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多言語facebookページで世界を相手にビジネスを!新興国・BOP市場を攻略する切り札「エスノグラフィー」

2011/07/15 14:00

 国内需要が飽和を迎えた昨今、新興国でのビジネスチャンスを模索している企業も少なくないだろう。文化も生活様式も大きく異なる新興国でビジネスを考えた場合、先進国である日本のマーケティング手法が通用するのだろうか。FatWire株式会社主催の「エスノグラフィーとグローバルWeb」セミナーでは、新興国やBOP(Base of the Pyramid)市場を開拓する際の切り札である、エスノグラフィーを活用したマーケティングについてが紹介された。

日本のバイアスに惑わされるな。新興国で伸び続けるfacebookユーザー

 まず始めに、イントロダクションとして、FatWire株式会社代表取締役 田中 猪夫氏によって、現在の新興国を取り巻く環境について紹介された。

FatWire株式会社 田中 猪夫氏
FatWire株式会社 田中 猪夫氏

 「先進国に対するWebマーケティングは、『情報をわかりやすく伝え』『受け手が情報を探しやすくする』ための表現技術であるIA(Information Architecture)をいかに確実・効率的に実装するかがキモとなるが、新興国やBOP(Base of the Pyramid)に対してはもっと深く入り込んでニーズを探るところから始めなければいけない」と語る田中氏。

 BOPとは、「Base Of the Pyramid」の頭文字をとったもので、世界の人口ピラミッドの基礎部分に位置する所得階層の人々のこと。一般的に年収3,000ドル以下、1日8ドル以下で暮らす人々を指すことが多い。(参照:BOPビジネスの可能性

 そんな新興国やBOPで今、急速に伸びているのがfacebookだ。7月6日にCEOのマーク・ザッカーバーグ氏がプレスイベントで発表した数字によると、過去30日以内にログインしたアクティブユーザーが7億5000万人に達したそう。(参照:マーク・ザッカーバーグ、facebookの活動中のユーザーは7億5000万人と確認

 「facebookのユーザー数動向が分かるsocial bakersによると、2011年7月時点で、世界最大のイスラム国であるインドネシアでは3,900万人、経済成長率が高いトルコでは2,900万人、エジプトでも800万人のユーザー数があります。日本で騒がれている実名性に対する論議はさておき、facebookは世界中で伸びており、新興国やBOPの人々を取り込んでいることは間違いない」と田中氏は語り、日本のグローバル企業がそこへ商売をしていかない手はないと、多言語プラットフォームであるfacebookに秘められた大きなビジネスチャンスを示唆した。

 では、BEST BUYのようにfacebook上で商品情報のfacebookページや商品購入ができるサイト(F-commerce)を運営するにあたり、その国に合った商品を提供するには、どうすればいいのだろうか。

 まず欲求と所得の相関を示した「5つの商品弾性率」のグラフの中で、商品がどのカテゴリに属するかを把握してから、各国のニーズを探る「エスノグラフィー」という手法を取り入れるのが効果的だと語る田中氏。それぞれの商品群は次の通りに分類される。

  • 第1商品群…生活必需品。所得が低い時に欲しいもの(食→衣→住むところ)
  • 第2商品群…代用品。所得が低いときに急激に伸び、ピークになり売れなくなるもの。自動車の代替え品の原付や自転車。豊かな社会になると第4商品群になることもある(自転車など)。
  • 第3商品群…比較的ぜいたく品。所得がある程度の水準に達するまで欲求が出てこないが、第1商品群の伸び率がゼロになったあたりから出てくる。TV、自動車、バイク(複数台持つこともある)→従来の日本の輸出品。
  • 第4商品群…純ぜいたく品。第3商品群の伸び率がゼロになるころに伸びる情緒性商品。DVD、TVゲーム、iTune音楽、ゲームなどいくつでも欲しくなる無限界商品。
  • 第5商品群…情緒安定化商品。第4商品群までに生まれた格差感などに対し、情緒を安定させるもの。酒など。

 これらを事前に把握することで、第1商品群(生活必需品)であれば新興国やBOPで販売すれば伸びる可能性は高いが、第4商品群を販売しても売れる可能性が低いなど新興国やBOP市場で何を売ればよいのか見通しを立てることが可能だ。田中氏は味の素が小分けで安くした商品を販売してBOP市場で爆発的な大ヒットとなった例などを紹介した。

講演資料より掲載(以下、同)
講演資料より掲載(以下、同)

