製造業で進むDX推進の波
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、皆様の自己紹介をお願いいたします。
糸数(神戸製鋼所):神戸製鋼所の本社で、社内のデジタルマーケティング推進やDX関連の広報活動を担当しています。
尾石(神戸製鋼所):私は「PVDコーティング装置」という製品の営業のほか、表面処理の中でハイエンドとされるPVD技術を主に扱う「⾼機能商品部」Webサイトの運営に携わっています。
池田(日本IBM):日本IBMで製造業向けのコンサルタントとして、DX案件をはじめとした業務変革およびシステム構築を支援しています。神戸製鋼所様のDX戦略の一つであるお客様対応DX案件に、統括プロジェクトマネージャーとして参画しております。
山本(日本IBM):同じくコンサルティング事業部内で、お客様の顧客接点領域の変革を支援するiX(Interactive Experience)という組織で、製造BtoBのお客様をご支援するチームを担当しています。デジタルマーケティングやアフターセールスなど、一連の顧客接点の変革を企画から実装まで伴走支援しています。
大内田(メディックス):メディックスで、BtoB事業を展開する企業様のデジタルマーケティングを支援しています。神戸製鋼所様のプロジェクトでは責任者を務めています。
福田(メディックス):私も大内田と同じ部署に所属し、今回のプロジェクトではフロントの役割を担当しています。
MZ:神戸製鋼所は、今回のプロジェクトより前から日本IBMとともにDX推進に取り組んできたと伺っています。デジタルマーケティングに取り組むに至った経緯をお聞かせください。
糸数(神戸製鋼所):日本IBM様とは、2001年から当社のIT分野の強化などを意図した戦略的アウトソーシングを開始して以降、パートナーシップを築いてきました。DXの波を受け、2022年4月にはキンドリルジャパン社やコベルコシステム社も加えた4社で、KOBELCOグループのDX戦略をともに推進するパートナーシップを確立しました。
当社は複数の事業部門を抱えておりますが、社内で課題を抽出していく過程でマーケティング活動へのデジタル技術活用に課題を抱える事業部門が複数あることが分かってきたため、デジタルマーケティングに取り組むことが決まりました。
製造業のデジタルマーケティングが進まない理由とは
MZ:製造業界のデジタルマーケティングへの取り組み状況についてどのように見ていますか。
山本(日本IBM):製造業の場合、顧客対応は対面でするものという大きな前提があります。しかしコロナ禍の影響やグローバルなビジネス拡大の必要性などを受け、ようやくデジタルマーケティングに取り組む企業が現れ始めています。
糸数(神戸製鋼所):一方、当社を含め多くの企業は、初期投資に対する社内の承認を得るための費用対効果の説明が難しいこと、スタートできても改善・継続のノウハウがないこと、成果を出すために必要な期間が社内の期待と乖離することといった課題に直面しています。
池田(日本IBM):製造業の場合、マーケティング担当者がデジタル領域も合わせて担うことになると、各種ツールの導入・活用といったITリテラシーなどでハードルがあるケースが見られます。また、個別にITベンダーに依頼する場合も部分最適に終始してしまい、全体的な整合性がとれず売り上げにつながらないパターンが少なくありません。
成果につなげるには、“戦術”よりも“戦略”から考える
MZ:神戸製鋼所では、「PVDコーティング装置」のデジタルマーケティング施策に取り組まれました。取り組みの背景や意図をお聞かせください。
糸数(神戸製鋼所):社内でのデジタルマーケティングに対する課題感の高まりを受け、先行事例を創出することにしました。全社一斉に取り組むことは難しいため、まず特定の商材で成功事例を作り、ノウハウを蓄積してから横展開していくという試みです。
尾石(神戸製鋼所):製造業では既存顧客との取引が多いのですが、PVDコーティング装置は新規開拓の余地がある商材でした。さらに同装置を取り扱う機械事業部門高機能商品は、コーポレートサイトとは別で専門サイトを作ったりマーケティングオートメーション(MA)ツールを導入したりと、元々デジタルマーケティングの試行を始めていた背景もあります。
池田(日本IBM):神戸製鋼所様と取り組みを進める中で、既存MAツールの機能強化や新たな施策を単発で行うだけでは、成果に結びつけることは難しいと考えました。重要なのはマーケティングの全体戦略と目標を設定し、その目標に合わせた顧客接点全体に紐づく施策の立案・実行・運用まで含めたPDCAを着実に回すことだったのです。
当社はITを軸にしたコンサルティングを提供する会社であり、プロジェクトを効率的に進めるにあたりデジタルマーケティングに特化したパートナーが必要でした。そこで、地に足の付いた実績やスキルがあり、BtoB支援の専門部隊を持つメディックス様を提案しました。
MZ:実際にどのような取り組みをされたのでしょうか。
福田(メディックス):リード獲得から商談、受注までの全体設計を行ったうえで、プロモーション施策として広告運用やコンテンツ作成など、上流から下流まで一気通貫で支援を行いました。取り組みのポイントは、はじめに全体の目的を明確化したことです。その上でKGIを設定し、各施策を進めていきました。
大内田(メディックス):成果を出すためには、「デジタルマーケティングによって何を実現したいのか」「どうやったら達成できるのか」など、“戦術”よりも“戦略”から始めることが大切です。支援を開始してから、半年以上はこの戦略を練る時間に充てましたね。加えて、スモールスタートで施策に着手することや広告効果を可視化するためのハード面の支援など、先ほど挙がった課題の解消も意識しました。
目標を上回る有効リードを獲得!
