情報の主権はマスメディアから消費者へ
「かつては自社の商品がテレビに出ることはすごくうれしいことだったのに、今は昔ほどワクワクしなくなってきたという実感を私自身は持っている」
どきっとする言葉を語ったのは、スターバックスコーヒージャパン株式会社 マーケティング・カテゴリー本部 WEB/CRMグループ グループマネジャー 長見明氏。今日、情報を得る媒体は、ソーシャルメディア、マスメディアのどちらであっても消費者には関係のない時代になっている。
長見氏はここで『メディアの権力』(David Halberstam著、筑紫哲也・東郷茂彦訳、朝日新聞社、1999年刊行)という本を紹介した。かつてメディア(新聞・テレビ・雑誌)が、「司法」「立法」「行政」に次ぐ第4の権力になった歴史がこの本には書かれている。
しかしながら、かつて莫大な威力をもっていたメディア環境は、ソーシャルメディアの浸透により大きく変わった。情報の目利きであったマスメディアから、情報の主権は消費者の手に渡ったのだ。
バズを起こすためには、人を動かすストーリーが必要
ここで事例紹介にうつろう。4月17日に「スターバックス Summer Collection2012 in Roppongi」というファッションブランドとのコラボレーションイベントが行われた。スターバックスの商品「フラペチーノ」のカスタマイズを自己表現ととらえ、自己表現の楽しみ方であるファッションと結び付けて訴求するというストーリーがこめられていた。
このイベントでPRした新商品「チョコレートクッキークランブルフラペチーノwithホワイトチョコレートプディング」は従来のものよりも価格が高く、ネーミングが長く覚えにくいにも関わらず、発売当日にtwitterのトレンドとYahoo!JAPANの話題なうに「フラペチーノ」というキーワードがランクイン。夜にはNAVERまとめで「【スタバ】チョコレートクッキークランブルフラペチーノの感想」というページが作成され、バズがおこり、施策は大成功であった。
成功要因としてはビジュアル的に「わかりやすい商品」x「わかりにくい商品名」の組み合わせであったこと、TVパブリシティ、ファッションイベントにより商品を甘いだけではなくオシャレな飲み物と消費者にイメージづけできたことだ。「イベント単発で終わるのではなく、このイベントで長期的にいいお客さんをつなぎとめることができるのでは」と長見氏は語った。
見たいものしか見ない、聞きたいことしか聞かない消費者を振り向かせ、バスを起こすキーポイントは「商品に語るべきストーリーがあること」「キャンペーンにストーリーがあること」「Editor感覚での情報デザイン」「同時多発的情報発信」「インフルエンサー」の5つ。特に商品自体にストーリーがなければ消費者には響かない。
「リアルでバズらないことは、バーチャルでもバスらない。僕はそう思う。スターバックスは食べ物、飲み物を扱うお店なので、顧客のソーシャルメディアでの発信頻度は高い。バズを起こすためには、本質的にいいもの、人を動かすストーリーのある商品をつくることが必要だ」