サードパーティーCookie規制・廃止のこれまで
近年、プライバシー保護への関心が世界的に高まり、デジタルマーケティングにも大きな影響を与えています。欧州連合(EU)では一般データ保護規則(GDPR)が施行され、米国ではカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が導入されています。日本でも改正個人情報保護法が施行され、個人データの適切な管理や透明性の確保が求められています。
このような背景の中、WebブラウザのサードパーティーCookieがユーザーのプライバシーを侵害する可能性が指摘され、主要なブラウザベンダー各社はこれに対応する取り組みを進めています。
たとえば、AppleはSafariでサードパーティーCookieを全面ブロックし、トラッキング技術を制限することでユーザーのデータが不適切に利用されることを防いでいます。Mozilla FirefoxはデフォルトでサードパーティーCookieをブロックする設定を採用し、さらにCookieをWebサイトごとに分離する機能を実装して情報漏洩を防いでいます。また、Microsoft Edgeでは、「基本」「バランス」「厳格」の3段階の追跡防止モードを提供し、ユーザーが柔軟にプライバシー保護を選択できるようにしています。
ブラウザシェアNo.1のChromeにおけるCookieレスの現状
日本・海外で最も高いブラウザシェア率(Operating System Market Share Worldwide | Statcounter Global Stats調べ)を誇るGoogle Chromeは2019年に「Privacy Sandbox」というフレームワークを提案しました。このフレームワークはサードパーティーCookieを使わず、ユーザーのプライバシーを保護しつつ、オンライン広告の効果を維持することを目的としています。
その中心となる「Protected Audience API」は、広告ターゲティングに必要なデータをユーザーのブラウザ内で処理し、匿名化された情報を活用する仕組みです。このAPIを用いることで、広告主はユーザーの個人情報を直接取り扱うことなく、効果的なターゲティングを実現できると期待されています。
筆者が所属するRTB Houseは広告配信プラットフォームを提供する企業ですが、GoogleがサードパーティーCookie廃止を発表した当初から対応準備を進めてきました。たとえば、W3C(World Wide Web Consortium)などの業界団体が開催する議論に参加し、Cookieレス技術に関する提案を行ってきました。その結果、RTB Houseの提案はProtected Audience APIの一部として組み込まれています。
こうしたプライバシー保護の潮流の中で、Googleは当初、2024年までにChromeでのサードパーティーCookieの廃止を計画していました。しかし、2024年7月にこの計画を撤回し、ユーザーの選択に委ねる形に変更しました。