デモプラットフォーム「PLAINER」を活用する2社のSaaS企業
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、みなさんのご経歴と現在の業務について簡単に教えてください。インフォマートの水谷さんからお願いします。
水谷:私はSaaSベンダーでのマーケティング経験が長く、前職のHENNGEでは、クラウドセキュリティサービスのマーケティングに約12年間携わってきました。現在は、帳簿業務をデジタル化できる「BtoBプラットフォーム」など、全18のプロダクトを抱えるインフォマート でマーケティング企画部の部長を務め、新規プロダクトを中心とした戦略設計などを担っています。

笹口:私はエンジニアや事業開発を経験した後、ヤフー社でリスティング広告のプロダクトマネジメントを長らく担当してきました。
「製造業AIデータプラットフォーム」を提供するCADDi(キャディ)に参画後も、プロダクト開発をメインに携わっています。その中でマーケティングの重要性が加速していたため、専任の「プロダクトマーケティングチーム」を発足。現在はマネージャーとして、新機能や新規プロダクトのGo To Market(市場進出戦略) に責任を持っています。

MZ:前回の記事でも登場いただいていますが、PLAINERの小林さんも簡単に自己紹介をお願いします。
小林:私は新卒でフリーに入社ののち、モバイル版freeeで事業責任者を務めた経験や感じた課題感をもとに、2019年にPLAINERを立ち上げました。PLAINERでは、ノーコードで誰でも簡単にデモ環境を構築できる、ソフトウェアデモプラットフォーム「PLAINER」を提供しています。

SaaSで必須ツールの「デモ」、アナログな運用で諦めていないか?
MZ:ここからは本題として、PLAINERを実際に活用されている水谷さん、笹口さんへお伺いしていきます。デモプラットフォームの「PLAINER」を導入した経緯・背景について教えていただきたいのですが、両社とも「デモ」に対する課題感が明確にあったのでしょうか?
PLAINER 導入の背景:「デモ」に課題を持っていたキャディの場合
笹口:そうですね。SaaSのスタートアップ企業として、「スピード命」で新機能のリリースを続けていかなければならない中、「デモの鮮度が追いつかない」という悩みを恒常的に抱えていました。業界に特化したバーティカルSaaSは、お客様が抱える具体的な課題を解決するためのソリューションですから、お客様自身に「このサービスでやりたいことができるか」を解像度高く理解してもらう必要があります。そのため、デモは必須のツールなのです。
これまでは動画でデモを用意していたのですが、機能がすぐにアップデートされるため更新が間に合わず、古い情報で営業を続けてしまうこともありました。「最新のデモを簡単に作成し、運用できる仕組みはないか」という課題の解決策として、PLAINERをトライアルで利用し、ROI(投資利益率)に見合うと判断できたため、導入に至りました。
PLAINER導入の背景:マーケ・営業・ISの業務効率化ツールを探していたインフォマートの場合
MZ:なるほど、インフォマート水谷さんはいかがでしょう?
水谷:弊社の場合は「デモに対する課題感」というより、PLAINERが誰もが使えて、拡張性のあるツールだったことが決め手です。私は前職でMAツールの選定、導入、仕組み化も担当していたのですが、マニュアルや操作手順をわかりやすく伝えるためのツールとして、デモプラットフォームと役割の近い「DAP(デジタルアダプションプラットフォーム)」 を使っていました。
しかし、誰もが運用できる代物ではなかったのが正直なところです。しばらくこのようなツールからは距離を置いていたのですが、PLAINERの小林さんから話を聞いて驚きましたね。HTMLをそのままキャプチャすればデモ画面が作れるというのは、非常に画期的だと感じました。
インフォマートでは多数のプロダクトそれぞれに、マーケティング、インサイドセールス、営業などのチームが紐づいています。1プロダクトのマーケティングチームに閉じた話ではなく、他プロダクトを含む多くの部署が活用できて、業務効率化につながるツールを求めていました。PLAINERなら社内外に汎用性高く応用していけるだろうと、期待感が持てましたね。

