」だ。1つのブランドに多数の事業会社が属しているプロジェクトであったため、事業会社ごとに個別にメールを出すことがないよう留意しコントロールしたという。
2つ目のポイントは「リアルにはないデータで顧客行動を見える化」した点だ。特設サイトや広告・バナーから得られるデータについて内村氏は、「招待状や営業というリアルの接点に加え、デジタルの接点が有機的に関わってくることで相乗効果が生まれてくる」と語る。
3つ目のポイントは、「イベント訪問後からの行動データから、顧客の興味あるプロダクト情報を得る」点となる。顧客の興味属性を取得するため、イベント終了後に参加者にメールを送り、そこに記載した特設サイトにアクセスしてもらう。MAを活用しメールアドレスとCookieを紐づけ、そこから製品サイトへ誘導して興味属性を取得できるようにした。「リアルの展示会で得られるのは名刺情報のみでしたが、それに加えて興味属性も営業に渡せるようになり、営業もコンタクトしやすくなる効果が見込めます」と内村氏は解説した。
