成長のエンジンは商品力と圧倒的な価格競争力
EC開始から約6年で売上高50億円を突破した夢展望。急成長のエンジン役となったのは、商品力と価格競争力だろう。
夢展望がF1層に支持されているのは「圧倒的な低価格の商品」(同)によるものだ。その背景にあるのが、F1層の可処分所得が低下傾向にあるためだという。岡社長によると「F1層の可処分所得は平均して月額1~1万5000円」。経済的にゆとりのあるF1層が減る中、「ある程度の品質があり、低価格でオシャレな服が買いたい」というニーズを開拓したのだ。
例えばワンピース。F1層向けのアパレル企業では、高いところで1万円以上、安くても5,000円前後という価格設定が多い。だが、夢展望の価格は「平均を下回る2,000~3,000円」(同)。薄利多売のビジネスモデルに映るが、売上総利益率は平均6割と高い。自社ですべての商材を企画、海外で生産して販売する一気通貫のモデルで利益を創出。それをマーケティング費用などに投じ、今日の成長を導いた。
低価格商品で売り上げを伸ばすには、数量で勝負しなければならない。夢展望は平時で平均2,000型(SKUでは2万)の商材を取り扱う。「毎月300~400型」(同)の新たなアパレルを投入して在庫回転率を向上、購入頻度の引き上げにつなげている。
スマホの台頭、過去の成功体験が吹き飛ぶ事態に
ガラケーECで順調に成長を遂げた夢展望に突如降りかかった大きな波、それがスマホの台頭だ。「ユーザーが利用する携帯端末がスマホに変わったとたん、過去の成功体験が吹き飛んだ」(同)。
ガラケーECでは、大きな集客ツールとなっていたキャリアの公式サイトに広告を出稿するか、ECサイトがキャリアの公式サイトになっていれば、ユーザーはサイトに集まった。だが、スマホの出現がすべてを変えた。
スマホ利用者の多くはブラウザを立ち上げ、グーグルなどの検索サービスで目的のサイトにアクセスしようとする。これまで培ったガラケーECのノウハウが通用しない環境にガラリと変化しまったのだ。
より多くのF1層にサイトへアクセスしてもらうためには集客力の高い広告媒体の活用が必要だが、公式サイトを含め、「現状ではガラケーが主流だったときと比べて、効果が格段に低い」(同)。ガラケーECで培った過去の成功体験が全く生かせない状況に陥ったのだ。