MZ:お取り組みの成果をお教えください。
糸数(神戸製鋼所):定量的なKPIとして、半年での有効ホットリード(新規有望顧客数)を設定しましたが、最終的には目標を超過達成することができました。また定性的なKPIとして設定した、商材の新規用途探索やデジタルマーケティングのノウハウ蓄積も進んでいます。
さらにこのような成果が出たことで、社内のデジタルマーケティングへの関心も大きくなっています。当初の狙い通り、他部署への横展開も既に始めています。
尾石(神戸製鋼所):これまで接点のなかった領域の企業様から、今回作ったコンテンツ経由で引き合いをいただくことができました。旧来の営業方法では新規だと1件受注するだけでも困難な中、非常に大きな成果といえます。
大内田(メディックス):他部署への横展開に関しては、当社は実はPVDコーティング装置の案件ほど細やかなサポートは提供していません。神戸製鋼所様の中で、自走できる体制が整いつつあるのだと思います。
製造業では、デジマと営業担当の役割は変わらない?
MZ:取り組みが成果につながった要因について、どのようにお考えですか。
糸数(神戸製鋼所):戦略と施策フローの策定、コンテンツ制作、分析・対策などトータルで取り組めたことが大きいと思います。またメディックス様はいつも私たちの質問に対して、実例を挙げて論理的に説明してくださいました。そのため納得感をもって進めることができ、自走する上での応用も利くようになったと思います。
尾石(神戸製鋼所):当社の事業・商材をよく理解したうえで戦略を立てていただけたこともポイントです。今回はニッチな商材に対する取り組みだったため、一般的に知られるマーケティングの手法では通用しなかったと思います。
MZ:BtoB、特に製造業におけるデジタルマーケティングで成果につなげるポイントは何でしょうか。
福田(メディックス):やはり全体の戦略設計をしっかり行うことです。専門性の高い製造業だからこそ、どのようなターゲットに何を訴求し、どうやって態度変容を起こしていくかを明確にすることが重要ですね。
大内田(メディックス):実はデジタルマーケティングの役割は、営業担当の役割とそれほど変わらないと思います。製造業の営業の方々が持つ専門性や、どのように顧客とコミュニケーションを取っているのかを丁寧に言語化・仕組み化し、デジタルマーケティングに落とし込むことがポイントだと考えます。
デジタルで製造業の課題解決を目指す
MZ:今後の展望について、お聞かせください。
糸数(神戸製鋼所):当社の試みは、先行事例はできたものの軌道に乗せるのはこれからだと考えています。今後は異なるビジネスモデルの商材などにも横展開を進めていく予定です。取り組みを通してお客様との接点を増やし、お客様の課題やニーズを吸い上げ、製品やサービスに反映させることで、世の中により必要とされる企業を目指してまいります。
尾石(神戸製鋼所):取り組みを通して得た知見を活用し、営業受注数の増加につなげていきたいです。また他部署への横展開を進めていく中で、実際にトライアルした立場からサポートできればと思います。
池田(日本IBM):デジタルマーケティングのその先を意識し、セールス、アフターセールスやサービスまで顧客接点全体につなげられるようサポートできればと思います。コンテンツ拡大や横展開においても、成果に結び付く施策を支援していきたいです。
山本(日本IBM):事業をまたぎ、点ではなく面でお客様に向き合っていくことが、デジタルマーケティングの効果を最大化させるために必要です。そのため、組織としてのガバナンスやケイパビリティを高めていく変革を神戸製鋼所様と進めていきたいと思います。
福田(メディックス):製造業においても当社はデジタルマーケティングのパートナーとして、一気通貫で支援していきます。今課題を抱えている、より多くの企業をサポートできればと思います。
大内田(メディックス):広告運用がメインになりがちな広告代理店において、「新時代の代理店の在り方」を探りながらゲームチェンジをしていきたいと考えます。製造業は日本の重要産業でありながら、労働人口の減少など様々な課題を抱えています。乗り越える方法の一つがデジタル活用であり、今後も当社は製造業のデジタルマーケティング支援に使命感をもって向き合っていきます。
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