フェリシモの企業理念を体現するプロジェクト
白石:フェリシモは「しあわせ社会の実現」を企業理念に掲げていて、活動には以前から注目していました。2022年に設立された「オールライト研究所」とは、どのような組織なのでしょうか。
筧:前提からご説明すると、私たちフェリシモでは「社会性」「事業性」「独創性」の3つが重なる部分を事業領域としています。社会に良いこと、かつビジネスとして成り立つことを私たちの独創性で作っていく、これがフェリシモの事業です。
そんななか、2022年に誕生したオールライト研究所は「そのままでたのしい、そのままが楽しい暮らし」を皆さまといっしょに作り出すプロジェクトです。そんな思いを込めて、名称も「オールライト」と付けました。
コンセプトは「弱さや苦手やコンプレックスで悩むのはそろそろ終わりにしましょう。足りないのは、あなたがそのままでたのしく暮らせる社会の工夫」ということです。
白石:スタートしたきっかけを教えてください。
筧:フェリシモでは「神戸学校」というトークライブがあり、本プロジェクトに“ゆる研究員”として参画している『マイノリティデザイン』の著者・澤田智洋さんをスピーカーとしてお招きしたんです。「何か一緒にできたらいいね」という社員を中心に、トークライブの後にみんなで話す時間を設けました。そこに集まったメンバーが、このオールライト研究所の初期メンバーとなっています。
白石:本日は筧さんを始め3名のオールライト研究所の方がいらしていますが、皆さまはそれぞれどのような業務を担当しているのでしょうか。
筧:オールライト研究所では、普段は違う業務をしているメンバーがプロジェクト形式で集まって一緒に仕事をしています。年代も20代から60代まで、個性豊かなメンバーがそろっています。カタログ制作をしていたり、品質保証を担当していたり、商品調達やWeb制作のほか、雑貨の企画担当の方もいます。
私は情報システム部門のメンバーで、今日一緒に参加している長谷川さんと2人でオールライト研究所のリーダーを務めています。業務としてはプロジェクトの進行管理から広報まで、多岐にわたります。
長谷川:筧さんと共にリーダーを務めている長谷川です。部門も同じ情報システム部門で、こういったプロジェクトに関わるのは初めてなので手探りで進めつつ、筧さんと同じ業務に当たっています。
下久保:オールライト研究所の第1弾ブランドである「裏表のない世界」から携わっている下久保です。入社して5年間はレディースアパレルの企画を担当していましたが、その後カタログ制作部署に異動になり、撮影やクリエイティブ業務を本業としています。オールライト研究所の活動では、本業の業務領域に加えて商品企画も担当しています。
品質保証やカタログ制作、情シスなど様々な部門から有志が集結
白石:本当に多岐にわたる部門の方が参加されている組織横断的なプロジェクトなのですね。どういう点に共感して参加をされているのかも教えていただけますか。
筧:スタッフそれぞれの思いがあると思います。私は家族が発達障害であることに加え、自分自身も忘れっぽく、何とか工夫で乗り切っていたんです。そんな弱いところを「そのままでいい」と肯定してくれるのは嬉しかったですし、フェリシモなら何かできるかもしれないという期待もあって参加しました。
下久保:私はアパレルの企画をやっていたので、澤田さんがあるブランドと共に「誰もが楽しめる服作り」に挑戦した取り組みに関心があり、とても感動したんです。障がいがあるからおしゃれしたい気持ちを諦めるのではなく、製品として昇華している点に惹かれ、私もファッションの視点から商品づくりに貢献したいと思って参加を決めました。
長谷川:私は『マイノリティデザイン』を読んで深く共感したことがきっかけです。曲がるストローの登場で寝たきりの人が飲み物を飲みやすくなったけれど、それだけでなく一般の人にとっても便利なものになったこと。車椅子の方のためのエレベーターが、高齢者や荷物運搬の方にも役立つこと。「最初は障がいがある方が起点だったとしても、それが何万もの人にとって便利なものや暮らしやすいものになる」という考え方に感動し、誰もが持っている弱みに着目する活動にシンパシーを感じました。それがきっかけです。