国内最大級の美容医療プラットフォームで部長を務める

野崎:マーケターとして成長を望む方々にとって、「戦略的なキャリア選択」は今や避けて通れないテーマです。今回は、国内最大級の美容医療プラットフォーム『トリビュー』でマーケティング責任者として活躍されている、木下さんの経歴を深掘りし、キャリア前半の不確実性をどう乗り越え、成長市場の中で自身のバリューを最大化してきたのか。その軌道修正力と戦略眼に迫ります。まずはトリビューの特徴やマーケティング部門の重点領域について教えていただけますか?

【写真右】株式会社トリビュー マーケティング部 部長 木下翔太氏
木下:トリビューは、国内最大級の美容医療口コミ・予約アプリ「トリビュー」を開発・運営しており、ユーザーは無料、クリニックは手数料課金というモデルです。
現在は累計170万DL、累計GMV250億円、月間利用者37万人と、順調に成長を続けています。累計約40億円の資金調達の実施も行いました。私はその中で、新規会員獲得を中心に、リテンション改善やファネル設計まで、幅広くマーケティング領域を管掌しています。

野崎:新規ユーザー獲得からリテンションまで一気通貫で向き合っていらっしゃるとのことで、マーケターとして職域が広いのはこのフェーズの環境ならではですね。その中でもどんなポイントに力を入れているのですか?
木下:特に注力しているのは新規ユーザーの獲得です。収益が計画通り進捗するためには、ファネルの上段の新規ユーザー獲得が重要なので、継続的に伸ばすための仕組み作りにコミットしています。
「マーケティングにおいて見なくていい指標はない」と思っているので、その他にもリテンション率や各指標の転換率(コンバージョン率)の改善に取り組んでいます。まだ立ち上げフェーズなので、戦略立案だけでなく施策実行までメンバーと一緒に推進しています。
アパレル時代の「PL管理」で培われた収益感覚
野崎:ここからはキャリアの変遷にフォーカスしていきます。木下さんは、トリビューに入社して半年で部長に就任し、マーケティング部をけん引しています。マーケターとして順調なキャリアを歩んでいる印象を受けますが、キャリアのスタートは意外にもアパレル業界だったそうですね。そこで得た「PL感覚」は、マーケターとしての強みにどうつながっていると感じますか?
木下:洋服が好きだったので、アパレルメーカーに絞って就職活動をしました。2年目から店舗運営とPL管理を任されていました。在庫の山に苦しみながらも、「利益を出す」という観点でビジネスを捉える視点を身につけました。今のマーケティング業務でも、数字への意識や収益構造を俯瞰して動く姿勢は、当時の経験に支えられています。
野崎:若手がPLの管理責任を担うことは少ないですよね。その後のキャリアで“数字に強いマーケター”として頭角を現す土台になったと感じます。アパレル業界特有の厳しさもあったのではないですか?
木下:ありましたね。特に在庫管理には厳しく「在庫は借金」と言われていました。当時は在庫の段ボールが毎日夢に出るほど、神経を使っていましたね。
野崎:アパレルメーカーでの経験は現在の仕事にどのように役立っていますか?
木下:ブランドの売上や収益を上げるためにPLを管理し、裁量を持って行動した経験は、非常に役立っています。キャリアチェンジした後、短期間で管理職になれたのは、単にマーケティング部門の指標を追うだけでなく、PL管理の観点で収益改善に向けて行動できているからだと思います。