コロナ禍が続く中で生じた、子育て世帯の意識の変化とは?
第2回「現代子育て世帯のブランド選択の要因を探る/効果的なメッセージを届けるポイントとは?」では現代子育て世帯の代表的な意識・価値観変化を紹介しました。第3回となる本記事では、コロナ禍で生じた子育て世帯の意識・価値観の変化や購買行動に影響を与えたであろう要素について紹介していきます。
まず子育て世帯の「育児用品」購入時における意識・価値観について、代表的な4項目のコロナ禍(2020年8月から2021年11月)における変化を見ていきます。図表1は、0歳および1歳の子を持つママに「育児用品」購入時の意識について尋ねた結果です。
青点線で囲った「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」と回答した人(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)は、2020年8月から2021年1月にかけては7.74pt減少しています。しかし、2021年11月には10.57pt増加しています。
2020年8月の国内における新型コロナ感染者数は1,000名程度だったものの、2021年1月は多い日で8,000名強まで増加。その後は増減を繰り返すも、2021年11月は多い日でも200名程度と感染者が少なくなっていた時期になります(出典:NHK特設サイト)。
このことから、感染者数が増加すると「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」と考える人の割合は減少するようです。つまり、周囲に合わせ「他人の意見を気にして、他人が良いと思うものを購入する」可能性が浮かび上がってきます。
「同調」から、再び「ワタシはワタシ」へ
2020年8月に発表された同志社大学心理学部 中谷内教授研究グループによる研究では、コロナ禍においてマスクを着用する動機として「人が着けているから」という理由がダントツで多いことが示されました(出典:同志社大学心理学部 中谷内教授研究グループ 『マスク着用は感染防止よりも同調のため!?』)。このことからも、外出自粛や3密回避の中で子育て世帯にも「同調意識」が自然と身についたのかもしれません。
子育てマーケティング研究所に寄せられる口コミにも、「マスク生活が当たり前になり、つけてない人を見ると嫌悪感を抱くようになってしまった」「マスクをつけることにこだわり、『皆同じ』でないと不安、不穏を増長させる」「育休、出産、育児と自分が想像していたようにはコロナのせいでうまくいかなかったこともあったが、みんな同じ、みんな頑張っていると思うと自分だけではないという気持ちになった」といったものが見られました。
新型コロナの感染者数が増加すると、周囲に合わせ「他人の意見を気にして、他人が良いと思うものを購入する」傾向になりやすいようです。このような状況下では「みんなと一緒だと安心」という意識に応えることがマーケティングにおいてもポイントになります。
たとえば「1万人の先輩ママの声をカタチにしたベビー布団」といった皆の声を参考にしたことの提示や、「先輩ママが選んだベビーソープランキング第1位」といった皆が使っていることを示すなどのコミュニケーション訴求が考えられます。
また「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」という意識に関しては、2020年8月から2021年1月にかけて7.74pt減少していますが、2021年1月から2021年11月にかけて再び10.57pt増加しています。したがってこの3時点においては、0歳および1歳の子を持つママの意識・価値観は、新型コロナ感染者数の増加にともない「同調」傾向に振れたものの、感染者数の減少とともに再び「ワタシはワタシ」という思考に戻ってきたことがうかがえます。