消費スタイルの変化を、社内の意思決定に反映させるには?
セッションの終盤は質疑応答タイムへ。会場参加者からは次のような質問が挙がった。
「消費スタイルがリキッド消費に変化しつつあることはわかりましたが、皆の意識が変化しているわけではないと感じます。たとえば社内で決裁権を持つ人で、従来の考えを持っている人が多い中、どう説得していけばよいでしょうか」
大村氏はその難しさを認めた上で、未来をバックキャスティング(未来から逆算した計画方法)することの重要性を述べた。時代の流れの中で業界やビジネスモデルの行く末のベストケースだけでなく、ワーストケースを想定する。このまま変化しなかったらどうなるかを紙に書いていくのだ。
一方リキッド消費の世界では、在庫リスクがなくなるというメリットもある。ベストケースとワーストケースの両面から、変化が会社にもたらす価値を考慮しながら、議論を進めていくことが重要だ。その上で大村氏は「他人の考え方を変えることは容易ではない」とし、「周りに味方を増やし、新しい考え方を持つ、影響力のある人物を巻き込みながら進めることが効果的だと思います」と伝えた。
また長田氏は、会社と利害関係のないZ世代や新しい考えを持つ人の話を聞く機会を積極的に設けることを提案。そうすることで、従来の考えから離れられない人たちも「自分たちの時代とはもう違う」と明らかにわかる時が来ると語った。
リキッド消費の時代に向き合うために
最後に、これからのリキッド消費の時代に向き合うマーケターに向けて、登壇者3名からメッセージが語られた。
「リキッド消費の時代は、お客様とブランドの関係性は切れることはなく、しかも価値交換のタイミングが増えていきます。このことを念頭に置いた上で、お客様が本質的に喜ぶことやニーズに改めて着目することが、基本的かつ非常に重要なのではないかと考えます」(大村氏)
「現在、商品やサービスを売る際には、ある程度ターゲットを絞ってその人たちの行動を観察するのが一般的だと思います。しかし「生活者」という視点に立つと、自分たちのことを知らない人の行動も理解でき、可能性を拡げていく考えを持てるようになります。ターゲットを狭めるのではなく、逆に広げて、様々な人たちに対して何ができるのかを考えることが大切だと思います」(長田氏)
「時代が変化しつつあることは、皆さんも感じていらっしゃるでしょう。消費者のニーズや行動も変化している中で、企業がどのように変化に合わせさらなる価値提供やブランディングを行えるかを、考える時期に来ていると思います」(江端氏)