激変するメールマーケティング
コミュニケーションや情報伝達のためのツールとして、いまや我々の日常生活に欠かせない存在となったメール。マーケティングにおいても、インターネットの商業利用が始まった初期の頃から、会員向けのメールマガジン発行など顧客あるいは見込み顧客に対し情報を配信する手段として広く活用されてきた。しかし近年、インターネット利用率の上昇、モバイルの普及、技術の進歩などにより、メールマーケティングを取り巻く状況が大きく変わってきているという。
それでは具体的に、どういった変化が起きているのか。ここでは「MailPublisher」などのメール配信システムで知られるエイケア・システムズの北村氏に、昨今のメールマーケティング事情と今後の方向性について尋ねてみた。
モバイルを重視したメールマーケティングがますます重要になる
世間は不景気で沈滞ムードが漂うものの、ネットビジネス市場はいたって活況、いまだ拡大を続けている。例えばEC市場では、昨年大手ネットモール「楽天」が1日の売り上げ30億円という過去最高額を記録した。野村総研が12月に発表したレポートによると、ECを含むオンライン決済市場の成長は「モバイル」が牽引しており、2008年のモバイルEC市場規模は約400億円。2013年には約1000億円に成長するという見通しがでている。
「今後、モバイルがますます重要なプロモーションの場になるのは言うまでもなく、それに伴いメールマーケティングでも、モバイルに対するニーズが高まるでしょう。当社が提供するASP型のサービスでは、月間5億通強のメールを配信がされていますが、今ではモバイルの占める割合が過半数を超えています」(北村氏、以下同)
エイケア・システムズが創業したのは1999年。当時、メールマーケティングと言うとPC向けが主流で、同社を含めたメール配信システムベンダーは、PC向けのソリューションを提供していた。ASPという単語も浸透していない頃で、メールマーケティング自体に着手していない企業も目立ったという。
「メールは企業と顧客の間のコミュニケーションツールとして使われるのが主で、メルマガで会員を囲み込んだうえで何らかの情報を発信し、満足度の向上を図るために使われていました。それが徐々に売上げに直結する販促手段として使われるようになり、さらにPCからモバイルへとメールの送り先となるデバイスにも変化が訪れるようになりました」
こういったニーズの変化は、メール配信システムにも大きな変化をもたらしたという。莫大なデータベースを持つECサイトは、会員に対して簡単にメールが配信できるシステムが必要で、いまは既存のデータベースと連携できるASPが好まれる。
現在、エイケア・システムズのサービスを利用する多くの顧客が、モバイル向けのメール配信ASPを利用。かつてのシェアは逆転している。
「モバイルという常に身近にあるツールだと、ユーザーへリーチしやすいというのが最大の理由です。最近は訴求力の高い『デコメ』を使ったメールプロモーションが人気で、平時に比べて20~30倍のアクセスを実現したケースもあります。しかもメールといえば、Webにおける数少ないプッシュ型の情報伝達手段。プル型のように待ちの姿勢ではなく、送り手側からすれば『伝えたい時』、受け手からすれば『欲しい時』に情報のやり取りができます」