リアルイベントは非日常を感じる「疑似体験」が大人気
今回の分析で最も注目すべきは、ポップアップイベントの進化です。コロナ禍を経て、単なる体験型から「疑似体験型」へと進化しています。
Z世代は「普段できないことを安全に体験したい」という欲求が強く、企業がその欲求を満たす場を提供することで、ブランドへの好感度の向上につながっています。
また、従来のポップアップストアでは無料で商品サンプルが提供されることが多かったのですが、有料イベントも開催されるようになり、人気を集めています。テーマパークに行くような感覚で楽しい体験ができれば、お金を払うこともいとわない傾向があるのです。
憧れ遊びハードル下げ
憧れはあるものの心理的ハードルの高い夜遊びを、安全かつ手頃な価格で体験したいという欲求があります。
近年、写真映えするおしゃれなバーや、筋骨隆々な店員と触れ合えるマッスルバーなどの夜遊びが流行しており、関心を持つZ世代が増えています。そのため、知名度のある企業が提供し、安全性や価格の不安要素を排除した夜遊び体験型のポップアップイベントが人気を集めました。
【事例】サントリー「Barグラスとコトバ」(ポップアップイベント)
自分の気持ちを表す“コトバ”から、その“コトバ”のイメージに合うカクテルを提供してくれるバー体験を楽しめるイベント。壁一面に飾られた多種多様なグラスと、気持ちを表すコトバが記されたコースターからお気に入りの1つを選ぶと、多彩なカクテルの中からそのグラスとコトバのイメージに合ったドリンクが楽しめる。料金は500円と手頃な価格設定で、バー初心者でも安心して楽しめる環境が提供された。
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「いい筋肉の日(11月29日)」のイベントとして、スキムミルク(脱脂粉乳)の認知拡大を目的に開催された。低脂肪・高タンパクなスキムミルクを使用して作った、筋肉の形の「パワー・パウダー・パン」を、筋肉ムキムキな店員が無料で提供してくれるイベント。従来のマッスルバーが持つ「水商売っぽい」「ホストっぽい」「ちょっと怖い」といったイメージを払拭し、クリーンなマッスルバー体験を実現した。
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合法プチモラル違反
モラルに反しかねない行為を、人の目を気にせずに楽しみたいという欲求に応えています。
モラルに反する行為により、SNSで炎上する人を目にする機会が多いZ世代は、他人の目に敏感です。少しでもモラルに反する行為をしてSNSに晒されたり、批判されたりすることを恐れています。その抑圧された欲求を発散できる、モラルに反する行為を合法的に楽しめるイベントが人気を集めました。
料理研究家が監修した「粉雪舞うパスタ店」のオリジナルメニュー(ランチセット1000円)を注文すれば、「クラフト100%パルメザンチーズ」を好きなだけ料理にかけてもいいというイベント。オープニングイベントには、「チーズおじさん(「ネネネネネネベェ〜♪」という独特なリズムに合わせて、パスタにチーズを振りかける動画で世界中で話題を呼んでいるイタリアのインフルエンサー)」も登場。企業が公式にチーズの大量使用を推奨することで、罪悪感なく楽しめる体験を提供した。
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ラフォーレ原宿で開催されたイベント「狂愛!餃子ランド Vol.2」の目玉企画として実施された。UFOキャッチャーをする時に、誰もが1度は考える「手を中から入れてマスコット取りたい」という欲求を、企業公認で実現できる仕組みを提供した
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ミッションクリア対価
労働の対価として得たものに、より価値を感じるという心理を活かしているのが「ミッションクリア対価」です。
近年、無料で商品が提供されるポップアップストアが増加しているため、イベント好きのZ世代は、イベントで商品が配布されることが当たり前だと感じるようになっています。そこで、参加者が何らかのミッションを達成しなければ、対価を得られないシステムのイベントが注目を集めています。
皿洗い、着ぐるみスタッフ、ティッシュ配り、ホールスタッフなど、中華飯店のスタッフとしての仕事をして引換券をもらうことで、中華料理を食べられるイベント。未経験者歓迎、履歴書不要、面接不要で、誰でも参加可能な「大人のキッザニア」的な体験として話題になった。
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1年を振り返るエピソードを大喜利形式でThreadsに投稿すると、年越しそばが無料で1杯提供されるイベント。“スレッズ(Threads)”とそばを“すする”音の響きが似ていることから、投稿コンテンツを通じて今年を振り返りながら、大晦日よりひと足先に年越しそばを楽しもうというコンセプトで開催された。
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