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第106号(2024年10月号)
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ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点

スタートは自身の盲点に気づくこと。資生堂が社内外に問いかけるDE&Iの視点とビジネスの両立

 多様性に向き合う社会課題をCSRの枠の中ではなく、ビジネスの主軸であるマーケティングで戦略的に捉え、解決していく。グローバルでは当然に行われているこのような取り組みが日本では大きく後れをとっている。そんな中、資生堂はブランド「SHISEIDO」の中で2023年から行っている「Unconscious Beauty Bias」をはじめとするDE&Iの取り組みを推進。企業としても「資生堂DE&Iラボ」を発足し、多様な人材の活躍と企業成長の関係について実証研究を始めている。今回、株式会社資生堂 DE&I戦略推進部の大場華子氏と、ダイバーシティをテーマにマーケティング支援に取り組むAmplify Asiaの白石愛美氏が、その意義について語り合った。

1万人以上に届ける、ブランド「SHISEIDO」が中高生を対象に行っているDE&Iプロジェクト

白石:Unconscious Beauty Bias(UBB)」はブランド「SHISEIDO」初のDE&Iの取り組みと伺いました。貴社のコアである「美の力」を通じポジティブな経験を提供していることは、ブランドとしてDE&Iの観点を社会に還元する意義のあることだと感じます。どのような課題が取り組みのきっかけとなったのでしょうか?

板橋第三中学校での本教材を活用したプレ授業風景(出典:プレスリリース https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003593)
板橋第三中学校での本教材を活用したプレ授業風景(出典:プレスリリース

大場:グローバル単位で社内調査を行った結果、世代や国境を越えて多くの方がUBBを体験しており、特に成人前の多感な時期に経験したUBBがその後の人生にも大きな影響を与えていることがわかりました。UBBは、これを社会課題と捉えたことが発端となっています。

 教材は中学生が対象で、無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)が自分や誰かの自分らしさの実現を阻害していると知ること、そして「ありたい自分」でいるためにどう向き合ったらいいかを主体的に考え、対話形式で学びを深めていただくことを目的に開発したものです。当初全国7,000名以上の生徒に提供予定でしたが、予想を上回る応募に応え、高校生を含めた1万6千人以上に拡大しました。

 授業後、90%の生徒が「無意識の思い込みについて、もっと目を向けていきたい」と回答し、それぞれがありたい姿に向かえる社会の実現に向けた1つのアプローチができたと感じています。

株式会社 資生堂 ダイバーシティ&インクルージョン戦略推進部 イノベーショングループ大場華子氏
株式会社資生堂 DE&I戦略推進部 DE&Iエンパワメントグループ 大場華子氏

社会課題とビジネスをセットで取り組むアプローチ

白石:資生堂のDE&I戦略推進部は、どのようなミッションを担っているのでしょうか。

大場:ミッションは「世界中の多様な人々が自分らしい人生を実現できる、インクルーシブな社会作りに貢献する」ことです。それを、事業を通して実現できるよう、社内外のステークホルダーを巻き込みながら推進しています。

 資生堂はこれまでも人財本部を中心に女性活躍推進の視点からいろいろな取り組みを行ってきましたが、今は女性だけではなく、より広くDE&Iの視点でアクションが必要だと考えています。

白石:今、人々がブランドを選択する基準は、従来の資本主義的なものから変化しつつあります。企業の活動への賛同や社会課題に向き合う姿勢への共感、コミュニティへの連帯感などが重視される方へ移行していますよね。

 資生堂の購買層には「綺麗になりたい」あるいは「肌を整えて息抜きしたい」といった「セルフケア」のニーズがあると思います。ただ、「セルフケア」の考え方も金銭で解決できる資本主義的かつ限定的なものから、その背景にある社会的なコンテキストも包括し始めているように思います。

 「綺麗になりたい」は、押し付けの価値観に沿うのではなく、自分らしくいたいことであったり、「肌を整えて息抜きをしたい」の背景には、息抜きができない要因である社会の構造があるのかもしれません。たとえば、仕事と家庭の両立の困難さや男性育休の課題をはじめとした、働き方へ対する疑問も含まれているように思います。

大場:弊社はそのようなDE&Iにおける社会課題と、ビジネスをセットにして取り組んでいます。DE&Iへの取り組みはすぐに目に見える形で効果を出すというのは難しいところですが、社会課題へのアプローチと企業活動をともなわせることで、ブランドとして解決できるアプローチがあると考えています。

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この記事の著者

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント
株式会社Amplify Asia 代表取締役

WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。

株式会社Amplify Asia https://www.amplify-asia.com/

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/01/12 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44277

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