「ソーシャルよりパーソナル」なプラットフォーム、Pinterestの特徴とは?
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、Pinterestとはどういったプラットフォームなのでしょうか。特徴やSNSとの違いについてご教示ください。
石井:Pinterestは、暮らしをさらに豊かにするインスピレーションや生活を彩るアイデアを、画像や動画で発見・保存・整理できるビジュアル探索ツールです。他人の投稿、あるいは「いいね」や「シェア数」など他者の評価ではなく、主観的な視点でこれから実現したいアイデアを探すために活用されます。
特徴として、情報を見つけるよりも行動につながるインスピレーションに出会うことを目的とした「ソーシャルよりパーソナル」なプラットフォームである点が挙げられます。独自の機械学習でユーザーの好みを学びパーソナライズされたコンテンツを提案する仕組みによって、「これまで気づかなかったけれど、やってみたい」「理想の生活を実現したい」といったアイデアにつながります。
MZ:Pinterestユーザーの特徴や利用傾向・利用シーンはどんなものが挙げられるのでしょうか?
石井:現在、Pinterestは世界中で毎月4億人以上のユーザーが利用しています。そのうち日本では、毎月870万人が利用しています(「Nielsen Netview モバイル訪問者」より)。年齢性別を問わず幅広いユーザーを抱えていますが、特に日本ではZ世代とミレニアル世代がユーザー層として急成長しています。
日本で人気があるカテゴリーとしては、ファッション・ビューティー・インテリア・フードが挙げられます。たとえば、夕食のレシピから服のコーディネートといった「日常の身近なアイデア」から、旅行先や家のリフォームといったライフイベント・人生設計など「これから行動に移したいこと」のインスピレーションを得る場として活用されています。
2023年のトレンド予測は「選択肢や自己表現の多様化」
MZ:日本のPinterestユーザーにおける近年の傾向を教えてください。
石井:私たちは毎年ユーザーの検索動向に基づいた翌年のトレンドを予測するレポート「Pinterest Predicts」を発表しています。発表したトレンド予測は過去3年間で平均して約8割の的中率を誇り、さらにPinterestのトレンドは他のインターネット上のトレンドより20%長く続くことがわかっています。
2022年12月7日に発表した最新の「Pinterest Predicts 2023」では、個の確立や自己表現が多様化している傾向が見られました。たとえばフード&ドリンクのカテゴリーでは、「モクテル」などノンアルコールドリンクの検索が上昇。消費者の意識が変わり、飲める・飲めないの2択ではなく好みや気分で個人として楽しむ選択肢が増えています。
石井:ファッションでは、スウェットなどリラックスした服で過ごした2年を経て、人々の意識は「肌見せ」へシフト。Z世代とミレニアル世代がジェンダーを問わずこのトレンドを牽引しており、「メンズ用フリルシャツ」「シアーパンツ」などの検索が増えています。「スリップドレス」「チューブトップ」「カーゴパンツ」「バンスクリップ」など、ミレニアル世代にとっては懐かしのアイテムも、Z世代には新しいトレンドとなっています。
住まいにおいてもヴィンテージをインテリアに取り入れるなど、家や部屋のパーソナライズニーズはコロナ以降加速し、若い世代の自己表現の場になっています。
石井:同レポートは企業がブランドの訴求対象層に関連するトレンドを発見し、潜在顧客とより早い段階で出会うために活用できます。最近の例では、化粧品ブランドの「Estée Lauder」が新しい商品とPinterest Predictsが示すトレンドの「素肌ミニマリズム」を組み合わせて、サステナブル美容を打ち出したプロモーションを実施しています。結果、業界ベンチマークに比べて25%低いCPMを達成しています(2021年の米国Estée Lauder内部分析データより)。