「誰も広告なんて見ない」を前提に。衝撃重視の設計術
(写真右)きぬた歯科 院長 きぬた 泰和氏
阿部:きぬた歯科の広告は、首都高を走るほとんどの人が認知しているのではないかと思います。看板の目立つ3色カラーは特許を取られているそうですね。きぬた先生はこれまで様々な広告を試してこられましたが、広告費はどのくらい使いましたか。

きぬた:都心部の20数億円のマンション、2部屋分くらいです。広告に人生をかけてきました。
阿部:40億円! それだけの身銭を切って広告を出してきたご経験から、効果の出る良い広告とは何かをうかがっていきます。
実は「MarkeZine Day」できぬた先生に良い広告についてお話いただくのは、今回で3回目となります。まずは、2023年秋の第1弾に話した内容をおさらいします。そもそも、どういった経緯で先生の顔写真を看板にするようになったのでしょうか。
きぬた:2007年に国内でインプラント手術の死亡事故が起き、それがテレビで特集された影響で当院にも誰も来なくなってしまって。こちらも食べていかなければなりませんので、広告出稿に力を入れました。
最初は歯茎の写真を使って、インプラントのビフォー/アフターを見せる看板を置きました。それはターゲットに刺さって効果は良かったのですが、「気持ち悪い」と周辺から苦情が多くいただいて。正直最初からそうなるだろうという予測はありました。しかし、人はみな自分の人生を生きているので、広告なんて見ないんですよ。そうした中で見てもらえるインパクトが大事だと考え、あえて歯茎の写真を使いました。
阿部:誰も広告なんて見ないことを前提に考え、インパクトのあるクリエイティブにすることが大事だということですね。
きぬた:そうです、衝撃を与えないと誰も覚えないですから。ただ、苦情が多いと精神的に追い詰められてしまうので、顔写真にインプラントという短いメッセージを入れるクリエイティブに変えました。
阿部:同じ場所に何個も看板を置いて、数でインパクトを出すというお話もされていましたね。
きぬた:何個も見ることで覚えてもらうためでもありますが、数で衝撃を与えることを狙っています。あとは、場所の意外性による衝撃ですね。きぬた歯科は東京・八王子にありますが、三重の伊勢神宮と栃木のあしかがフラワーパーク周辺にも看板を置いています。

阿部:それらを見て来院された方はいますか。
きぬた:伊勢神宮はいないですが、あしかがフラワーパークで見た方はたくさん来ています。伊勢神宮の方は、通過してしまう場所なので印象に残りづらいのですが、あしかがフラワーパークは駐車場に行く人が必ず見る場所なので、目にとまりやすいのです。
エンゲージメントを高めた箱根駅伝のスポンサー
阿部:「MarkeZine Day」登壇第2弾では、箱根駅伝で法政大学のスポンサーをした結果、エンゲージメントが上がったというお話をうかがいました。
きぬた:あの広告は成功でした。スポーツ番組の中でも、視聴率が一番高いのが箱根駅伝です。放送日の2日間、視聴率30%をほぼキープします。また、箱根駅伝が中継されるテレビやラジオで広告が出ると、「自分の子が良い会社に勤めている」と思われる効果があります。実際に当院スタッフのご両親もすごく喜んだそうです。
阿部:内定辞退率を下げるためにお正月にテレビCMを流す会社もありますからね。当時はSNSでも「なぜ、きぬた歯科が?」とバズり、UGCがたくさん生まれました。これらの効果から講演では「良い広告は反響を生み出し、一石五鳥を狙えるもの」という結論になりました。
阿部:こうした広告効果もあり、きぬた歯科の売上はここ数年、毎年過去最高を更新しているそうですね。
きぬた:10月決算なのですが、今期はさらに前年より良くなっています。