小林:私も前職でさまざまなツールを使ってきたので、世の中には「使える人にしか使えないソリューション」が多々あることを実感していました。一方でPLAINERは誰でもクイックに使えるからこそ、成功体験が他部署に広がっていきやすいのが特長と言えます。
ウェビナーや展示会で活用。「デモは資産」だからこそ展開は慎重に
MZ:インフォマートでは、PLAINERをどのように活用されていますか? 具体的な施策について教えてください。
水谷:マーケティングチームでは、月に数回開催しているウェビナーのデモで活用しています。PLAINER上のデモ画面を投影しながら、インサイドセールスや営業に講演をしてもらっていますね。
また、展示会ではPLAINERが入ったノートPCを持参し、来場者に製品の魅力を伝える手段として活用しています。展示会は営業だけでなく、マーケティング、カスタマーサクセス、プロダクト担当など、様々な部署のメンバーがブースにいますが、全員が同じレベルの説明ができるわけではありません。PLAINERのデモを活用することによって、会社として説明の品質を担保することができています。

展示会でPLAINERを初めて見る社員も多いですが、特にプロダクトチームやインサイドセールスが強い興味を示しており、他プロダクト・他部署での活用も広がってきています。
MZ:最初から全部署を対象にリリースするのではなく、少しずつ社内で活用が波及していった形なのですね。
水谷:ええ。「PLAINERは全社的に活用できるサービス」だと確信していたものの、あえて小規模に始めました。いきなり全社に展開すると、コンテンツの整理が追いつかなくなってしまうためです。
笹口:わかります。知らないところでどんどんデモが作られて、情報が独り歩きしてしまうリスクは怖いですよね。
水谷:まさに、情報統制と資産管理という観点ですね。私たちSaaSビジネスにとってデモは大切な資産ですので、各部署にきちんと使いこなせるか確認した上で段階的に導入を広げていきました。
MZ:PLAINERによって得られた具体的な成果はありますか?
水谷:展示会やウェビナーの質向上に寄与しているのはもちろんのこと、これだけ多数の部署に広がったこと自体が大きな成果だと感じています。今後、「これ(PLAINER)がないと困る」と言われるくらいまで業務効率化ツールとして定着した時、はっきりと「効果があった」と言えるのではないかと考えています。
対新規、既存、休眠ユーザーまで、製品価値を伝えるインフラとしてPLAINERを活用
MZ:続いてキャディでの活用方法についても教えてください。
笹口:当社もインフォマートさんと同様に、マーケティング、カスタマーサクセス、営業など、様々な部署で活用しています。展示会での活用の仕方もまさに同じでした。そのほか、具体的な使い方は主に5つです 。
1つ目は、既存顧客に対する新機能の認知促進。新機能リリースの度にデモを作成し、ウェビナーで説明するのはもちろん、メルマガでもデモURLを添えて全ユーザーへ告知しています。
2つ目は、休眠ユーザーへの呼びかけ。主要なユースケースやよくある困りごとをデモでまとめ、メルマガで配信しています。実際のサービス画面で新機能を告知しても、休眠ユーザーはなかなか見てくれません。そのような場合に活用する手段がメールなのですが、ただ文面でお知らせするだけでなく、デモで訴求できるようになったのは大きな変化です。
3つ目は、顧客専用デモを使った提案。特に大手クライアントを中心に、専用にカスタマイズしたデモを作成し、具体的にどのような課題を解決できるのかわかりやすく実演しています。営業やカスタマーサクセスがチャンスを捉えた瞬間に、デモを武器にして訴求できるようになりました。

