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『MarkeZine』(雑誌)

第114号(2025年6月 最終号)
特集「未来を創る、企業の挑戦」

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【特集】ストレスフルな社会で高まる“セルフケア”のニーズ、注目のブランドを取材

ニーズを捉えた「ありそうでなかった」商品がヒット!多忙な現代人の心を掴む、Cycle.meの戦略

 昨今高まるセルフケアニーズの中でも、身体を内側から整える「インナーケア」はコロナ禍以降ニーズが急増している。本特集では、消費者のセルフケアに対する関心の高まりや、ニーズに応える注目ブランドの動きを徹底取材。今回はウェルビーイングブランド「Cycle.me(サイクルミー)」を提供するドットミーの井手氏に、市場・ニーズの変化からブランド誕生の背景、マーケティング戦略、ヒットの秘訣まで聞いた。

「本当にいいものを消費者へ」の思いで生まれた、異業種横断の食品メーカー

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日はウェルビーイングブランド「Cycle.me(サイクルミー)」についてうかがっていきます。まず、Cycle.meを展開するドットミーについて教えてください。

井手:ドットミーは三井物産、博報堂、曽田香料、プレイドという異業種の4社が共同出資して生まれた会社です。事業内容としては主に自社ブランドCycle.meの開発・販売と、そこでのノウハウを活かした大手食品メーカーへの商品開発コンサルティングとなります。

 ドットミー設立の背景にあったのは三井物産の課題意識です。質の高い食品原料を調達できる体制を整えても価格面が折り合わず、生活者の手元に商品として届けられていない課題や、できあがった商品を小売り様に販売するだけでは埋めきれない顧客ニーズがありました。その解決のために採った手段が、新たな会社を立ち上げ、自分たち自身が「最終商品を作れるプレーヤー」になること。お客様のもとに商品を届け、直接お客様の反応を学ぶことで、各メーカーへの原料と商品提案、そして小売様にとっても真のパートナーとなることで競争優位を確立するという考えから、ドットミーは生まれました。

 もちろん、原料調達ができる三井物産だけでは商品作りは成り立ちません。消費者へのコミュニケーションが得意な博報堂、味作りの技術に長けている曽田香料、消費者データ解析に強いプレイドが共鳴し、バリューチェーン全体で新たな価値創造を追求する企業横断のチームを構築しています。

株式会社ドットミー COO 井手宏臣氏
株式会社ドットミー COO 井手宏臣氏
Cycle.meのブランドマネージャーを務め、各専門領域の組織を管掌。なお同社では広報部門が商品開発に携わるなど、専門家の強みを企業や社内組織の枠を超えて活かし合う「ワンテーブル型開発」の体制が敷かれている

多忙でも健康になることをあきらめない。「ありそうでなかった」商品群を展開

MZ:Cycle.meのブランドコンセプトと、誕生の背景を教えてください。

井手:三井物産が出資していたAIスタートアップであるブラックスワンデータの解析ツールを用いて、SNSでのトレンド調査を行ったことが出発点です。

 調査の結果、食品に対して「疲れが癒やされる」「気分を変えられる」「集中力が高まる」というベネフィットを求めるユーザーが想像よりも多いことが発覚。リラックス効果や心身の健康を求めるなら旅行やマッサージなど他の手段もあるはずなのに食品にそれを求める背景には、「忙しすぎる」「日々手軽に癒されたい」という、日常の中に非日常の瞬間を探す現代人のインサイトがあるようでした。

 このニーズに応えるため「時間で選ぶ、おいしい栄養。」というキャッチコピーで、朝・昼・夜の生活サイクルのシーンに寄り添う商品群を提案するブランドとしてCycle.meを立ち上げました。食事や間食を通じて心身を切り替えられるソリューションをカテゴリー横断で提案するブランドは、あるようでなかった領域です。時間別の切り替えスイッチとなる商品かつ、健康になることをあきらめないでいられるおいしい商品を、多忙な現代人へ提供することがCycle.meの柱となる考え方です。

MZ:具体的にどのような商品ラインアップを展開されていますか。

井手:Cycle.meの商品は、大きく2つのカテゴリーに分かれます。1つ目は自社ECや@cosme TOKYOなどで販売しているフラッグシップ商品群、2つ目はセブン-イレブンと共同展開している「Cycle.me 7-Eleven Limited」の商品群です。

MZ:フラッグシップ商品をいくつかご紹介ください。

井手:特にフラッグシップ商品群では、「ありそうでない」にこだわり、エッジの効いた商品を開発しています。

 たとえば「ゼリープラス」という商品は、ポーチに入れて手軽に食べられるスティックタイプのゼリー。低カロリーでありながらインナーケアに欠かせない食物繊維をしっかりとれる商品群です。ヘルスケア業界で活用されるなど話題の「グアー豆食物繊維」を使っています。本格的な栄養成分をおいしく提供した点が評価され「@cosmeベストコスメアワード2025 上半期」でインナーケア第1位に選ばれるなど、注目度が高まっています。

 さらに「食物繊維がとれる水」といった、水で栄養をとれる「Cycle.me Water」も開発しています。普段の生活習慣はそのままに、健康をコスパよく「ちょい足し」できるカテゴリーとして、水というシンプルな飲料に注目しました。

 はっきりと味を付けたほうが「おいしい」というフィードバックを得やすいものの、あえて濃い味をつけず、日常的に飲み続けられることを重視しています。通常の商品開発では喫食テストなどのコメントが「普通に飲めますね」といった弱いものになりがちなため、当社が一般的なメーカーであれば展開には至らなかったかもしれません。実際に、ねらい通りXでも累計1,600万Viewを超えるほどのUGCが生まれ、手応えを感じています。

「食物繊維がとれる水」
「食物繊維がとれる水」

MZ:ターゲット層はどのような人を想定していますか。

井手:ターゲットは、主に20代から40代の忙しく働く女性です。特に30代・40代は美容と健康のどちらも気になり始める時期であるものの、忙しい中で「これ以上、健康のために何かを新しく始めるのは大変」と感じる方も少なくありません。そこで、普段の生活の中に無理なく取り入れられて、自然と健康につながるような商品を提案しています。

 たとえば「ゼリープラス」は小腹がすいたときのおやつ代わりに、「Cycle.me Water」はいつものお水の代わりに飲んでいただけます。どちらも新しい習慣を作る必要はなく、普段の生活の一部を置き換えるだけで始められるため、男女問わず美容や健康、体型が気になる方々からご好評いただいています。

 健康意識が高い方の中には既に食事に気を配って自己管理している方もいらっしゃる一方で、「気になっているけど、まだ行動には移せていない」という方もいらっしゃると思います。私たちが特にサポートしたいのは、後者の方々です。「体にいいから仕方なく食べる」のではなく「おいしいから、気づいたら体にいいものばかりを食べていた」という体験を、もっと増やしていきたい。その結果、健康的な食生活に対するハードルが下がっていくと考えています。

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コロナ禍に高まった「インナーケア×切り替えスイッチ」需要

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/18 09:30 https://markezine.jp/article/detail/49387

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