長期的なブランドロイヤリティの向上を生み出す
700万人ほどの顧客に対して年間1,000本のキャンペーンを実施していたある通信事業者は、個別最適ではなく全体最適でキャンペーンの最適化を図ったところ、利益が約2倍になり、ROIで見ても200%近く改善できた。
また1,100万人ほどの顧客を抱えるある金融機関は、顧客当たり年間6回しかコンタクトしないというポリシーを徹底。その制約下でキャンペーンの全体最適を進めた結果、利益増加・ROI改善という成果につながった事例が出てきている(参考記事)。
こうした事例は分かりやすいが、「統合マーケティング・マネジメント」導入によって得られた直接的な成果ではない。その概念の中に含まれるキャンペーンの全体最適化を実施することによって初めて生み出された成果だ。
「統合マーケティング・マネジメント」が生み出す本質的な価値は、顧客が本当に必要とする情報を提供することによって顧客との信頼関係を築き、ブランドに対するロイヤリティを長期的に向上できることだと高橋氏は語っている。
現場の強い日本企業にこそ必要な概念
欧米ではCMOというポストが一般的なものになっているが、日本ではまだCMOという職が広まっていない。従って、マーケティング活動をトップダウンで戦略的に推進できている日本企業は少なく、ほとんどの企業が現場主導。だからこそ、「統合マーケティング・マネジメント」の概念を広める必要があると高橋氏は訴えている。
「日本企業は戦略に沿って資源配分することが苦手です。モノありきで、製品に紐付いて組織があります。ですから、『こうあるべきだから、この商品をもっと強くするべき』と思い切った舵取りをするところが弱い。現状を肯定するところから入って、そこから徐々に改善するところでは強いのですが、日本企業にはゴールを指し示すことができる人はあまりいません。『統合マーケティング・マネジメント』という概念を受け入れてくれる企業が日本にどれくらいあるのか、正直、われわれも不安に感じているところです。ですが、現場の強い日本企業なら、こういう考え方を少しでも取り入れてくれれば、もう一段レベルアップできるのではないかと期待しているのです。
戦略なしで現場が必死に考え、『この方が良いだろう』という判断が集合して企業活動になっているようでは、限度があります。ですから、経営層が思い切った戦略を指し示していけるようにするためにも、SASとして『統合マーケティング・マネジメント』を実現するためのプラットフォーム『SAS Marketing Operations Management』の提供を始めました。日本企業の手助けをしたいと個人的にも考えています。そうすることで、日本企業の競争力アップにつなげていきたいのです」