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なぜ今マーケターがプライシングを学ぶべきなのか

プライシングは利益ファーストで考えよう!マーケターが踏むべき第一歩は「売上至上主義」からの脱却

価値タイプの見極めがプライシングに重要な理由

 この記事を読んでいるあなたがハイブランドの商品を扱っている企業のマーケターなら、前述の通り自己表現価値・情緒的価値を意識したプライシングが売上拡大の肝となる

 消費者はハイブランドのバッグを購入することで自己表現価値を得たいのだ。しかし、商品の安価な値づけはコストパフォーマンスを求める人たちも呼び寄せてしまい、他のカジュアルなブランドと大差のないブランドに成り下がってしまう。これでは、商品を購入しても消費者は自己表現価値を得られない。自己表現価値・情緒的価値の定量化は困難なため、過去の売上実績や競合商品・サービスの価格などを基に商品単価を決めると良いだろう。

 生活必需品をはじめとする一般ブランドのプライシングでは、機能的価値の見極めが重要だ。自己表現価値や情緒的価値も絡まないわけではないが、購入の意思決定に占める割合では機能的価値・根源的価値のほうが大きい。

 なお、生活者に提供されている商品・サービスはすべて根源的価値を満たしているため、価格の差として表れるのは機能的価値の部分になる。たとえば、トクホのお茶であれば「脂肪の吸収を抑える効果に追加でいくら支払ってもらえるか」を考えることが機能的価値の定量化にあたる。

 ここまでで、ハイブランドと一般ブランドで意識すべき価値の種類が異なることがわかった。次に、価値をプライシングに落とし込む方法を伝授する。

“KKD”に頼らないプライシングを

 価値を見極めるためのメソッドとして「市場調査」と「顧客調査」の二つが存在する。市場調査では「自社や他社の商品・サービスが“その機能の追加”で価格をいくらアップさせているか」「どこまでの値上げであれば生活者に引き続き買ってもらえるか」をファクトベースでチェックしよう。

 具体的には、商品の仕様や機能ごとの市場価値を金額換算する。自動車であれば「後づけバックガイドモニターやスポーツペダルがいくらなのか」「サイドエアバッグの有無で販売価格がいくら異なるのか」を、メーカー各社の価格情報や自動車量販店のアクセサリーの値段などを見て調べる。各仕様・機能が消費者から“いくらであれば評価・許容されているか”を確認するのだ。

 次に顧客調査だが、調査手法としては「PSM分析」「FGI(※1)」「シェルフ調査(※2)」「モニター調査」などがある。これらの調査で得られた顧客からのフィードバックを基に、機能の追加に対しどれだけの値上げであれば許容されるかを定量化する。

※1 Focus Group Interviewの略。ある目的の情報を得るために、共通した属性を持つ対象者グループに対して調査テーマについて質問し、自由に発言をしてもらう形式のもの

※2 商品が並べられた商品棚を調査会場内に再現し、パッケージやPOPなどに対する対象者の反応を探る調査

 いずれの方法にしても、定量化の根拠を明確化することで、勘に頼らないロジックを組み立てることができる。読者には市場調査もしくは顧客調査で価値の見極めに努めてもらいたい。

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プライシングはブランド戦略の一環

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この記事の著者

下 寛和(シモ ヒロカズ)

 株式会社野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティング部 グループマネジャー。慶應義塾大学卒業後、トヨタ自動車、会計系コンサルティング会社を経て、2014年に野村総合研究所に入社。専門はプライシング、原価企画、SCM、データサイエンス。日経BP「プライシングの技法」、技術情報協会「利益を拡大させるプライシング戦...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/23 08:30 https://markezine.jp/article/detail/42081

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