大手SaaSでのマーケ経験が、PLAINER創業のきっかけに
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに小林さんのご経歴を教えてください。
小林:私は新卒でクラウド会計ソフト「freee」を提供するフリーに入社し、営業や事業戦略などに携わったのち、モバイル版freeeの事業責任者となりました。そこでの課題感や経験を活かし、2019年にPLAINERを創業するに至ります。

MZ:フリー時代に、PLAINERの立ち上げに至る原体験があったのでしょうか?
小林:はい。当時、モバイル版freeeはサイト流入が十分にあるものの、契約にはなかなか結びつかないという課題に苦戦していました。そのような中でもご契約いただいたお客様を分析してみると、実際に主要機能を触ったお客様のほうが、触っていないお客様より、契約率が明らかに高いことがわかったのです。
当時はまだ、確定申告は税理士にお任せするのが当たり前の時代。スマホで確定申告ができるモバイル版freeeが画期的かつ魅力的であっても、「自分にできるのか」「ミスなくできるのか」など、実際に使ってみないと払しょくされない懸念が、有料契約のボトルネックとなっていたようです。
そこで契約前や契約直後のお客様に、画面を実際に触っていただくための機能を作りました。実体験いただくことによって、契約率は大幅に改善。この成功経験が「デモプラットフォーム」を扱うPLAINER設立の大きなきっかけとなりました。
注目されるセールステック「デモプラットフォーム」とは?
MZ:そもそもPLAINERが提供している「デモプラットフォーム」とは、どういったソリューションなのでしょうか。
小林:デモプラットフォームは、ソフトウェア製品の価値を直接顧客へ伝えるためのツールです。これまでのマーケティングや営業活動だけでは十分に伝わっていなかった製品の魅力を、実際に使ってもらうことで正確に伝え、課題を解決するソリューションとなっています。
そもそも「デモ」という概念は、どんな業種にも広く存在しているものです。たとえば車や不動産の購入では試乗や内見といった「実際に試す・見てみる」プロセスが当たり前に組み込まれていますよね。しかし、ソフトウェア業界では「体験してみる=デモ」のプロセスがまだまだ浸透しておらず、日本ではPLAINERが唯一提供している状況です。
企業ごとに導入の背景、課題、用途が大きく異なるソフトウェア製品のデモで重要なのは、顧客に応じて適切な形にカスタマイズしたものを提供すること。その点PLAINERでは、顧客や目的に沿ってカスタマイズしたデモ環境を簡単に作成することができます。
一度作成したデモは社内で複製・調整して再活用できるため、マーケティング、営業、カスタマーサクセスといった業務プロセス全体において、効率化やコスト削減の効果が見込めるでしょう。

何より、デモによって「必要な人に、必要な製品・機能がより早く」届くようになるため、ソフトウェア企業は顧客のニーズや課題をより明確に認識できるようになります。これは製品のクオリティアップにもつながるのではないでしょうか。
実際にPLAINERで作成されたデモを紹介
MZ:日本でデモプラットフォームを提供しているのはPLAINER1社ということでしたが、海外ではどのくらいの企業が参入しているのでしょうか。グローバルの市況感を教えてください。
小林:グローバルでは既に30社以上が参入しているマーケットです。参入企業が増加している背景には、SaaS市場の拡大による選択肢の増加があります。特にアメリカでは、1つのカテゴリに数十社がひしめく状況で、顧客はサイトだけでサービスの良し悪しを判断することが難しくなっています。デモンストレーションのニーズが高まる一方、営業担当が1件ずつ対応していくことは非現実的です。これを効率化・自動化する手段のひとつとして、デモプラットフォームが注目を集めています。
MZ:なるほど。ではここで改めて、デモプラットフォーム「PLAINER」について、概要や特長を教えてください。
小林:ソフトウェアデモプラットフォーム「PLAINER」は、ノーコードで誰でも簡単にデモ環境を構築できるツールです。chromeの拡張機能を活用し、コードごとキャプチャすることによって、仮想環境上でソフトウェアを動かすことができる仕組みとなっています。なお、デモコンテンツのアクセスデータは自動的に取得しており、ほとんどのMA、CRM、その他営業支援ツールと連携可能。データはマーケティングや営業に活用いただけます。
PLAINERでどのようなデモを作成できるのか? 実際に見ていただくのが一番だと思いますので、クラウドサイン様とKING OF TIMEのデモをご紹介します。
PLAINERで作成されたクラウドサインのデモを体験
※本デモはPCでの操作を推奨しています

