9.美容分野はますます効率重視。求めるのは「ハイパフォーマンス」
辰野:9つ目も美容分野で顕著な「ハイパフォーマンス」を求めるインサイトです。2つ目にご紹介した「投資思考」に共通する節があるのですが、「コストに合ったパフォーマンスをしてくれるものであれば買う」というトレンドに裏付けされています。
これまでは、「安くてコスパがいい」と言われるプチプラコスメが人気でしたよね。もちろんその需要は引き続きありながらも、2024年は「コストに見合った見返りがあるなら高くても買う」という傾向が強まりました。ファンデ美容液、ヘアケアブラシ、高価格ドライヤーなどがその例です。少々敷居が高い商品でも「これだけパフォーマンス(効果)がよければむしろ効率がいい」ということに気付き始めたのだと思います。同じ理由で、美容医療やアートメイクを支持する声も高まっています。
【具体例:知らない言葉があったらチェック!】
ファンデ美容液、高級〇〇、韓国への美容旅行、アートメイク、
10.平成がもはやレトロに「平成懐古(令和への嫌気?)」
川畑:残り2つですね。10個目は「平成懐古」というインサイト。今、Z世代女子の間では、平成に流行ったものをフィーチャーする流れが起きています。一時期流行りすぎた結果下火になったブランドも、「やっぱり可愛くない?」と再注目されているんです。当時流行の真っ只中にいた30代の女性も、青春時代に自分が愛していたブランドを若い層が「かわいい」と受け入れてくれるのを嬉しく感じ、またそのブランドに戻ったりしているようです。
飯野:最近、女子高生がスクールバッグにデカデカと推しの名前を書いたり、大きなマスコットを付けたりしているのを見かけませんか? 令和の女子高生にとっては、こうした“ガチャガチャ感”が、平成らしくてカワイイみたいです。
――個人的には、平成がもはやレトロになっていることに驚きますが……(笑)。
辰野:彼女たちはSNSがない時代を「過去」と捉えているのかもしれません。SNSでの承認欲求で葛藤しなくてもよい時代が羨ましいのでしょうか。
川畑:Z世代女子は「平成に一種の羨望を抱いているのでは?」という分析もありました。平成時代は「バリキャリ」と言うと、仕事一筋のカッコイイ女性というイメージがありましたが、今の若い世代は共働き必須で働かざるを得ないので、この言葉にあまりいいイメージがないようです。むしろ「専業主婦だったお母さんの時代が羨ましい」と価値観が回帰している様子も見られます。今では手に入らないからこそキラキラして見えるのではないでしょうか。
【具体例:知らないワードがあったら要チェック!】
デカマスコット、オールドコンデジ、アメコミキャラ、平成女児お菓子(たべっ子どうぶつ)、平成レトロファッション(Y2K)、懐かしおもちゃ(たまごっち、ラブベリー)、ポケポケ、平成ギャル
11.手間がかからないエンタメがホット。「楽しみは半径1キロ内で見つけたい」
飯野:最後11個目は「楽しみは半径1キロ内で見つけたい」というインサイト。今年は、お金も時間も含めた「手間」がかからない楽しみ方が注目されました。散歩がてらコンビニやファストフード店に行ってドリンクやスイーツを楽しむなど、体感半径1キロ内の無理のない範囲で行動し、消費するスタイルです。
少し前にフィルムのインスタントカメラが流行りましたが、2024年はオールドコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)が注目されました。インスタントカメラは、現像が必要なので「結構手間がかかるよね」と人気がやや遠のきました。でも、オールドコンデジなら充電すれば何回でも使えて現像の手間もかかりません。いずれにせよ、時間もお金もかからない、身軽な範囲内で楽しみを見つける傾向が強くなったと思います。
【具体例:知らないワードがあったら要チェック!】
コンビニアレンジドリンク、グミブーム、お菓子のコンテンツ化、チェーン店の人気(ミスタードーナツ、31)、サイゼリヤ飲み
年齢による「トレンドの差異」がなくなってきている
――11個のインサイトを紹介していただきましたが、全体を総括すると、どのような社会情勢が読み取れますか?
川畑:2024年は円安や物価高など苦しくて暗い話題に覆われました。そんな中でも、自分をポジティブに持っていく行動や意識が必要とされたため、「自己肯定感」や「ゆるストイック」といったキーワードが際立ったような気がします。消費に対するシビアさや効果重視が見られたのもその一環でしょう。
飯野:私が注目したのは、若い世代と上の世代の流行が分離しなかったという点です。若い層の流行を見て、上の世代が「自分も取り入れていいかも」と思える空気感、メンタルが生まれました。さらに、若い世代もそれを「痛い」「ダサい」と思うことなく受け入れるという好循環が生まれたことがとてもおもしろいと思います。ファッションのようなトレンドはこれまで若い層から上の世代に流れていくことが多かったですが、今後はひょっとすると上の世代から若い層へという流れが起きるかもしれません。
――なるほど。2025年はトレンドの流れ方そのものが変わってくるかもしれませんね。さて、GIRL’S GOOD LABの皆さんには、「2025年Z世代女子のトレンド速報」を毎月出していただきます。どんどんトレンドの周期は短くなっていますから、定期的に今のトレンドをキャッチできる連載として、ぜひチェックいただければと思います!