戦略づくりの過程では、数多くの道の中からただひとつの進むべき道を選び、それ以外の道をあきらめなければなりません(もちろん、次の機会に選択することはできますが、現実的には費用・タイミングなどの問題で、その時点ではひとつしか選べません)。したがって、“目的”で進むべき道のイメージを明確にすることが重要だということになります。
しかし、良い戦略をつくるためには、目的に合致した道を数多く見出す目利きの力が大切です。実は、目の前にゴールへの近道があるはずなのに、その道に気づかないと、その道を選択することすらできません。戦略の骨格づくりの前に、いくつかのTIPSを通して、目利きの力を養いましょう。
TIPS 1 売上の分解
あなたが「ビジネスの売上を拡大すること」を目的として設定することは間違いではありません。しかし、分解の視点を加味して設定することで、より発想が刺激されることでしょう。そこで顧客の購入時点に着目して、売上を分解した、以下のような方程式を用いてみましょう。
(売上) = (1回あたりの購入量) × (一定期間における購入回数) × (顧客数)
この方程式を念頭に置くことで、ある一定期間の売上を拡大するためには、
①使用量を増やして、より大容量のものを買ってもらえるように仕向けたり、まとめ買いを促進したりする
②使用量を増やすように仕向けて、購入の頻度を増やす
③新しい顧客を獲得する
という3つの方向性、すなわち3つの進むべき道がおぼろげに見えてくるのです。すると、目的の設定もより鮮明なものになるのではないでしょうか?
TIPS 2 戦いの状況
サッカーとドッヂボールの球技としての違いをイメージしてみてください。勝ち負けの決定の仕方に大きな違いがあります。サッカーは、ゴールネットを揺らした回数で得点が入り、数多く得点を入れたチームが勝ちになります。しかし、ドッヂボールは、相手チームの内野のプレイヤーを先にゼロにした方が勝ちになります。

サッカーは、得点機会さえあれば、その数だけ得点が入ります。チャンスを生かしさえできれば、新しい顧客を獲得したり、使用頻度を増やしたりして、新しい需要を創造できる状況におけるマーケティングの戦いに似ています。一方で、ドッヂボールは、外野プレイヤーが相手チームの内野プレイヤーをアウトにすると、自分のチームの内野が増えて、相手チームの内野が減るという戦いで、ある種のゼロサムのシェアバトルに状況が酷似しています。成熟しきった市場においては、シェアバトルに陥っていると考えがちです。競合からシェアを奪取することも確かに重要な戦略ですが、本当に新しい需要を創造することはできないでしょうか? そんなチェックの視点が、見えてなかった進むべき道を、明るく照らし出してくれるかもしれません。
自問自答してみましょう。あなたの戦いは、「サッカー型」か、それとも「ドッヂボール型」でしょうか?
TIPS 3 購入ステップの分解
あなたのビジネスを顧客の購入ステップから見つめてみると、そこにも課題や進むべき道が見えてきます。そこで顧客の視点から分解してみましょう。
- 認知 あなたの(潜在)顧客は、商品・サービスが知っているか?
- 関心 あなたの(潜在)顧客は、商品・サービスに興味を持っているか?
- 検討 あなたの(潜在)顧客にとって、商品・サービスが競合との比較・検討対象になっているか?
- 購入意向 あなたの(潜在)顧客は、商品・サービスを購入する意思をもっているか?
- トライアル あなたの(潜在)顧客は、商品・サービスを試しに購入したか
- 試用 あなたの顧客は、商品・サービスを試しに使ってみて、満足したか?
- リピート あなたの顧客は、商品・サービスを再購入したか?
- 満足 あなたの顧客は、商品・サービスに満足しているか?
この考え方は、次回ご説明する戦略の骨格づくりに非常に重要な概念となります。それではまた次回お会いしましょう。


