楽天グループのAI領域における取り組み
MarkeZine:はじめに、AI領域における楽天グループの取り組みについてお聞かせください。
伊藤:楽天グループは、日本企業の中でも特に積極的にAI活用を推進してきた企業の一つだと思います。グループ全体で「トリプル20」を掲げており、具体的にはAIを活用することで「マーケティング効率」「オペレーション効率」「クライアント効率」を20%向上させることを目指し、様々な取り組みを推進してきました。こうした社内のプロジェクト推進はもちろんのこと、AIによる事業価値の向上にも力を入れています。

MarkeZine:楽天インサイトでは、どのようにAIを事業に取り入れているのでしょうか?
伊藤:リサーチ・データ分析の領域において、AIを用いたツールの開発・提供を進めています。具体的には、アンケート結果を基にターゲットのプロファイルを自動生成するAIツール「楽楽プロファイル」や、チャット形式で消費者のインサイトを深掘りできるツール「AIチャットインタビュー」が代表的な製品です。AIにより、マーケティングリサーチは大きく進化しています。
従来型のマーケティングリサーチの課題
MarkeZine:では、ここからはAI時代のマーケティングリサーチについてお聞きしていきます。まずは、先ほど紹介いただいた「AIチャットインタビュー」開発の背景をうかがえますか?
伊藤:開発の背景にはいくつか理由がありますが、やはり大きいのは、企業のマーケティングアクションの高速化です。商品開発を「アジャイルに進めていく」といった表現は、少し前まで主に市場の変化が激しいIT系のソリューションで使われる印象でした。しかし、最近は中長期で計画的な企画開発を行う食品メーカー様などでも当たり前に使われるようになっています。
そうした中で、ある程度の規模で定性調査を実施するとなると、1.5~2ヵ月のリードタイムが必要になります。スケジュールや効率性の観点で、従来型のリサーチは直近のマーケティングアクションと乖離が生じているのではないかと考えていました。
鈴木:また、事業会社の志向性が「プロダクト起点」から「生活者起点」へシフトしている中、設計などが綿密に練られた従来型の調査だけでなく、よりカジュアルに生活者の声を集めたいといったニーズも高まっています。

伊藤:こうした業界の変化を受け、リサーチ会社として危機感にも似た課題意識を持っています。そこで、現在のマーケティングリサーチにおけるニーズに応えるべく開発したのが「AIチャットインタビュー」です。これは、定性調査専門のプロのリサーチャーの知見を注入し、楽天グループのテックメンバーが試行錯誤しながら磨き上げているソリューションで、AIのインタビュー力の高さが強みです。