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“相似形”で考えよう!マーケティング脳を鍛える10のレッスン

戦略は目的達成のために… レッスン5 ~マーケティング・プランニングのイロハ~

今回も、マーケティング・プランニングについて一緒に考えていきましょう。前回は、マーケティング・プランニングは“Zoom-In”の基本スタンスで行うということをお話ししました。360度を眺める「マクロの環境分析」、さらに絞り込んだ「市場環境分析」の次は、いよいよ戦略づくりへとギア・チェンジをしていきましょう。

戦略づくりの最初の一歩

 戦略づくりのプロセスの手始めにやるべきことがあります。それは、その戦略で達成したい「目的」を確認することです。もし、目的が明らかでない場合は、ぜひ一度立ち止まって考えてみることが大切です。「目的」は、戦略判断の基準であり、戦略の良し悪しを考えるにも、目的の明確化なしにはあり得ないからです。

 あなたが高校の野球部監督で、部員の基礎体力づくりのメニューを考えていたとしましょう。その野球部には伝統的に受け継がれているランニング・腕立てふせ・うさぎ跳びなどを組み合わせた練習メニューが経験則的に存在します。ところが、ある日、「うさぎ跳びは実は足腰を痛めて、逆効果だからやめた方が良いのでは」という意見を小耳にはさみました。一方で、上級生部員やOBの中からは、「伝統なのだから気にすることはない」という声も聞こえてきます。さて、どう考えたら良いでしょうか?

 このようなときこそ、立ち止まって考えることが肝要です。「うさぎ跳び」が本当に不適切なトレーニングだとするならば、もちろん、メニューから削らねばなりません。野球部が強くなるための戦略の一環がトレーニングであることは疑いの余地もありません。その際に、判断の基準となるのが、野球部にとっての「究極のゴールとは何か」ということであり、トレーニング・メニューづくりの「目的」なのです。

 もし、この野球部にとって、「県大会で優勝し、甲子園に出場すること」が究極のゴールであり、トレーニングの目的は、「部員たちの基礎体力の向上」であると明言できるならば、「うさぎ跳び」はあくまでもゴール到達、目的達成の手段と位置付けられます(「ゴール」の設定については、本連載のレッスン1をご参照ください)。もし仮に、ウェイトマシンのトレーニングなどの代替手段によって、その目的が安全かつ確実に達成し、ゴールに近づくことができるのならば、それを判断基準としてトレーニング・メニューから削れば良いのです。

 しかし私たちは、このような課題に直面したときに、とかく近視眼的になりがちです。「うさぎ跳び」が良いのか、悪いのかという議論を始めてしまいます。ここで一番大切なのは、甲子園という究極のゴールであり、そのための手段であるうさぎ跳びの是非は、部員の体力アップと危険性とのトレードオフで、必然的に判断されるのです。

戦略の方向性は目的によって決まる

 戦略づくりとは、自分たちが到達したい究極のゴールへのアプローチを現実のゴールの達成によって積み重ねていく、演繹的な作業に他なりません。そしてその現実のゴールの中から、今まさに達成しなくてはならない概念こそが、目的であり、戦略の方向性をはじめとして、全ての拠り所になるのです。ゴールが違えば、目的も戦略も異なるのです。そして、より適切で具体的なゴールを記述することは、私たちの戦略づくりの発想を次々と刺激します。

 家を買う場合を考えてみましょう。その家でどのような生活をイメージするのでしょうか? 2人の子どもを持つ若夫婦が「5歳の息子と2歳の娘が20年後に自立するまでの人間教育を重視する家にしたい」と、その“ゴール”を打ち出すのであれば、「子供たちが家族団らんの中で心身ともに健やかに育つことができ、勉学にも集中して打ち込むことのできる環境の実現」という“目的”を書き出すことができます。

 このような家族では、家族の時間を大切にするリビングルーム重視の一方で、勉学に集中できる子供部屋のあり方がイメージされるのではないでしょうか? このように、アタマに次々と思い浮かぶ“発想”こそが、目的設定をした大切な産物なので、忘れずに書き留めましょう。同じゴールを持った家族でも、「2人の子供と、祖父母と3世代で生活しながらも、プライバシー尊重の実現」という“目的”を設定した場合では、全く別の家づくりが考えられます。リビングルーム以上に、祖父母がリラックスできる近隣の友人と集える客間や、お父さんが仕事に熱中できる書斎などもあると良いというアイディアが浮かんできます。目的が違えば、戦略づくりの発想の方向性が違ってくることは、もうおわかりだと思います。

戦略づくりの前に…

 さて、戦略づくりは取捨選択のプロセスとなります。

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この記事の著者

東急エージェンシー 神通 靖彦(ジンヅウヤスヒコ)

理系出身のマーケティング・プランナーを目指し、総合広告会社(株)東急エージェンシー入社。マーケティング局、デジタルマーケティング局などを経て、現在、ナレッジセンター所属。広告主と一緒にマーケティング、戦略、ブランド議論などを効果的に行う新しいカタチを開発・提供中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2007/05/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/1209

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