日本のバイアスに惑わされるな。新興国で伸び続けるfacebookユーザー
まず始めに、イントロダクションとして、FatWire株式会社代表取締役 田中 猪夫氏によって、現在の新興国を取り巻く環境について紹介された。
「先進国に対するWebマーケティングは、『情報をわかりやすく伝え』『受け手が情報を探しやすくする』ための表現技術であるIA(Information Architecture)をいかに確実・効率的に実装するかがキモとなるが、新興国やBOP(Base of the Pyramid)に対してはもっと深く入り込んでニーズを探るところから始めなければいけない」と語る田中氏。
BOPとは、「Base Of the Pyramid」の頭文字をとったもので、世界の人口ピラミッドの基礎部分に位置する所得階層の人々のこと。一般的に年収3,000ドル以下、1日8ドル以下で暮らす人々を指すことが多い。(参照:BOPビジネスの可能性)
そんな新興国やBOPで今、急速に伸びているのがfacebookだ。7月6日にCEOのマーク・ザッカーバーグ氏がプレスイベントで発表した数字によると、過去30日以内にログインしたアクティブユーザーが7億5000万人に達したそう。(参照:マーク・ザッカーバーグ、facebookの活動中のユーザーは7億5000万人と確認)
「facebookのユーザー数動向が分かるsocial bakersによると、2011年7月時点で、世界最大のイスラム国であるインドネシアでは3,900万人、経済成長率が高いトルコでは2,900万人、エジプトでも800万人のユーザー数があります。日本で騒がれている実名性に対する論議はさておき、facebookは世界中で伸びており、新興国やBOPの人々を取り込んでいることは間違いない」と田中氏は語り、日本のグローバル企業がそこへ商売をしていかない手はないと、多言語プラットフォームであるfacebookに秘められた大きなビジネスチャンスを示唆した。
では、BEST BUYのようにfacebook上で商品情報のfacebookページや商品購入ができるサイト(F-commerce)を運営するにあたり、その国に合った商品を提供するには、どうすればいいのだろうか。
まず欲求と所得の相関を示した「5つの商品弾性率」のグラフの中で、商品がどのカテゴリに属するかを把握してから、各国のニーズを探る「エスノグラフィー」という手法を取り入れるのが効果的だと語る田中氏。それぞれの商品群は次の通りに分類される。
- 第1商品群…生活必需品。所得が低い時に欲しいもの(食→衣→住むところ)
- 第2商品群…代用品。所得が低いときに急激に伸び、ピークになり売れなくなるもの。自動車の代替え品の原付や自転車。豊かな社会になると第4商品群になることもある(自転車など)。
- 第3商品群…比較的ぜいたく品。所得がある程度の水準に達するまで欲求が出てこないが、第1商品群の伸び率がゼロになったあたりから出てくる。TV、自動車、バイク(複数台持つこともある)→従来の日本の輸出品。
- 第4商品群…純ぜいたく品。第3商品群の伸び率がゼロになるころに伸びる情緒性商品。DVD、TVゲーム、iTune音楽、ゲームなどいくつでも欲しくなる無限界商品。
- 第5商品群…情緒安定化商品。第4商品群までに生まれた格差感などに対し、情緒を安定させるもの。酒など。
これらを事前に把握することで、第1商品群(生活必需品)であれば新興国やBOPで販売すれば伸びる可能性は高いが、第4商品群を販売しても売れる可能性が低いなど新興国やBOP市場で何を売ればよいのか見通しを立てることが可能だ。田中氏は味の素が小分けで安くした商品を販売してBOP市場で爆発的な大ヒットとなった例などを紹介した。