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なぜ今マーケターがプライシングを学ぶべきなのか

プライシングは利益ファーストで考えよう!マーケターが踏むべき第一歩は「売上至上主義」からの脱却

 昨今、エネルギーの需給バランスの崩壊などにより商品・サービスの値段が上昇している。しかし、過度の値上げは顧客離れを引き起こしかねない。そこで、野村総合研究所のコンサルタントである下寛和氏がプライシングの流儀をマーケター向けに解説。連載の第2回では、ハイブランドと一般ブランドで異なるプライシングのポイントなどを紹介する。

“価値ベース”での値づけが重要

 プライシングを駆使して利益を最大化するためにはどうすれば良いのか。そのメソッドを解説するにあたって、「価格」と「プライシング」の言葉の定義をまずは明確にしておきたい。

 価格は英語で「Price」だ。品詞は名詞であり、「値段」や「料金」と訳すこともある。定義としては、商品・サービスの価値を得るために消費者が負担する金銭のことを指す。

 一方、プライシングの品詞は動詞で、「値づけ」や「値決め」「価格設定」と同義だ。定義は二つあり、一つは利益の最大化を目的に商品・サービスの価値を見極め、競争環境やコストも含めて見合った価格を設定すること。もう一つは、価格によって販売数量をコントロールし、目標とする利益の達成に貢献することを指す。

 つまり、プライシングは商品・サービスの価値を見極め、価値を価格に変え、狙った利益に転換する業務プロセス全体を指す。一方、価格はプライシングの業務プロセスにおける一つのパラメーターとしての位置づけである。

 また、値づけには二つの手法が存在する。価値ベースで値づけすることを「マーケットイン」、コストベースで値づけすることを「マークアップ」と呼ぶ。企業にとってはコスト回収も重要であるため、マークアップでつい値づけをしてしまいがちだが、消費者の立場からすると「どれだけコストがかかったか」は商品購入の決め手にはならず、「設定された価格が本当に価値に見合っているのか」が重要だろう。そのため、私はマーケットインの発想でプライシングを行うことを勧める

重視すべき四つの価値タイプ

 マーケットインでプライシングを行う場合、価値を正確に推し量ることが重要だ。「いかにKKD(経験・勘・度胸)に頼らずに正確な価値判断ができるか」がマーケターの腕の見せ所であり、プライシングの成否を分けるのである。

 では、商品・サービスの価値の見極め方を解説しよう。ブランディングの世界において、商品・サービスの価値には次の四つのタイプが存在する。

1.根源的価値……基本的価値とも呼ばれ、商品・サービスの基本的な役割
2.機能的価値……商品・サービスが提供する機能
3.情緒的価値……商品・サービスの感覚的な効用
4.自己表現価値……自分のステータスに寄与するもの

 たとえば自動車には「乗ることで移動ができる」という根源的価値が備わっている。「走行性」「安全性」などは自動車の機能的価値だ。自動車に乗った運転者が加速を通じて走る喜びを感じることができれば、それは情緒的価値である。高級車なら「その車を所有する人=成功者」といったステータスに寄与するバリューが自己表現価値にあたる。

 実在するブランドを例に挙げると、「エルメス」や「ロレックス」「フェラーリ」などのハイブランドでは、商品の自己表現価値や情緒的価値を踏まえたプライシングが商品購入の決め手となり得る。一方で、洗剤や歯磨き粉のような生活必需品の場合は、機能的価値・根源的価値をより意識してプライシングすることが消費者の購買促進につながるだろう。つまり、プライシングする上で重視すべき価値がハイブランドと一般ブランドではちょうど逆転するわけだ。

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この記事の著者

下 寛和(シモ ヒロカズ)

 株式会社野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティング部 グループマネジャー。慶應義塾大学卒業後、トヨタ自動車、会計系コンサルティング会社を経て、2014年に野村総合研究所に入社。専門はプライシング、原価企画、SCM、データサイエンス。日経BP「プライシングの技法」、技術情報協会「利益を拡大させ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/23 08:30 https://markezine.jp/article/detail/42081

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