流入経路別に調べて分かった。予想以上に高い検索ユーザの離脱率
フォーム入り口からコンバージョンに至るまでの離脱率をチェックする――。
フォームを改善する際に、ツールでこのようにしてデータを集めて、分析してはいないだろうか?
一見、正しいようにも思われるかも知れない。しかし、サイトを訪れるユーザの動機はさまざまだ。どんな流入経路から、どんなメッセージを受け取って訪問したのかを考慮せず、単なる平均的なデータだけを追っていては、成果を向上させる改善はできないのだ。
今回は、流入経路まで踏まえた分析に取り組んでいる企業の事例として、外国為替証拠金取引(FX)専業で初めて上場したマネーパートナーズを紹介しよう。
「フォームの離脱率は、流入経路が分からないと意味がない」、と同社マーケティング部グループリーダーの山本賢氏はこのように話す。その理由は、ネット広告などでキャッシュバックやプレゼントなどのインセンティブを与えて会員を獲得している場合があり、必ずしもユーザの意欲が一定ではないからだ。
「中には『インセンティブを付与するから申し込んでください』という広告もあります。そういった広告から入ってきたユーザは、90%の確率でコンバージョンしてしまうのです。フォーム改善をするのなら、会員登録の意向が極端に高いユーザを除き、自然検索経路などの数字だけを使って、施策を考えるべきではないでしょうか」(山本氏)
山本氏が流入経路別の分析が重要であると考えはじめたのは、自然検索経由のユーザの離脱率が予想以上に高かったことに気付いた後からだという。
「もともと当社の申し込みフォームは同業他社と比べて長く、以前から改善の必要性を感じていました。そこで、応募キャンペーン・自然検索経由など毎に、フォームの入口には何件来て、2ページ目には何件進むのかということを測定しました。その結果、自然検索経由のユーザはこれまでの想定より離脱していることが分かったのです。それが契機となり、フォームの改善を進めています」(山本氏)
これからは、マネーパートナーズが行っている流入経路別の効果測定方法を具体的に見ていこう。
広告効果測定ツールで流入経路別にフォームの離脱率を分析するには
マネーパートナーズでは、流入経路別の離脱率を測定するため、株式会社ビービットが提供する広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」を導入している。
確かに、広告効果測定ツールなら流入経路別に成果(コンバージョン数)を容易に測定することができるが、通常アクセス解析ツールで測る離脱率はどうしているのだろうか?
「ウェブアンテナの中間コンバージョン(CV)という機能を利用し、申し込みというゴール(=最終コンバージョン)手前に中間的な成果ポイント(中間CV)を設け、測定しています。より具体的には、5ページにわたる入力フォームの各ページを中間CVとして設定しています。そうすることで、フォームの入口ページからの離脱率を測れるようにしたのです」(山本氏)
流入経路別に会員の継続率が測定できる体制を構築
マネーパートナーズは今でこそ高度な分析に踏み込めているが、以前は効果測定の体制が整っていなかったという。少し前までFX業界は拡大路線で、アフィリエイト経由で十分な数の会員が集まっていた。そのため、収支を見るだけで、効果検証にまで取り組んでいなかったのだ。
だがFXブームも徐々に収束。競合企業も増え、各社が横並びの施策を行っていたため、収益性が悪化し始めた。マーケティング部に対しては、費用対効果の改善が求められるようになっていった。
そんな課題を感じていたマネーパートナーズが、馴染みの広告代理店から薦められたのは株式会社ビービットが提供する広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」だった。導入後、同社のネット広告の効果測定体制は大幅に整備された。
「以前は、自社ツールを使っていたのですが、コンバージョン数とどの媒体からのコンバージョンかどうかしか追えていませんでした。ウェブアンテナの導入後は、流入経路ごとにクリック数、コンバージョン数が分かるようになりました。つまり、どの媒体からどのくらいのボリュームで流入して、どれほどコンバージョンしているのかが一覧で分かるようになったのです」
導入のメリットはそれだけではない。自社システムと連携して売上情報と紐付けながら流入経路を評価しているのだ。
「これまでの知見から、大口の顧客は流入経路によらず一定数います。しかし、入会後にどれだけ使い続けてくれるかという継続率は流入経路によって差があるのです。どの媒体から獲得した会員の継続率が高いのか、すぐに分かるようになったことで、注力すべき経路を判断できるようになったのです」
どの経路がどれだけ収益に貢献したのか確認できる点でも、ウェブアンテナを気に入っていると山本氏は語る。