古くて新しいマーケティング手法『エスノグラフィー』とは何か

 続いて、株式会社大伸社 m.c.t事業部 常務取締役 上平泰輔氏と取締役 白根英昭氏によって、新興国のニーズ把握において有効であるというエスノグラフィーについて、詳しく紹介された。

株式会社大伸社 上平泰輔氏(写真左)、白根英昭氏(写真右)

 エスノグラフィーとは、現地のフィールドに入って観察やインタビューを行い、そこで生活する人々の文化や社会システムを理解するアプローチのこと。近年ではマーケティング手法のひとつとして、エスノグラフィーが取り入れられるようになってきたという。

 ポイントは「聞くのではなく、行動を直接観察して、消費者自身も気付いていないようなニーズを探すこと」と、「現地のフィールドに入って、リアルな状況で観察すること」の2点だ。

どうしてエスノグラフィーが求められる?

 エスノグラフィーが求められる背景には、従来のアプローチ手法の限界が挙げられると語る上平氏。その一例として、iPhoneのヒットを紹介した。日本で初めてiPhoneが発売された2008年7月11日からわずか13日後に日本経済新聞に掲載された「次に買いたい操作方法・形状の携帯電話」についてのアンケート結果は、『キー操作の折り畳み』という回答が男女平均約60%以上を占め、『タッチパネルのストレート』と回答した人はわずか10%にも満たなかった。

 しかし、今となっては、『タッチパネルのストレート』である、iPhoneをはじめとするスマートフォンが爆発的に売れているのは、言うまでもない。「複雑化する世界では、アンケートのような従来の手法によって、イノベーションは出てこない」と上平氏は指摘した。

 これまでのマーケティング手法では、製品に焦点が当てられ、企業側が用意した評価基準の中で評価し、改善されるというやり方が採られてきた。けれども、国の産業計画や文化など、何もかもが異なる新興国においては、その評価軸に意味があるのかさえわからない。

 エスノグラフィーを活用して、現実世界のコンテクストの中で人々の活動を理解することから未対応のニーズを探る「人間中心のアプローチ」を行うことが大切である(上平氏)

新興国の『今』を知る

 次に上平氏は、新興国で見られる共通点についてインドを例に挙げながら話を進めた。紹介された7点について、順番に見ていこう。

常に変化し続けるインフラ環境

 facebookの伸びを見てもわかるが、新興国では何でも急速に伸びる傾向がある。

幅広い階層〜ミドルクラスの台頭

 新興国では、階層がはっきり分かれていて生活格差もかなりの開きがある。インドを例に挙げると、貧困層や低成長層が減少傾向にあり、2025年には年収56万円~280万円の探求層や急成長層が5億8,300万人にまで急増されると予測されている。こういった経済状況を把握しておくことも重要だ。

情報のグローバルアクセスが急速に拡大

 インドのネットカフェは1時間30ルピー(約50円)であり、驚くほど高いわけではない。facebookユーザーの伸びを見てもわかるが、中近東ではネットカフェがかなりの勢いで増えている。

ライフスタイルの変化

 77%の都会の人、69%の地方の人が女性の社会進出を支持している。これまで働き口のなかった女性が外へ働きに出られるようになれば、ライフスタイルの変化が起こることも念頭に置いておく必要があるだろう。

新しい技術に対してポジティブ

 老若男女問わず、新しい技術に対して積極的なのが新興国の特徴。マサイ族も携帯電話を保有している。製品の海外展開を検討する際には、ネガティブ要素を削除していくのではなく、技術的なポジティブ要素を伸ばしていった方がいい。

それぞれ異なる文化・コンテクスト

 当たり前だが、新興国とひとくくりにしても、それぞれの国において文化やコンテクストは異なることを忘れてはいけない。

基本的な欲求は普遍的

 文化やコンテクストが異なるとはいえ、マズローの欲求段階説で分類されているような人間の基本的な欲求は普遍的であり、低次であればあるほど、新興国でもすぐに受け入れられる可能性がある。

 「エスノグラフィーを行う際には、こういった背景が前提として頭に入っていないといけない」と上平氏は注意を呼びかけた。

商品開発にエスノグラフィーを取り入れる方法

 そもそも、エスノグラフィーを取り入れるべきかどうかについては、どのタイミングで検討をすればいいのだろうか。白根氏は「ビジネスをしようとしている市場について、ほとんど何も知らないとき」や「市場の枠組みや競争のルールを変えたいとき」に取り入れるべきだと語った。

