選挙に勝てる人と競争に勝てる企業の共通点とは?
高橋:興味深いですね。勝ちにつながるルールとはどのようなものなんですか?

高橋 飛翔(たかはし・ひしょう)
1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。ナイルにて、累計2,000社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足。2018年より新規事業として月1万円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。
鈴鹿:多分ビジネスも同じだと思うんですけど、負けていく人は負けることをやってるんです。勝つ人は勝つことをやってる。ただそれだけなんですけど、残念ながら、負ける人は負ける行動をしていることに気づいていない。ここでの負ける行動とは、自分に嘘をつくことです。
票を集めるために話を盛るのが戦略としての行動で、その根底に自分自身の言葉で語れる政策があるならまったく問題ありません。しかし、「この言葉を言えば喜ばれる」とか「この顔をしておけば得だ」とか、嘘の自分を作っているのはだめですね。それは結局、その人の信念に基づく言葉や行動ではありませんから、信頼を獲得する前にぼろが出るんです。
結局、頭の中も腹の中も全部顔に出るので、嘘をついていると信頼につながらないんです。
高橋:会社経営にも通じるところがありますね。僕らのように投資家から資金を集めて事業を前進させていくスタートアップの会社は、EXITへの強いプレッシャーや口さがない方々の評価などと戦いながら、結果を出していかなければなりません。
でも、それが辛いからと言って、社会的使命として掲げているミッションに嘘をついてまで周囲に追従したら、目的を完遂する前に人が離れたり、心が折れたりしてしまうと思うんです。
厳しい局面でも負けずにやり切るには、嘘をつかずに済む自分でいる必要がありますね。
鈴鹿:仰る通りです。自分についた嘘は必ずにじみ出て、負けにつながります。
私のクライアントには、嘘をついてしまう理由、好きなものを好きと言えない理由を探すために、過去の自分と向き合ってもらいます。昔泣かせた人のこと、裏切った人のこと。全部吐き出して、謝るべき人がいれば今からでも謝りに行く。みんな泣きながら自分と対峙して、やっと自分を許すんです。これが、勝つためのスタートラインですね。
目先の利益にとらわれると失敗する
高橋:勝たせ屋として名を馳せるようになると、コンサルティングの依頼がたくさん来ますよね。勝つ人が自分に嘘をつかない人だとすると、依頼を受けるか受けないかを決めるのも、嘘をついているかどうかがポイントになりますか?
鈴鹿:人は嘘をつく生き物なので、嘘をつくこと自体が悪いとは思いません。私とマンツーマンでお話をする中で嘘を認め、変わっていければいいわけです。
私が依頼を受けるかどうかは、初めてその方とお会いしたときの一瞬の感覚で決めています。ああ、この人は一緒にやっていけそうだなとか、何となく良くない感じがするなとか。そういった勘は大事にすべきだと思います。つまり、自分を信じることですね。
高橋:自分の信念に沿って一瞬で判断するわけですね。論理で表現できない違和感は、脳が発する危険信号のようなもので、私も気をつけるようにしています。反対に、危険信号に気づけずに失敗してしまうのはどのようなケースなのでしょうか。
鈴鹿:目先の利益に目がくらんで失敗することが多かったですね(笑)。想定を上回る金額を提示され「なんとか受けてほしい」なんて言われると、「スタッフが喜ぶだろうな」とか、「このお金があれば……」とか考えてしまって。
「この人の依頼を受けると大金が入ってくる」という情報のせいで認知が歪んで、「きっとこの人はいい人のはず」とか、「あの人の紹介だからきっと大丈夫」とか、自分を説得し始めるんです。これはもうアウトですね。
高橋:なるほど、よくわかります(笑)。明らかに危険なシグナルがあっても言語化できてしまう強烈なインセンティブ、たとえばお金がちらつくと飛び込んでしまうというのはありますよね。
会社の取引や採用などにおいてもありがちだと思いますが、うますぎる話や素晴らしすぎる経歴には裏がある、どこかに罠が潜んでいるケースが多いように感じます。金銭条件がいくら素晴らしくても、非常に横柄で高圧的でスタッフに心理的な負荷がかかりすぎて離職につながるような相手とは取引しないほうが結果として事業も組織もうまくいきますからね。