クラウドサインのHPで実際にデモが掲載されているページ
PLAINERで作成されたKING OF TIMEのデモを体験
※本デモはPCでの操作を推奨しています

KING OF TIMEのHPで実際にデモが掲載されているページ
リード獲得数は1.3倍に!デモは製品の真価を表現する新たな手段
MZ:PLAINERを使った企業はデモ体験を顧客に提供することで、どのくらいの効果が出ているのでしょうか?
小林:マーケティング分野では、導入後リード獲得数が平均1.3倍になった実績値があります。
MZ:デモを取り入れることで顕著な効果が出ているのですね。ただ、簡単といえども作成にはひと手間かかると思います。マーケターのみなさんからは実際にどんな声が挙がっていますか?
小林:あまりネガティブな声は挙がっておらず、みなさん楽しんでデモ画面を作成いただいている印象です。多くのマーケターは自社製品を愛しているものの、なかなかその価値が顧客に伝わらないというフラストレーションを抱えているのではないでしょうか。解決のためには「製品に触れてもらうのが一番」であるとわかっていても、これまで実演する手段がありませんでした。

また、ビジネスサイドがプロダクトに関われる機会は限られています。PLAINERはビジネスサイドでも自由にプロダクトの真価を表現できる、これまでにない手段であるため、心情的にもポジティブに受け入れられているのではないかと考えています。
MZ:PLAINERで作られたデモ画面を利用する顧客側のメリットについても教えてください。
小林:デモは、「そのソフトウェアで自社の課題を解決できるか」を証明する重要な手段となります。これについては、私自身、freee時代にソフトウェアの購買担当者側に立った時に実感しました。いくつものサービスを比較検討しましたが、最終的に導入したのは、わかりやすいデモンストレーションをしてくれたベンダーのソフトウェアだったんですよね。デモがあったからこそ活用イメージが湧き、興味をひかれたのだと思います。
製品の単価・見込み顧客の数などによって、活用方法は様々
MZ:PLAINERを使うのはマーケターだけに限らないかと思います。全社的に活用していくにあたり、理想的な方法やフローがあれば教えてください。
小林:まずマーケティングチームが新規リード獲得のために、ベーシックなデモを作成します。次に営業チームが顧客ごとに、アップセル・クロスセルに向けてデモをカスタマイズ。それをカスタマーサクセスチームがより具体的な顧客の事象にあわせて、さらにカスタマイズしていきます。各部署がカスタマイズして活用するうちに、「痒い所に手が届くデモンストレーションコンテンツ」が生まれてくるはずです。

MZ:PLAINERを起点に部署間の連携も進みそうですね。
小林:ええ、社内で情報の均一化が進むことで、どの部署の社員もプロダクトの価値や課題を理解しやすくなることもポイントです。たとえば、「マーケティングチームがカスタマーサクセスチームに課題を聞きにいく」といった業務の負担軽減にもつながるかもしれません。
MZ:ちなみに、PLAINERはビジネスや商材によって活用スタイルが変わるのでしょうか?
小林:はい、企業によって活用スタイルは様々です。たとえば、低単価で見込み顧客の多い商材の場合、できるだけ営業工数をかけず製品の魅力をダイレクトに伝えるために、サービスサイトでデモを活用するのが望ましいでしょう。一方、高単価で見込み顧客が少ない商材の場合、営業・カスタマーサクセスの手助けとしてデモを活用すれば、受注率や継続率の向上に寄与します。
MZ:現状、「デモ動画」を作成し、サービスサイトに掲載しているSaaS企業も多いです。デモ動画では代替できないのでしょうか?
小林:デモ動画とデモ環境では、コスト面で大きな差異が生まれると考えています。昨今のソフトウェア製品は頻繁にアップデートされますよね。そのたびに動画を編集し直すのは時間もお金もかかります。同様に、顧客の属性ごとに複数パターンの動画を作成するとなると、さらにコストがかかるでしょう。
何より、顧客が実際に体験するプロセスは動画にありませんので、総合的に考えると、デモ画面のほうがメリットは大きいのではないでしょうか。
誰もがテクノロジーの恩恵を享受できる世界を目指して
MZ:最後に、PLAINERの今後の展望について教えてください。
小林:今後はグローバル展開も視野に入れています。日本企業が海外の製品を使うための支援や、日本のソフトウェア企業が海外へ進出する際のサポートも行いたいです。ソフトウェア製品の総合代理店のようなイメージで、海外と日本をつなぐ架け橋となり、市場を活性化させていきたいですね。

また、最終的に見据えているのは「老若男女問わず、誰もがテクノロジーの恩恵を受けることができる世界」の実現です。個人的な話になりますが、私の母はクリーニング店を経営しており、未だに紙の売上伝票を使っています。会計ソフトを導入すれば業務効率が向上するのは明らかですが、導入ハードルが高く、なかなか活用できていません。母のようにテクノロジーに苦手意識がある事業者でも、「頑張らずに」テクノロジーの恩恵を享受できるようになれば、社会は大きく変わっていくだろうと思うのです。
PLAINERはソフトウェアに関わるすべてのプレイヤーと協力し、テクノロジーを活用しやすい世界を創っていきます。