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理想の体験を“再現”するために消費する⁉ Z世代の購買心理を紐解く1冊【お薦めの書籍】

 「Z世代」という言葉がバズワードになるほど注目を集める昨今。彼らの消費意欲を喚起するためには、生の声に耳を傾ける必要がありそうです。本稿では、Z世代の考え方や行動の背景にある価値観を読み解いた上で、彼らの声を傾聴する際のポイントを解説した1冊を紹介します。

“知った気にならない”ことから始める

 今回紹介する書籍は『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』。著者はSHIBUYA109 エンタテイメントの若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」所長の長田麻衣氏です。

『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』 長田麻衣(著) プレジデント社 1,870円(税込)

 長田氏は2017年にSHIBUYA109エンタテイメントに入社。同社でマーケティング専門部署の立ち上げに携わり、2018年にはSHIBUYA109 lab.を開設。現在は毎月200人の15~24歳の男女(以下、Z世代)にヒアリングを実施し、Z世代のトレンドや消費価値観を捉えています

 本書の第1章では、Z世代が生まれた環境や時代性から、彼らの消費価値観の特徴を紐解いています。第2章では、Z世代の消費価値観の最大の特徴ともいえるSNSを、彼らがどのように活用しているかを解説。第3章以降では、Z世代の消費価値観を四つに類型化し、それぞれの特徴を説明しています。

 本書で長田氏は、昨今のZ世代に対する企業のアプローチの仕方についてこう指摘します。

「知った気になっている」という企業の姿勢は、ターゲットにもしっかりと伝わってしまいます。(中略)実際、“Z世代向け”の商品や企画を見ながらZ世代たちと話をしていると、「私たちをダシにして、お金儲けをしようとしているな」「Z世代向けと謳っているけど、実際、私たちよりももっと下の世代に向けられたものに見える」など、ネガティブなイメージや違和感を持つ様子が見受けられることは少なくありません。(p.191)

 では、企業はZ世代とどのような姿勢で向き合うべきなのでしょうか。

360度の視点でZ世代を観察する

 200人のZ世代に毎月ヒアリングを行う長田氏は、Z世代と対話をする上で心掛けていることがあるといいます。それは、「彼らと同じ目線を自分の中にインストールすること」です。

彼らは調和を重んじ、相手に合わせて距離感を調節することが上手です。大人にもわかりやすいように話そうとする一方で、大人側の態度に合わせて本音を話すことを避けたりもします。(中略)無駄なプライドを捨て、彼らの世界をリスペクトしながら、企業の方からZ世代の世界に参加していく姿勢を見せることが重要となります。(p.194)

 長田氏は「自分たちの商品やサービスがターゲットの若者たちの生活の中心に存在していないことも念頭に置くべき」だと語ります。実際、SHIBUYA109 lab.のヒアリング調査においてはSHIBUYA109という商業施設に関することよりも、Z世代がわざわざ足を運ぶカフェの魅力やヲタ活の楽しみ方、SNSに投稿する写真や動画の撮影方法を主に聞いているとのこと。その結果得られたZ世代の行動原理を、SHIBUYA109の館内の企画に落とし込んでいるというのです。

 長田氏によると、10年ほど前のSHIBUYA109の館内はアパレル関連のブランドがほとんどを占めていたそうです。しかし、Z世代の声を聞いて明らかになったのは「アパレルよりもコスメや食、エンタテイメント関連の商品にお金を落としている」という実態でした。そこで、テナント構成を変更したのです。「自社に都合の良い話ばかりを聞くのではなく、360度の方向からZ世代を観察し、理解する姿勢が重要」と長田氏は語っています。

体験を“再現する”Z世代

 本書では、SHIBUYA109 lab.の日々のリサーチ活動で浮かび上がってきたZ世代の消費の特徴を一部、紹介しています。

 その一つが「再現消費」です。マーケティングの世界で「体験消費」を耳にすることは多いと思いますが、Z世代はさらに体験を“再現する”消費行動をとっているとのこと。彼らの生の声として、長田氏は次のようなコメントを紹介します。

生の声:インスタで見たトレンドのスイーツは、美味しいことよりも答え合わせをする感覚。

生の声:調べてみるとSNSの評判と違うこともあるけど、友達と「違ったね」と話すことが楽しい。(p.93)

 ファッションや食事、旅行など多岐にわたるカテゴリにおいて、Z世代はモノを買う前に彼らの頭の中で実現したい“理想の体験”をイメージしており、その体験に必要なものを買い揃えているといいます。これが再現消費です。これを踏まえて長田氏は「企業が彼らの消費モチベーションを高めるためには、写真や動画を介して『こんな体験をしてみたい!』『この体験を再現してみたい!』と感じてもらうことがポイント」だと述べています。

 そして「体験設計に際しては視覚に訴えることが肝」と語る長田氏。なぜならZ世代にとっては、どこに行くにしても撮影行為は必須だからです。つまり、体験の中に“映える”スポットやシーンをいかに仕込めるかが鍵というわけです。

 “映え”は今やZ世代以外の人たちにも広く浸透しましたが、「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれたのは2017年です。年月が経過する中で、その言葉の定義となる写真のテイストや撮影の構図は変化しているとのこと。長田氏は、その変化を「映え1.0」「映え2.0」「映え3.0」と分けて、2017年から2022年までの変化を詳しく説明しています。

 本書ではそのほかにも、「メリハリ消費」「失敗したくない消費」「応援消費」など、Z世代に関する消費のキーワードと、その中身を解説。「どのように訴求すれば、Z世代から共感を得られるのかわからない」と考えるマーケターの方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

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この記事の著者

宮田 浩平(編集部)(ミヤタ コウヘイ)

MarkeZine編集部。香川県出身。2016年に時事通信社入社、広島支社、岐阜支局で勤務。2019年から広告・マーケティングの専門メディアで編集者。主にPR・ブランディングやプロモーション領域の取材を担当。2022年5月から現職。企業のサステナブルやDE&Iを軸にした取り組みに興味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/27 07:30 https://markezine.jp/article/detail/42093

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