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MarkeZine Day 2025 Autumn

グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

「匿名化データなら安全」はもう古い。AI活用とプライバシー対応から読み解く次世代の測定戦略

 デジタル広告・マーケティング業界の標準化やイノベーション推進を担う国際団体IAB(Interactive Advertising Bureau)は、毎年、世界の測定・分析の最前線を共有する「Measurement Leadership Summit」を開催しています。2025年は6月にニューヨークで開催され、グローバルのプラットフォーマー、広告主、代理店、計測ソリューション企業のリーダーが集結。AI活用、クロスチャネル測定、プライバシー規制への対応といったテーマを軸に、次世代のマーケティング測定戦略を議論する場となりました。前編となる本稿では、「AI活用とプライバシー対応から読み解く次世代の測定戦略」という視点から、レポートします。

AIが変革する測定の最前線

 IABが主催する「2025 Measurement Leadership Summit」におけるセッション「How AI Is Reshaping Measurement(AIは測定をどう変革しているか)」では、AIやオートメーションの活用による測定変革がテーマとなりました。ここで強調されたのは、AIは単なる効率化のためのツールではなく、明確な戦略と文脈があって初めて機能するという本質的なメッセージです。

 多くの企業がAI導入に積極的ですが、その実態は「自動化すれば成果が上がる」という期待先行の姿勢に留まりがちです。しかし、登壇者らは「何を自動化するのかが不明確なままでは、本来の効果は得られない」と指摘します。AIの力を引き出すには、ビジネス目標と具体的な施策をしっかりと結びつけ、その文脈に沿ったプロセスを設計する必要があります。

 特に印象的だったのは、「人間のタッチ(human touch)」の重要性を強調する意見が多数見られたことです。AIを効果的に活用するには、導入前に戦略、目的、そして仮説を明確化する準備が不可欠であり、ツール導入そのものがゴールではないという再認識が促されました。

 さらに、今マーケティング業界でも非常にホットなAIエージェントという概念も、「いかに人間なしで最高の結果を出せるか」ではなく、「いかにhuman touchを適切に引き出し、人間とAIの力を融合していくか」という思想で進めるプロジェクトやツールが成功するように感じられる、という示唆も得られました。

データサイエンティストに頼らず、データを読み解く時代が到来

(左から:キャロライン・ギーゲリッヒ(IAB/VP, AI)、ジョー・ベラフォンテ(Direct Agent/SVP, プロダクト・データ&エクスペリエンス担当)、ロッコ・バルダッサーレ(Shirofune/米国市場拡大責任者))
左から:キャロライン・ギーゲリッヒ(IAB/VP, AI)、ジョー・ベラフォンテ(Direct Agent/SVP, プロダクト・データ&エクスペリエンス担当)、ロッコ・バルダッサーレ(Shirofune/米国市場拡大責任者)

 同じく「How AI Is Reshaping Measurement」のセッション内では、AIを活用したLTV分析の実例も紹介されました。あるEコマース企業では、広告データとCRMのデータを統合し、初回購入顧客とリピート顧客のLTV(顧客生涯価値)を分析。その結果、質の高い初回顧客がGoogleやReddit(※)から多く獲得されていることが判明し、広告配分をMetaから再調整することで、前年比75%の成長が見込まれるという成果に繋がったといいます。

Reddit米国で2005年に始まった掲示場型ソーシャルニュースサイト。DAUは約1億800万人(2025年初頭)ほど(出典)。

 また、測定の文脈理解においてもAIの進化が注目されていました。従来のAIモデルは、結果の背景を解釈する能力に欠けていたものの、Slackやメール、通話記録といった非構造データの分析を通じて、「なぜその意思決定がなされたのか」という深層的理解に近づいています。これは、マーケターがデータサイエンティストに頼らず、自然言語で自ら問いを立て、データを読み解く時代が到来していることを示唆します。

 加えて、「測定」は結果が活用されて初めて価値を生みます。しかし実際の現場では、測定結果と日々の最適化オペレーションが断絶してしまっているケースが多く見られます。ここで重要なのは、日々の運用基盤となるダッシュボードやレポートに重要な計測結果を統合し、自然に参照される状態をつくることです。それを可能にする自動化ツールの活用こそが、測定の価値を最大化する鍵といえるでしょう。

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プライバシー規制時代の測定設計思想

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菊池 満長(キクチ ミツナガ)

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/09/05 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49765

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