なぜLUSHは「キャンペーンカンパニー」なのか
白石:近年、SDGsやESGなどに取り組む企業は増えました。しかし、社会課題に対して踏み込んで発信している企業は少ないという印象があります。そんな中、ラッシュジャパンでは、日本で暮らす難民を支援する「Refugees Welcome」キャンペーンや、直近では同性婚の法制化に向けた「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンなど、一歩踏み込んだ施策を実施してきました。
「キャンペーンカンパニー」を掲げるブランドとして、LUSHは数多くの社会課題に対して積極的かつ具体的に意見を表明し、活動に取り組まれています。その目的や継続できる理由を教えてください。
小山:これまでに同性婚の法制化に向けた活動や動物実験に反対する活動など、多くのキャンペーンをやっていますね。商品である化粧品とは一見関係なさそうなことに対して声を上げる理由は、ブランドのパーパスで表現されています。それが「地球をよりみずみずしく、豊かな状態で次世代に残す(Leaving the world LUSHer than we found it.)」です。
ブランド名「LUSH」には「みずみずしい」という意味がありますが、それは環境保全だけを示すのではありません。人間や動物なども含めて、みんなが生き生きと暮らせる状態も意味しています。それが根底にある考え方です。
白石:パーパスに基づく企業文化づくりの蓄積があるのですね。大きな社会課題に対しては「変わるのは難しい」、または「変える力はない」と思ってしまいがちですが、それをどのように自分ごととして捉えてきたのでしょうか。
小山:もちろん私たちだけでは何も変えられません。社員はもちろん、お客さまをはじめとする多くの方に仲間になってもらい、一緒に変化を起こしていこうという考え方です。化粧品から変化を起こす、という意味で「コスメティックレボリューション」は、LUSHのビジネス戦略の重要な柱の一つでもあります。
店舗こそが変革の拠点
小山:LUSHは日本で77店舗展開しており、世界では49の国と地域で約900以上の店舗を構えています。この店舗こそが、変革の拠点です。店舗からメッセージを発信することで、変革を起こす仲間、つまりファンを増やしています。
白石:私の自宅の近くにはLUSHの店舗があって、子どもが小さかったころは保育園の帰りに立ち寄っていました。泡をさわれるので、遊ぶのが楽しいのです。毎日必ず遊んでいくのに、スタッフの方たちは嫌な顔一つせず付き合ってくれました。店舗の皆さんの対応によって、「子育て中の親まで応援してくれるんだ」という気持ちを抱いたのを強く覚えています。そういうことがファンづくりにつながっているのですね。
小山:それはうれしいお話です。パッケージは高価に見せることよりも、見た目はシンプルでも資源の循環に配慮してリサイクル素材を使用しています。その分、商品の中身、すなわちお客さまのお肌に直接的に影響する原材料にお金をかけています。全ての商品に製造日の記載と使用期限を設け、商品をフレッシュな状態で使っていただくために大量生産もしません。そういった「ブランドとして大切にしていること」がファンの口コミで広がり、ブランドも拡大してきました。共感してくださるお客さまのおかげで今のLUSHがあります。
白石:店舗の客層はどういった人たちが多いのですか。
小山:ターゲットを設定していないので幅広いのですが、中心となるのは20~30代の女性ですね。最近は男性のお客さまも増えています。