今、対応すべき各ポリシーの意義と関係
続いては返品(リターン)ポリシー、交換(エクスチェンジ)ポリシー、クリック・トゥ・キャンセルポリシー、返金(リファンド)ポリシーの関係や状況を見てみましょう。
返品ポリシーと返金ポリシー
日本で一度購入した商品を返却する場合、訪問販売や通信販売などの場合に限り、クーリング・オフ制度で契約後8日以内に無条件での解約が可能です。なお米国のほうが返品に関する条件は緩やかで、返金対応可能な場合が多いようです。
返品ポリシーと交換ポリシー
サイズ交換については、オンラインでもオフラインの店舗でも積極的に受け付け体制を取る日本企業も見られるようになりました。
キャンセルポリシーとクリック・トゥ・キャンセルポリシー
これまで日本では、オフラインの場合シンプルに“キャンセルポリシー”と呼ばれていましたが、ここ数年米国では“クリック・トゥ・キャンセルポリシー”という表現が増えました。「オンラインで簡単にキャンセルしたい」というユーザーの声に沿ったものです。
また日本では、悪質商法による契約を取り消すことができる「不当な勧誘行為」の対象を新たに広げた改正消費者契約法が2023年6月1日に施行されました。BtoC事業者は、個人情報保護法や電気通信事業法はもとより、消費者契約法にも常に注意を払うようにしたいものです。
返品ポリシーに潜む、返送料の有無
米国では返品に際して、オンラインで購入したものの返送料は自己負担、返送手続きも手間がかかる場合があります。この理由から、オフラインのお店のほうがかえって返品手続きはスムーズに行えると考えるユーザーが増えているようです。
また米連邦取引委員会は、オンラインでのサブスクリプションの解約が複雑すぎる課題を解消させるべく動いています(参考:「Proposed Changes to the FTC’s Negative Option Rule」※PDF)。ユーザーは無料でお試しサブスクリプションやサービスを簡単に楽しむことができますが、アプリでの無料期間終了通知の義務付けは欲しいところです。いずれにしても解約やキャンセル手続きが煩雑になりがちなため、事業者側にはシンプルでわかりやすい解約手順の採用が求められます。
企業はモラルを自問自答する時代へ
今回の電気通信事業法改正で対象となるサイトには、有料の課金サービスを提供しているケースもあると思います。有料であればなおさら、同意に関する説明は丁寧にわかりやすく、そして簡潔に行いたいものです。
また個々の消費者と向き合うシーンが多いBtoCサイトの実務担当者には、運用に負荷・負担がかかりやすい状況になっていると推察します。スマホとPCの各ポリシーの遷移確認など、特定の実務担当者だけに負荷がかかりすぎないよう注意を払う必要があります。企業がチームで対応しない限り、各ポリシーの運営・運用は不可能な時代になってきました。関連部署への費用面・人材面のさらなるサポートが不可欠です。
企業活動のモラルが問われる昨今、企業目線で行っていることがユーザーに不快感を与えていないか、自問自答する時代ともいえます。企業側の精緻に「ターゲティングできる」との主張が、ユーザー側では「ターゲティングされる」という不快感につながることを今一度噛み締めながら、各種法律と向き合っていく時代になりました。
繰り返しになりますが、BtoBでもBtoCでも、個人情報は「企業側の利用目的」とそれに対する「ユーザーの同意」を常に意識して、対応を進めていきたいものです。
