リベンジ消費で「外出レジャー」が大幅に伸長した2023年度
まず、2023年度の消費者動向を振り返る。この1年には、継続的な物価高騰や生成AIの台頭、LGBT理解増進法の施行、国際的にはパレスチナでの軍事衝突など、様々なできごとが起こった。
だが消費者動向を語る上で特に外せないワードは「コロナ禍明け」だ。2023年5月に、新型コロナウイルス感染症は、国の定める感染症法においてインフルエンザと同じ5類となった。
国内の就労状況や人流などをデータで見ていると、2022年夏ごろから消費者は活動を徐々に再開していたが、当時はあくまでも自己責任で気をつけながら行うといった様子だった。それが5類への移行によって明確に国から「お墨付き」が得られ、消費者は周囲の目を気にすることなく経済活動が行えるようになった。
こういった背景から、2023年度には、行動様式がコロナ禍以前に戻り、国内旅行やイベント参加などの「外出レジャー」は大きく伸長した。特に外食産業は、インバウンド需要の回復も相まって、前年比はもちろん、コロナ禍前の2019年との比較で見ても大幅にプラスとなった(出典:日本フードサービス協会会員社による外食産業市場動向調査 令和5年(2023年)年間結果報告)。
一方、2022年度初めから続く物価高騰が消費意向にブレーキをかけている。今後の経済の先行きへ不安から、多くの消費者がレジャーに手放しでお金をかける気持ちにはなれていないのが現状だ。加えて、円安の影響もあり、アウトバウンドの戻りはインバウンドと比べて大幅に遅れている。
コロナ明けもテレワークや買い物方法は変わらず定着
他分野の消費についてもコロナ禍前の水準に戻ったものと戻っていないものがある。カテゴリ別の消費実態を示したのが下図だ。健康食品やスキンケア・アンチエイジングなどでは、コロナ禍中は、「巣ごもり生活の間にきれいになっておこう!」という「おこもり美容」への消費が多く見られた。しかし、このような消費動向もコロナ禍後は飽和が見え、代わりにポイントメイクへの消費が戻りつつある。
また、「外に出かけられないから自宅でおいしいものを食べてストレス発散!」といったコンフォート・フード需要で伸びていたチョコレートなどのスイーツ系や、インスタント食品などの内食系の消費も、外食の戻りとともに飽和・減少の傾向となった。
一方、価格高騰により消費者の生活防衛意識が依然高いことから、コロナ禍で伸びた生活基盤の見直しや投資意識などは伸長を続けている。
チャネル面で特徴的なのは、コロナ禍で減った飲料やガムなどの「コンビニ・自販機消費」も消費額が戻っていないことだ。また、消費者の利用チャネルの動向を見ても、コンビニの利用頻度自体が戻っておらず、テレワークやまとめ買いなどの就労行動・買い物スタイルの変化は定着したことがうかがえる。
一方で、急な巣ごもり生活で需要が増えたネット通販は元の水準に戻った。「何でもネットで買える環境」が整っても、買い物体験への需要は変わらず大きいようだ。