 また、大きなポイントとして、既存の製品やサービスについての問題を調査して改良を加えることは絶対にしてはいけないと指摘。このやり方で新興国に導入すると、往々にして価格が高くなるか、機能を減らして価格を下げるというパターンに陥るという。先ほど紹介した新興国の共通点にもある通り、新興国の人は誰も機能を減らしたものが欲しいわけではないし、そもそも問題を調査する段階でコンテクストの差異に気付いていないため、新興国の人々のニーズに合った製品になっている可能性は低いと言えると、白根氏は警鐘を鳴らした。

 これは、エスノグラフィーを用いて、人間中心のイノベーションを生み出すための手順だ。製品ではなく、ユーザーの調査から始めるところがポイント。例えば、インドでは自動車の購入に関しては、個人の問題ではなく、一族の大事な資産を決める家族の一大イベントだ。また、効率のために運転手が雇われるため、助手席はただの荷物置きとなり、オーナーは後部座席で何かをするという使い方が一般的。

 だが車の設計はそのような設計にはなっていない。さらに、インドでは車が大きくなればなるほどステータスになるため、かつては7~8年だった買い替えサイクルが、今では4~5年にまで縮まっている。そのため中古車を取り扱うWebサイトが流行しており、ローンの種類も充実してきた。わかってしまうと当たり前だが、このような大きなパターンを見つけて全体像を理解することが、「製品・サービスを利用する隠れた動機・ゴール=ニーズ」へとたどり着く近道なのだ。

新興国におけるエスノグラフィーの障害と解決策

 エスノグラフィーを用いたインタビューについて、具体的な質問事項を見てみよう。

  • 状況・モード…製品・サービスが利用される物理的、心理的な状況は?
  • 行動…何を、どのような順でするのか?頻度、優先順位は?
  • インタラクション…他にどんな人やメディアが関わるか?
  • 知識・能力…何ができて、何ができないのか
  • フラストレーション…イライラすること、我慢していることは?
  • メンタルモデル…対象をどのように捉え、どのように理解・判断するのか
  • 期待水準…どこまでが期待はずれで、どこからが当たり前なのか
  • 手がかり…どんなシグナルから、何を感じ、どんな判断をするのか

 こういった項目について、ユーザーの行動をコンテクストの中で観察しながら質問していく。その際、注意すべきポイントについて、白根氏は以下の3点を紹介した。

  1. 対象が広範囲に及ぶ…あまり深く考えずにリサーチを始めると、対象範囲が広すぎて、収拾がつかなくなる。
  2. 人種の違いによるバイアス/バリア…エスノグラフィーを行うチーム内での人種の違いによって、偏った見方になってしまう。
  3. コンテクストの違いによるsay-meanギャップ…同じ言葉でも、回答者の言っていることと、受け取る側の認識に差異が生じ、意味のギャップができてしまう。

 これらの問題を解消するためには、現地チームと共同でスコープ定義をしたり、カードを使ってゲーム感覚で本音が出やすい環境を作ったりする方法があるが、プロジェクト定義から導入支援までトータルで支援してくれる、m.c.t.のグローバルエスノグラフィーサービスを活用するのもひとつの手だろう。

グローバルPIMとfacebookの連携

 最後に、FatWire株式会社技術部木村潤氏によって、同社が提供するCMSを活用した、多言語でのfacebookページ(F-commerceを含む)を導入する方法についてデモが行われた。PIMとは、システムから特定データを取得して、変更があった場合には素早く同期することで、製品に関する情報をリアルタイムに一元管理するソリューションのこと。( 参照:PIM (product information management )

FatWire株式会社 木村潤 氏
FatWire株式会社 木村潤 氏

 デモでは、英語・日本語・アラビア語の3種類のfacebookページを作り、アプリケーションを通すことで、1回の作業で複数ページの情報を更新する流れが紹介された。

クリックすると拡大
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 実際には、エスノグラフィーの結果に従って、どの製品をどこの国で販売するかを一覧にしたマトリクスを作り、このデータに沿って入力をしていく。

 木村氏によるデモでは、管理画面でひとつの製品のステータスを変更すると、それぞれの言語で作成されたfacebookページの情報が瞬時に更新される様子が映された。グローバルにfacebookページを多言語展開する場合に、最適なサービスとなっている。エスノグラフィーと多言語facebookページの組み合わせは、今後のビジネスを大きく変えてくれそうだ。

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