デジタルファーストには発想の転換が必要
編集部:「impress QuickBooks」は電子端末向けの出版ブランドとのことですが、紙の出版とはなにが違いますか。
北川:一番の違いは、紙の書籍を電子化するのではなく、デジタルファーストの発想で電子書籍をつくることです。企画段階から電子端末向けに、商品開発を行います。
編集部:紙の書籍を電子化するケースの方が多いと思いますが、あえてなぜデジタルファーストにこだわるのでしょうか。
北川:紙の書籍を電子化だと電子書籍ならではの良さを活かせていないと感じるからです。
実は電子出版は、世界に先駆けて日本から始まっています。2000年頃から徐々に拡大し、2011年には600億円規模に膨らんでいます。
しかしコンテンツの大半は漫画で、文芸書やビジネス書、専門書といった幅広い分野のタイトルが流通するアメリカとは、性格が大きく異なります。例えば日本の電子書籍は、端末の制限を考慮していません。表示文字数が少ない端末では、紙向けに編集された書籍はとても見づらかったりします。もっと電子書籍の良さを活かすため、表現、ボリューム、構成など「電子生まれ」の商品開発が必要だと考えました。
編集部:なるほど、同じ本でも、紙と電子では別モノと考えた方がよいのですね。
河野:電子書籍とは、印刷や流通業界の「当たり前」から解放されたもの、と考えるとよいかもしれません。価格も、ページ数も自由。書籍は1冊200ページ程度ですが、10ページでも1000ページでもいいんです。
編集部:まず、ページ数という制約から解放される。
北川:「impress QuickBooks」のキーワードは「Quick」ですが、そのひとつに「Quickに読む」という意味合いを込めました。文量は2万文字程度で、紙の書籍では30~90ページ前後のもの。通勤通学時などに、コンパクトで気軽に読めるボリュームが、デジタルならではの強みだと考えています。
編集部:価格はいくらぐらいの設定ですか。
北川:試行錯誤の途中ですが、大胆な価格設定が可能です。従来のように「200ページだから1,500円」ではなく、50円でも500円でもいいんです。印刷代と紙代から解放されているのですから、読者数と総売上が最大になる価格を設定すればいいわけです。100円が最も読まれる金額であれば、そうすればいい。ちなみに、「impress QuickBooks」の書籍の多くは500円程度です。