スマートフォンで勝者となるために、LINEはPCを無視して設計した
急成長するLINEがいかに生まれ、なぜブレイクしたのか。舛田氏は、今まで何度も問われた質問を繰り返すことで講演をスタートした。
東日本大震災の3か月後の6月23日にリリースされたLINEは、単なるグループメッセンジャーだった。その後、10月に基本的なフレームである、無料通話、メッセージ、スタンプが使えるサービスになり、約1年でグローバルで4500万ユーザーに成長。その9割以上がスマートフォンユーザーだ。
国内スマートフォンの出荷台数に対するLINEのリーチ度は、3月末時点で44%。この快進撃について舛田氏は、「タイミングがよかった」と語る。
「やはりスマートフォンのネイティブのサービスとしてリリースできたことが一番大きい。そのスマーフォン市場が、まさに今、世界中で爆発的に成長している。そのタイミングでニーズをひろって最適なタイミングで出すことができた。」
また、LINEをつくるにあたって、何を残し何を捨てたのか。舛田氏らはマルチデバイス対応を良しとする考え方とは異なる道を選んだ。
「いま、我々がスマートフォンにシフトするタイミングで勝者となれるサービスがあるとしたら、それはPCのサービスをほとんど無視して設計したもの。PCサービスのスマートフォンへの移植は多くのデベロッパーがやっているが、PCとスマートフォンはそもそも違う。PCをスマートフォンに置き換えたときに、スマートフォン側のサービスがすごく複雑になる。簡単に言うと“スマートフォンらしくない”ものになってしまう。 」
人間関係をひとつの箱にぶち込んで「全部友達」とするのが今のSNS
LINEの開発にあたっては、Facebook、mixi、GREE、Mobage、メッセンジャーサービスなどにおける人間関係を調査した。Facebookは実名がキーとなって人がつながっていく新しい体験をもたらす。しかし、その一方で、また違ったニーズが生まれている。舛田氏はそれを「クローズドな関係」だと指摘する。
「親子、夫婦、恋人、同僚、上司では、それぞれ距離感が違うはず。それをFacebookや従来のSNSはひとつの箱に入れて“はい、全員これ友達です”とやっていた。そんなことは日常生活ではありえない。」
そのような空間ではパブリックな情報しか出せなくなる。本来、人はさまざまな顔を使い分けているはず。LINEはそこを分けて「分ける=クローズド」にしていこうとしている。舛田氏は、「そうすることによって、日常のたわいもない話や秘密の話、メールや電話でしていたようなコミュニケーションをLINE上で担うことができるようになった」と語る。
クローズドで、大切な人、知っている人とのコミュニケーションの場だからこそ、エモーションが生まれる。LINEでは、さらにこのエモーションをコミュニケーションだけではなく、マーケティングにも活かそうとしている。