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AI量産社会の“最後の砦”はコミュニティ。ファンを「当事者」に変えるブランドの関与設計

 生成AIの進化によって「つくる力」が民主化され、あらゆる表現が高速で量産される時代が到来した。制作の希少性が薄れるなか、ブランドの価値はどこに残るのか。その答えは、AIには代替不可能な「人間同士の文脈と熱量」に他ならない。今、先進的な企業が向き合い始めているのは、単なるマーケティング対象としてのファンではなく、ブランドの構造そのものに深く関与する「コミュニティ」の存在である。本稿では、AI時代にあえて人間の熱量へと向かうブランドの戦略を、3つの具体的事例から読み解く。

「つくる力」の民主化がもたらす、ブランドの危機

 画像も文章も音楽も、かつては専門的な技術を要した表現がいまや誰もが数分で生み出せる。ブランドのビジュアルやプロダクトのコンセプト設計すらAIが提示する時代において、「つくること」自体の希少性は確実に薄れている。

 この変化は、ブランドの前提を揺さぶる。優れたプロダクトや洗練されたクリエイティブを生み出す力は、もはや企業だけの特権ではない。似たような表現や体験が溢れるなかで、単に“よくできたもの”を出すだけでは差異化は困難だ。では、これからのブランドが持つべき真の資産とは何か。その答えは、「誰が、どのように関わっているか」という関与の設計に隠されている。

「何をつくるか」から「誰とつくるか」へ。価値の源泉は“関与”に移動した

 創造の技術が広く解放された結果、差異を生む軸は静かに移動しつつある。「何をつくるか」よりも、「誰が、どのように関わっているか」が意味を帯び始めているのである。この変化は、いくつかの企業の具体的な取り組みにすでに現れている。

Škoda──プロダクトの決定権を開く

 チェコ発の自動車メーカーŠkoda(シュコダ)は、欧米最大級のコミュニティサイト「Reddit」上の車好きが集まるコミュニティ「r/CarTalkUK」と連携し、主力車種Octaviaの特別仕様モデルを共同設計するプロジェクトを実施した。

 同社はまず、コミュニティ内でテストドライブ参加者を募り、実際に車両を体験してもらった。そのうえで、エンジン仕様、内装デザイン、装備オプションに至るまで複数案を提示し、投票によって仕様を決定する形式をとった。ユーザーは単に意見を述べるのではなく、実際の製品仕様を選択する立場に置かれたのである。

テストドライブに参加したコミュニティメンバー(出典:Leo UK

 結果として、Reddit上でのŠkoda関連言及は約46%増加。さらに、該当モデルの注文数は想定比で255%増となったと報告されている。同キャンペーンはカンヌライオンズでの受賞にもつながった。

 ここで開かれたのは、プロダクトの決定権である。企業が設計し、消費者が選ぶという従来の構図は、一部とはいえ逆転した。

Feeld──表現の主語を共有する

 次に、英国ロンドン発のデーティングアプリFeeldである。多様な関係性やセクシュアリティを前提とする同サービスは、コミュニティの存在をブランドの中心に据えてきた。

 2023年のリブランディングにおいて、Feeldはユーザーを単なるインサイト源として扱わなかった。実際のユーザーを制作プロセスに組み込み、撮影キャストもコミュニティから公募。さらに、制作チームには当事者であるユーザーが参加し、ブランドのトーンやビジュアル表現に直接関与している。

ユーザーが制作プロセスに関与した広告(出典:The Brand Identity

 これは「ユーザーの声を反映した」ブランディングではない。ユーザーが語り手となったブランディングである。つまり、ここで開かれたのは、ブランド表現の主語である。企業が語るブランドから、コミュニティが共に語るブランドへと構造が移っている。

Nothing──経営と資本を接続する

 コンシューマーテック企業のNothingは、さらに踏み込んだ構造を構築している。象徴的なのが、コミュニティ代表が取締役会に参加する「Community Board Observer(CBO)」制度だ。ファンが直接経営陣に声を届け、その内容をコミュニティへ報告する。加えて同社は、一般の支持者に株式投資の機会を開放する「Community Investment」を実施。シリーズCでは評価額13億ドルに達する成長を遂げた。

Community Board Observerに選ばれたコミュニティメンバー(出典:Nothing

 Nothingが開いたのは、マーケティングの枠を超えた「ガバナンスと資本」である。ファンはもはや消費者ではなく、構造の内部に組み込まれた当事者となっている。

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AI時代に、なぜ「ファンダム」が意味を持つのか

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/03/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50444

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