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リサーチから読み解く、AIと生活者の「共生」のいま

AIが生活者の“手放せない存在”になる理由とは?3万人調査で見えた、「4つの生活文脈 」と定着条件

千場 明美[著]

生活情報探索の文脈──迷わず必要情報にたどり着くAI

 生活に必要な情報を探索する文脈では、AIは日々の疑問を解消するための身近な道具として使われている。こうした特徴が強く表れたのがシニア層で、「日常のちょっとした疑問の解消・調べもの」でAIを利用する人は73%にのぼる。健康や年金、行政の手続き、趣味など、生活に密着した情報を得る場面での利用が中心だ。

 自由回答では、「Google検索には戻れない」「辞書や百科事典を調べていた頃には戻りたくない」といった声が並んだ。ここで失われるのは、検索という行為そのものではない。複数のサイトを行き来し、情報を探して読み比べ、自分に必要な情報を判断するまでの負荷である。AIは、その一連の情報探索の負荷を肩代わりし、「結局、自分はどうすればよいのか」という答えまで最短でたどり着ける存在として生活に組み込まれている。

 ちなみに、シニア層においてはAI利用への罪悪感がほとんど見られなかった。興味深いことに、若年層で見られた「考える力が衰えるのではないか」といった葛藤はほとんどなく、AIは自分の能力の代替というよりも、生活を便利にする道具として受け入れられていた。生活に必要な情報へ迷わずたどり着けること、そして情報探索にまつわる負荷を減らし、日々の暮らしを支えてくれることに定着条件が見られる。

【図表1】ライフステージ別・AIの使い方となくなった場合の困りごと(クリックして拡大)

マーケターへの示唆──AI時代にも変わらない、価値設計の原点

 同じAIチャットであっても、学び・自己整理の文脈では、非評価性やプライバシーへの配慮、利用者が「自分で考えた感覚」を保てることが重要になる。同様に仕事・実務の文脈では、AIが答えを出し切ることよりも、たたき台や要約を通じて人が確認・編集しやすい状態を作ることが定着につながる。

 一方、生活情報探索の文脈で求められているのは、「結局、自分はどうすればよいのか」という答えまで示すことだ。仕事では手元に残したい判断を、日々の調べものではむしろ委ねたいのである。

 つまり、生活文脈によって求められる価値は大きく異なってくるため、AI利用の定着条件も異なるのだ。

【図表2】生活文脈から見たAIの代替負荷と定着条件(クリックして拡大)

 AIの機能そのものから発想するのではなく、「生活者がどの場面で、何に困り、どのような負荷を軽くしたいのか。どんなポイントを押さえた上でのサポートを心地よいと感じるか」という生活文脈から、必要な体験を考える必要がある。これこそがマーケターにとって重要な視点である。

 そして、これはAIに限った話ではない。生活者の置かれた状況を捉え、そこにある困りごとや満たされていないニーズを見つけ、それを解消する価値を設計する。これは、マーケティングやサービス設計がこれまでも大切にしてきた基本的な考え方そのものである。

 AIという新しい技術を前にすると、「AIだからこそ何ができるか」という機能起点の発想に目が向きやすい。しかし今回の調査から見えてきたのは、AIだからといって価値作りの原則までは変わらないということだ。

 むしろ、AIが生活の様々な場面に入り込む今だからこそ、「誰の、どの場面の、どんな負荷を軽くするのか」という原点に立ち返ることが重要になる。新しい技術ゆえの特別な答えを探すのではなく、生活者を起点に価値を考える。そのマーケティングの基本こそが、AI時代のサービス設計において改めて重要になっているのではないか。

 本連載では、AI×生活者の実態や関係性を様々な調査やデータから解き明かしていく。次回は「生活者はどこまでAIに委ねるのか」をテーマに取り上げる。生活者がAIとの間に引いている「委任の境界線」を明らかにし、AI時代に企業やブランドが担うべき役割を考察する。

【調査概要】

<定量調査>
調査名:AI時代の生活者調査
調査対象者:全国15~79歳男女
サンプル数:
 -事前調査 30,000サンプル(性年代の人口構成比に合わせて割付回収)
 -本調査 10,300サンプル(生成AI現利用者5,150サンプル、離脱層515サンプル、未利用者層4,635サンプルで割付回収)
調査方法:インターネット調査
調査時期:2026年5月27日~6月1日
調査委託先:株式会社マクロミル
企画・分析:QO株式会社

<定性調査>
調査名:生成AIの利用に関するAIインタビュー調査
調査対象者:全国15~79歳男女
サンプル数:生成AI利用者106サンプル/生成AI未利用者及び離脱者 72サンプル
調査方法:AIインタビュー調査(AIが生活者に対してモデレートを行う形式のデプスインタビュー)
調査時期:2026年6月26日~6月29日
調査委託先:株式会社powのSpark Researchを使用
企画・分析:QO株式会社

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この記事の著者

千場 明美(センバ アケミ)

QO株式会社 マーケティングコンサルティング本部 リサーチコンサルティング部

事業会社を経て、2020年にQO株式会社(旧H.M.マーケティングリサーチ)へ参画。小売・食品系企業のKPIマネジメントやアドホック調査、広告キャンペーンの効果測定をメインに担当。2026年よりリサーチコンサルタント職として、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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