ブランドの姿勢は一貫しているか、消費者はジャッジしている
白石:コロナ禍以降、企業にとって「従業員を大切にする」重要性が高まっているように感じます。従業員側も会社に対して「良いことをしてほしい」と思う人が増えていて、社外だけでなく、社内へのメッセージや姿勢の示し方も重要です。
小山:今は企業が社会課題に対してどう行動するか、社内外を問わずよく見られています。LUSHに対しては、本質的に「一貫したメッセージを発信している」と言ってもらえることが増えました。LUSHに関わった人がそれぞれ共感できるポイントを見つけて、さらに関わっていきたいと思ってくれる。そういう人がファンになってくれているのかなと思います。
白石:「本質的」という言葉がポイントだと思います。社会課題に取り組んでいると表明している企業でも、実際にはメッセージと行動が矛盾していたり、上辺だけになってしまっていたりと、ちぐはぐな印象を与えているケースも多くあるように感じています。LUSHは一貫した取り組みをずっと行っていて、それが現場のスタッフにも浸透しています。そういった本質的な部分に共感するファンが多いのだと思います。
小山:どんな社会課題に対して、何を目指して取り組むのか、はっきりと表明しないと何も伝わりません。LUSHはそこを具体的に伝えるようにしています。
「社会のために何か協力したい」という人は世の中にたくさんいますが、みんな何をしたらいいのかわからないのです。だから、具体的に何ができるのか、どんなアクションにつなげてほしいのか、行動を促す道筋をつけることが必要です。
白石:社会課題にはこれという正解はないと思います。だからこそ、正解がない問いに、具体的に応答し続ける。これからは、そういう姿勢と覚悟を持ち続ける企業が強いと感じています。
店舗が安心できるコミュニティに コスメブランドの枠を越える
白石:キャンペーンの反響や成果については、社内でどう評価していますか。
小山:チャリティ商品の販売状況やSNSの反応などを見ていますが、基本的には数値よりも定性的な声を重視し、店舗スタッフからの報告をもとに全体の分析をしています。もちろん、キャンペーンの性質によっても異なり、署名数など数字をKPIにすることもあります。
同性婚の法制化キャンペーンについては、とてもうれしかった成果がありました。全国の店舗で、性的マイノリティの方たちが来店し、自分も当事者だとスタッフに打ち明けてくれたのです。家族や友人にも言えなかった人たちが、スタッフを信頼して自分のことを語ってくれて、その後も店に来てくれる。店舗がそういった人たちの“居場所”になれました。
化粧品の販売店を超えて、誰かが安心できるコミュニティになれた。そのことに対して、本当に胸が熱くなりました。企業にもできることがある、とあらためて実感しましたね。
白石:日本の地域社会で居場所がないと感じている人は多いと思います。そういった人たちが、お店に来ることで自己肯定感を高められる。LUSHが、そういった場を創りあげていることは様々な側面から意味がありますよね。
またLUSHは、多様な社会課題に取り組むキャンペーンや、そこに紐づくメッセージや姿勢が、しっかりと商品や店舗とつながっています。顧客とのパーソナルかつ本質的な“接点”が多いのだと感じました。
人と共鳴し合える軸をたくさん持ちながら、多面的なブランド展開をしていますが、それがしっかりとファンに伝わるのは、「具体的」だからこそだと思います。踏み込んだ具体的なメッセージにリスクを感じる企業も多いと思いますが、だからこそ個人やコミュニティとの強い繋がりを築くことができるのだと実感しました。
