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今知っておきたいマーケティング基礎知識

生成AIのビジネス活用事例5選から考える、メリット・デメリットとは

 2023年は生成AIが日本中を席巻したと言っても過言ではない。生成AIは誰でも簡単に使える上、汎用性が高いため、ビジネスを大きく変革させる力があると注目されている。しかし、ITやテクノロジーに対する忌避感を持つ方は少なくない。大きな可能性を秘めた生成AIを食わず嫌いになっていないだろうか。本記事では、国内企業における生成AIの活用事例を飲料業界などから5つ紹介する。これらの事例を通して生成AI活用のメリット・デメリットも併せて解説するので、生成AI導入を検討している方は最後まで読んでいただきたい。

生成AIとは

 生成AIとは、文章や画像、動画といったコンテンツ生成が可能なAI(人工知能)である。生成AIはジェネレーティブAIとも呼ばれており、質問に対して従来のAIのように学習した情報の中から適切な回答を探し出すのではなく、学習した情報を基にオリジナルの回答を生成する。

 日本では、OpenAIが開発したChatGPTが2023年にニュースで取り上げられるなど話題になった。生成AIによって作られるコンテンツは精度が高く、今後ビジネスシーンでの活用が期待されている。

主な生成AIツール

 生成AIにはどのようなツールがあるのか、すでに利用者の多い文章生成・画像生成・動画生成AIについて紹介する。気になるものがあればぜひ一度、自身で触ってみてほしい。

文章生成AI

 文章生成AIとは、AIに与えた命令文(プロンプト)に対して文章を生成して回答するAIを指す。人間よりも速いスピードで、命令文に対し的確かつ多くのテキストを生成できる。

 最も有名なのがChatGPTだ。2022年11月のリリースからおよそ2ヶ月でユーザー数が全世界1億人を突破したと言われている。他にもGoogleのGemini(旧:Google Bard)やMicrosoftのBing AIなどが存在する。

 ChatGPTでは、チャット上に命令文を入力すると、会話形式で回答が生成されるため、ITやプログラムの知識がなくても簡単に利用できる。この手軽さが多くのユーザーを獲得した一因となっている。

 ビジネスにおいては、問い合わせ対応のためのチャットボットや、メール・文書作成などに活用されることが多い。

画像生成AI

 画像生成AIとは、命令に基づいて画像コンテンツを生成するAIだ。テキストで入力した命令文に基づき画像が生成される。中には、入力された画像内の配色修正やベクター画像への変換が行えるものも存在する。

 画像生成AIで有名なのはStable DiffusionやDALL-E3、Midjourneyだ。これらは文章で生成したい画像の完成イメージを入力すると、AIが画像生成を行ってくれる。命令文ではイメージを詳細に伝える必要はない。たとえば日本語で「犬、おすわり」と入力すると、おすわりの姿勢を取っている犬を撮影した写真のような画像が生成される。

 背景などはAIが自動的に考えてくれるので、具体的に指定したい場合を除いて複雑な命令は不要だ。手軽に画像やイラストを生成できる上に、生成した画像を商用利用可能なものも存在する。

動画生成AI

 動画生成AIは、命令に従って動画を生成するAIである。人間が制作するよりもはるかに効率的に動画コンテンツを生成できるのが特徴だ。与えられた文章や画像を基に動画を生成したり、動画の中から特定のシーンを抽出したりできる。

 動画生成AIでは、FlexClipやGen-2がよく知られている。動画生成は文章や画像を生成するよりもハードルが高いため、現在のAIが生成できる動画の内容は限定的だ。しかし、音声の追加やタイトル・テロップの編集などはできるため、簡単な案内動画やティザー映像の生成は可能で、作業時間の短縮になる。

生成AIのビジネス活用事例5選

 次に生成AIをビジネスにどのように活用していけばよいのか、先進的な企業の活用事例を5つ紹介する。

伊藤園

 伊藤園は2023年9月に販売開始した「お~いお茶 カテキン緑茶」シリーズのテレビCMに、国内で初めてAIが生成した女性タレントを起用した。AIが生成した女性の姿を、デザイナーが調整して仕上げている。

