広告を通した消費者との関係に変化のきざし
前回は、マスメディア4媒体とプロモーション活動、さらにはネット展開を組み合わせて広告展開する「Through the line」の考え方を紹介しましたが、このような手法が一般化するにつれて重要になるのが、企業と消費者の間の首尾一貫したコミュニケーション構築です。今回は、なぜ、そうしたコミュニケーションが必要とされているのかについて、見ていくことにしましょう。
消費者が受け取る情報量の増大
現在の広告を取り巻く環境の中では、消費者と企業(ブランドやサービスの提供者)が接触する機会、つまり情報を交換する機会が、インターネットの登場によって非常に多くなりました。そのこと自体はよいことのように思われますが、せっかくインパクトのある認知を得ても、さまざまな情報が飛び込んでくるために、ほしいと思った記憶が紛らわされてしまうことが多くなっているようです。
たとえば、皆さんもテレビや新聞で「おっ!この商品、いいね。今度見てみよう」と思って、インターネットや屋外広告・交通広告などで似たような商品やサービスの情報を得ると、もとの情報がどんな内容だったか正確に思い出せなくなってしまうことはありませんか? 消費者にとっては、代替品で十分な場合もありますが、企業にとっては、せっかく大きな費用をかけたマス広告から発した情報の鮮度が保てないというのは大きな問題です。
その対策として企業は、ネット検索へ誘導する内容をマス広告に入れることやキャラクターの活用、アイコン化したモチーフやコピーの活用などさまざまな施策を展開しています。消費者が商品の購入やサービスの利用時に、その企業を確実に指名するための工夫を行っているのです。
広告情報に対する信頼感の低下!?
このような事態は我々のような広告に携わる人間には非常に由々しき問題なのですが、マス広告などに触れただけでは、消費者はその商品の価値を判断しきれないという状況が問題視されてきています。その一方で、PCや携帯電話では、商品にはまったく触れずに購入したり、お取り寄せ(地方の名産品や限定品を通信販売で購入する)のようなサービスによって、高額商品であってもその評判を信用して購入する人たちが増えています。これは、どういう現象なのでしょうか。
目の肥えた消費者の誕生
今、多くの人にとって、生活必需品といわれるもののほとんどはそろっているというのが現状ではないでしょうか。「絶対必要なものがないから買う」というよりも、「より良いものを求めて購入する」というのが購買行動の大半を占めている状態では、「今までとどう違うのか?」、ということが、購買の決定要因になることが多くなります。しかし、広告が伝える限られた情報では、新しさや特化した情報だけを伝えるのが精一杯。15秒のテレビCMや、雑誌の広告ページだけで、すべての情報を伝えるのは困難、というのが現状です。
こうした理由から、首尾一貫した「Through the line」のコミュニケーションによって、的確なタイミングで的確な情報を提供するとこが重要になります。Awareness(認知)の獲得→購買→購入後というフローの中で、首尾一貫したコミュニケーションを構築するためには、何が必要なのでしょうか。