4つ目は、パートナーセールス(代理店)向けの活用です。パートナーセールスは自社プロダクトの販売ではない分、どうしても間接的で価値を伝えにくくなってしまいがちですが、PLAINERを使うことでサービスをより具体的にイメージしてもらいやすくなりました。
5つ目は、グローバル向けの活用。アメリカで展開を始める際、英語版のUIがなかったのですが、PLAINERでHTMLを書き換えることで、簡単に英語版デモを作成できました。すぐにセールスを始められる足回りのよさは、PLAINERならではですね。
水谷:多岐にわたる活用法、ぜひ当社でも取り入れていきたいと思いました。弊社は18プロダクトごとに営業が分かれているのですが、各担当が別プロダクトのことも理解して、アップセル、クロスセルに繋げられるのが理想です。特に営業面での活用を推進していきたいですね。
小林:PLAINERが目指すのは「四次元ポケット」です。1人の営業がすべての製品、すべてのユースケースを説明できればいいですが、お話にあったようにプロダクトが多いとそうもいきません。そこで、四次元ポケットのように「いま必要な武器」を提供して、営業やカスタマーサクセスを手助けする道具になれたらと考えています。
MZ:それでは、キャディでの具体的な成果についても教えてください。
笹口:これまで1ヵ月かかっていたデモ制作の作業がPLAINERで30分になりました。従来はデモ動画を作るにも、シナリオを書き、デザイナーに外注するなど、多数の工程を踏んでいました。一方、PLAINERなら思い立ったら自分で作成できます。このスピード感は他のサービスでは得難いものですね。時間が掛からない分、人件費が抑えられるほか、汎用性が高いためオンボーディングの工数削減にもつながっています。
デモの効果を最大限に発揮するには? 2社がトライしたい施策
MZ:PLAINERでトライしたい施策や今後の展望はありますか?
水谷:さらに活用の幅を広げ、コンバージョン獲得目的など、より定量的に評価できるマーケティング施策に活かしていきたいです。そのために、デモの企画やストーリー作りにマーケター自身が関与し、「デモ=コンテンツ」として磨いていけたらと考えています。
さらに、認知やブランディング施策にも活用余地があると思います。当社は多数のプロダクトを抱えているため、「自分が利用しているサービス以外は知らない」状態の顧客が多いのが課題です。サービスをライトに伝える手法としてデモを活用し、これまで接点がなかったサービスとの出会いを促すことで、認知やアップセルにつなげられると考えています。
MZ:キャディの笹口さんはいかがでしょう。
笹口:プロダクトで新しい価値が生まれた瞬間に、最速かつ最大で、ユーザーに価値を届けることを、これからも実現し続けたいと思っています。
加えて、デモの効果を最大限発揮するためには、「鮮度の良いコンテンツを、いかに良いタイミングで見せられるか」がすべてでしょう。コンテンツの「鮮度」は更新頻度でカバーしていくとして、「タイミング」の観点はまだまだ工夫する余地があると思っています。現状、デモを見せるタイミングは、セールスやカスタマーサクセスの感覚に任せている状態です。
しかし、AI と組み合わせたら、タイミングを自動予測してデモを見せることもできるでしょう。これができればさらに効果を高められるでしょうし、定量的なフィードバックもしやすくなると思います。AIを使った運用自動化は取り組んでいきたいですね。
PLAINERがソフトウェアとユーザーをつなぐ架け橋に
MZ:最後に、PLAINERの小林さんからも今後の展望をお聞かせください。
小林:SaaSをはじめとしたソフトウェア業界のさらなる拡張にむけて、PLAINERができることは、各ソフトウェアとユーザーの間を柔らかく、シームレスにつなぐこと。誰もがストレスなく、自然にテクノロジーの価値を享受できる世界を創ることをミッションに掲げています。

インフォマートさん、キャディさんのような素晴らしい製品に加え、これからAIを使ったソフトウェアも多数生まれてくると思います。それらの価値をどれだけ幅広く、たくさんの人に伝えられるか。PLAINERはソフトウェア業界を支援するソリューションとして、挑戦し続けたいと考えています。