 このCMは、茶葉の生命力を最大限表現したいという想いから、白髪で顔にしわのある女性が同商品を手にすると一気に若返るといった展開となっており、この構成を活かすためにAIが導入されている。

 商品パッケージにおいても同様のコンセプトを実現するため、AIによって生成された画像を参考にデザイナーが完成させた。2024年4月には、AIタレントを起用したCMの第2弾となる「食事の脂肪をスルー」篇の放映も開始している。

ソフトバンク

 ソフトバンクでは、2023年秋の自社イベントのキャッチコピー制作にChatGPTを活用し、AIとアイデア出しをしながら会議を進めた。

 ChatGPTにキャッチコピーを作るよう命令文を入力して、短時間で647個の案を製作した。これだけのキャッチコピーを人間が制作するのはかなりの時間を要するだろう。

 ここに人間が考えたキャッチコピーも1つ加えて、648個の案をChatGPTに「イベントとの親和性」などの基準で採点をした上で表にまとめて出力させ、段階的に選別を行い上位9案に絞った。この中から82名の社員が投票を行い、1つに絞った。

 結果的に選ばれたのは人間が考えたキャッチコピーであったが、生成AIがアイデア出しのパートナーになり得ることが十分にわかる事例だ。

大和証券

 金融業大手の大和証券は、ChatGPTが持つ新たな可能性にいち早く目を付け、社員のすべての業務に導入すると決定。2023年4月に、全社員約9,000人に対してChatGPTの業務利用を開始した。

 主な用途としては、英語などでの情報収集サポートや外部委託していた資料作成の代替、社内文書作成業務の効率化などを挙げている。これにより、社員が本来携わるべきである顧客サービスの提供や企画立案に集中できる環境作りを目指す。

 生成AIが持つ情報漏洩リスクについても、Microsoftのクラウドサービス(Azure)を利用して防いでいる。

GMOペパボ

 GMOペパボでは、ChatGPTを基にSNSマーケティングに利用可能なPR文や商品説明文を自動生成する機能を発表した。その一つである「カラーミーAIアシスタント(β)」は、ユーザーが登録した商品情報をベースに、SNSへ投稿するための宣伝文章を自動生成する。

 同サービスは、最短10秒ほどで最適なハッシュタグや絵文字、キーワードを選定した上で宣伝文章を生成してくれる。これによって企業のマーケティング担当者は、ハッシュタグや投稿文の内容についてリサーチする時間を大幅に削減可能となった。

 生成AIによって、SNSで狙ってバズを生み出せるようになるかもしれない。

ガラパゴス

 ガラパゴスは、画像生成AIのMidjourneyで生成した画像を基に作成したFacebook広告が、フリー素材を使用して作成した広告よりも高いCTR(クリック率)を得られると発表した。

 同社が行ったのは、従来のバナー広告で使用していたロボットのフリー素材を、メインのキャッチコピーや構図は大きく変えずに、Midjourneyが生成したロボットの画像に入れ替えてFacebook広告で運用し直したところ、CTRが約1.8倍にアップしたというものだ。

 しかし、思い通りの画像を生成するのは簡単ではなく、命令文を何度も作り替えて試行錯誤したという。高いレベルでAIを使いこなすには、ユーザーにも一定の技術が求められるようだ。

 生成AIから狙った回答を得るための命令文を作成する技術は「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれており、これからのAI時代において重要なスキルとなるだろう。

生成AIを活用するメリット

 ここまで紹介した生成AIの活用事例を基に、AIをビジネスで活用するメリットを解説する。

 どれも従来の働き方を大きく変える可能性を感じるものであったが、ここで終わらずにもう一歩踏み込み、生成AIの活用方法を想像しながら読み進めてほしい。

作業効率化ができる

 生成AIを活用する最も代表的なメリットは、業務効率化や生産性の向上が期待できる点だ。

 たとえばChatGPTは3,000文字程度の文章をわずか1分足らずでアウトプットできる。品質も高く、メールや文書のドラフトをChatGPTに作らせて、人間は手直しするだけで作業が完結する。

 他にも命令文に基づき、Web上で必要な情報を収集し要約もさせられる。人間が時間をかけてリサーチしなくても、AIが生成した内容のファクトチェックを行うだけで調査が終わる。

