アプリ、ブランディングがスマホ時代に成長するための鍵に
夢展望が仕掛けた打開策は2つ。アプリ開発と「夢展望」の知名度を上げるためのブランディングだ。
スマホに対応したECサイトは10年頃までに構築、スマホサイトにユーザーを集客するためのテストを行っていた。行き着いた考えは、集客力が見込みにくい媒体に広告を出稿するのではなく、「広告以外の集客ツールに商機を見出そうとした」(同)。新しい集客ツールとして浮かんだのが、アプリの開発だった。
現在開発したアプリは約4種類。驚くことに、自社のECサイトや商品を積極的にアピールするアプリではない。例えばECサイト「夢展望」のアイテムを自由に着せ替えできるアプリ「YUMETENBO Collection ―夢コレ―」、料理のレシピや占いなどの情報を提供する「夢女子部DREAMERS」。エンターテインメント性を意識的に取り入れ、F1層の女性が毎日アプリを利用してもらえるように工夫をこらす。
アプリからECサイトで直接商品を購入する割合は決して大きくはない。だが、今後もアプリの開発は積極的に続けていくという。
開発や管理などに投じるコストは少なくはないが、現在はそのコストを集客のための宣伝広告費と捉えている。「アプリはこれから強力な集客ツールになる。当社もそれに対応していかなければならない」(同)と考えるためだ。
EC業界ではアプリを通じた販促で成果を挙げているケースは皆無に近い。現在は月商の60%近くがスマホ経由の売上高。アプリ対策など「想像以上にスマホの流れに乗れた。今後はEC業界で最初のアプリ活用の成功事例を作りたい」(同)と意気込んでいる。
「夢展望」が販売するアパレル商材などが部屋一面に飾られている
危機感が推し進める新たな取り組み、日本初のドラマコマースも
スマホ時代の突入で夢展望は大きな危機感を抱くようになる。村上高史販売促進部部長は「差別化を行っていかなければお客様はアクセスしてくれない」と危惧するが、こうした心理の変化が新たな取り組みを加速させている。その1つが、日本初というスマホでドラマを閲覧しながら商品が購入できる「ドラマコマース」のスタートだ。
「差別化しなければお客様は来ない」と危機感を募らせている
新商品の動画などを集めた自社運営の動画サイト「ドリームガールズTV」内で、10月から放映を始めた「野々村家の人々」。コメディドラマ風の動画を夢展望が企画。制作はアウトソーシングしているが、EC企業が企画するドラマというユニークな取り組みだ。
動画配信の意図は、ユーザーがアクセスするためのコンテンツを作ること。0話と1話は物販を行わない、純粋なドラマ。スタート当初は、ユーザーからドラマで着用している商品が購入しにくいといった声が殺到するほどだった。
スマホで動画を見ていると、出演者の着用した衣装の画像が表示され、クリックすると販売ページに遷移できる仕組みを開発したのは12年末。2話目の放送開始となる12月13日から、ドラマを楽しみながら、出演者が着用した夢展望製品を簡単に購入できるようにした。
エンターテインメント性を持たせることで、アプリやドラマを、F1層が毎日アクセスしたり、楽しんだりするメディアに育成する狙いがある。「アプリも動画も“売り”の要素を全面的に出さないようにしている」(村上部長)。それは、アプリなどを将来的な集客メディアとして育てる長期的なビジョンがあるからだ。