 これまで人間が行っていた作業をAIに置き換え、作業の効率化が可能になる。

短時間で多くのアイデアが出せる

 生成AIはブレインストーミングやクリエイティブなアイデア出しにも活かせる。ソフトバンクの事例で紹介したように短時間で多くの案を機械的に生成可能だ。これにより、思いつきもしなかった観点からの提案が得られる場合もある。

 また、ChatGPTではチャット形式でAIと対話ができるため、生成されたアイデアを修正してほしいときは指示を追加して微調整もできる。

 反対に、人間が考えたアイデアの検証も可能なため、ChatGPTからアイデアに対する意見をもらいながら、最適なソリューションにたどり着ける。

誰でもコンテンツ制作ができる

 生成AIを利用して誰でも簡単にコンテンツ制作ができる。これにより、外注化してきた制作費用や時間を大幅に削減可能だ。

 生成AIは記事やSNS投稿、写真やイラストなど様々なコンテンツを生成できる上に質も高い。制作工程も、AIが生成したコンテンツをユーザーはチェックするだけでよい。

 ただし、思い通りのコンテンツをAIから生成するには、成果物のイメージを正確に命令文に落とし込む必要がある。命令文を正確に作成できる人材は今後需要が高まるだろう。

生成AIを活用するデメリット

 次に生成AIの活用によって生じるデメリットを解説する。ここで紹介する内容を踏まえてAIを活用するだけで一つ上のレベルの使い方ができるので、ぜひ知っておいてもらいたい。

情報漏洩のリスクがある

 生成AIの多くは回答の精度をさらに高めるために、入力された命令文の内容を学習している。そのため、命令文の中に自社の顧客情報といった業務上の機密事項を含めてしまうと、AIに学習され他のユーザーへの回答内容に反映されてしまうリスクがある。

 さらに、生成AIが保有する機密事項や個人情報を狙った「プロンプトインジェクション」といった新たなサイバー攻撃も確認されている。

 生成AIはDXの推進など幅広い分野での活用が期待されるが、機密事項や個人情報を入力するのは控えた方が良いだろう。

 これを受けてOpenAIやMicrosoftでは、データ保護サービスやセキュリティの高いクラウドサービスをリリースしている。

誤った回答をする可能性がある

 生成AIの回答はあくまで学習した情報を基に作られているため、回答内容の真偽はユーザーがしっかりと確認する必要がある。

 たとえば、ChatGPTは現在2023年4月までの情報しか持っていないが、最新情報について質問すると「わからない」と回答するのではなく、誤った回答を生成する。ユーザーが生成された内容をしっかりチェックしなければ、誤情報を含むコンテンツを世に出してしまうリスクを孕んでいる。

 今後AIの改善も見込まれるが、生成された内容を人間がしっかりと精査した上でリリースする必要があることを覚えておいてもらいたい。

権利侵害の恐れがある

 生成AIは学習データを基に対する回答を生成するため、生成されたコンテンツが学習元データと近似する可能性がある。これにより、学習元データの作者が持つ著作権を侵害してしまうリスクを孕んでいる。

 したがって、生成AIで制作したコンテンツを販売していたら、知らない間に誰かの著作権を侵害してしまっていたという可能性もある。

 この著作権問題については、Adobeが学習元データに著作権フリーのコンテンツのみを使用した画像生成AIのAdobe Fireflyを開発し業界を賑わせた。生成した画像コンテンツが学習元データと近似していたとしても、安全に商用利用できる。

 生成AIと著作権問題については課題も多いため、コンテンツ制作などに利用する場合はよく検討する必要がある。

まとめ

 生成AIは業務効率化やコンテンツ制作コストの削減だけでなく、マーケティングなど戦略立案にも応用可能だ。

 また、AIは急速に発展しており、日々新たな特徴を持ったAIが登場したり、機能が追加されたりとニュースに困らない。すでにChatGPTはリリースされてから数回のモデルチェンジを経て、画像認識やPythonコードの実行までできるようになった。

 今後の展開が見逃せない生成AIの波に乗り遅れないよう、今から使い始めてみてはいかがだろうか。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/12 00:00 https://markezine.jp/article/detail/44602

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