2013年のスマートフォン広告市場規模は1,166億円へ
「6,640万」。CyberZのスマートデバイスアドテクノロジー事業部でプロダクトマネージャーを務める中村智武氏は、講演の冒頭でこの数字を掲げた。「これは、今年2013年末のスマートフォン普及台数の予測数値。現状で約4,500万台と言われているので、おそらく達成されるだろう」と述べる。
中村智武氏のプロフィール
2012年7月、株式会社CyberZ入社。スマートフォン広告効果測定ツール「Force Operation X」(F.O.X)のプロダクトマネージャーを務める。国内・海外におけるスマートフォンメディアとの計測連携や計測技術の開発を指揮する。2002年から8年間、日本オラクルにてデータベースエンジニアとして大規模環境におけるデータ分析システムを担当。2010年、フロンティアNEXT株式会社のCTOに就任。スマートフォンアプリ開発事業に従事し、多数のサービスをリリース。
この数年でスマートフォンは爆発的に広がり、オンライン広告戦略において主戦場になりつつあるのは言うまでもない。そうした状況にいち早く着目し、スマートフォン広告の代理業・プロモーション、および効果測定ツール「Force Operation X(F.O.X)」の開発などを手がけているのがCyberZだ。営業・運用、クリエイティブに加えてシステムを自社開発している点を強みとする。
同社はこのほど、ITや医療分野などの調査およびコンサルティングを手がけるシード・プランニングと共同で、スマートフォン広告市場動向調査を行った。これによると、2012年のスマートフォン広告市場規模は856億円。今年にはそれが1,166億円へ、さらにその先も毎年2~3割増で伸長すると予測され、2016年には2,056億円と2000億円を突破する見込みだという。
スマホ広告市場の内訳、実に6割はリスティング広告が占める
「この調査のリリースを3月に発表したところ、日経朝刊に『スマホ広告2000億円超に16年、ネット向けの2割』との見出しで記事が掲載された。それだけ、業界として社会的な注目も集めていると思う」と中村氏。
2012年の市場規模の内訳を見ると、6割をリスティング広告が占め(62.4%/534億円)を、次いでディスプレイ広告(24.5%/210億円)、成果報酬型広告(13.1%/112億円)となっている。
これには、「広告主の業種との相性も影響している」と中村氏は解説する。「例えばリスティング広告ではECや金融、不動産、旅行や教育系が中心。一方、ディスプレイ広告はアプリのプロモーションに使われることが多く、ゲームや電子書籍、不動産や旅行などの情報サービスも市場の伸長に寄与している。また、成果報酬型広告はアプリのインストールを成果とした課金モデルが主流になりつつあるため、同じくゲームや情報サービスのアプリのプロモーションに使われている」(中村氏)
また同調査では、現在トレンドになっているRTB流通額も予測。これによると、昨年は10億円だったものが今年は3倍の30億円、その後は倍々の伸長を見込み2016年には200億円と予測している。
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スマートフォン広告市場の3つの課題
現在、ターゲティングの技術が進歩し、獲得したいユーザーに効果的にアプローチできる策が続々と誕生している。一方で、同調査から興味関心に合ったものであれば、ユーザーの側も歓迎していることが明らかになった。
その調査では「あると嬉しいスマートフォン広告は」という問いに対して43%の人が「自分の趣味嗜好に合うもの」と答え、1位となっている(次いでクーポンなどのお得情報・38.2%、年代性別職業などの自分の属性に合うもの・27%)。
「広告を最適化すれば、より多くのユーザーに接触できる可能性がまだまだ広がっている。とはいえ、手法やプレーヤーがあまりに多いため、実際どうすればいいのか迷う広告主が多いのも現状」と中村氏は語る。そしてその状況を踏まえて、スマートフォン広告市場の課題として次の3つを提示する。
1.広告主の未形成
2.フラグシップ媒体の不在
3.多様かつ複雑な配信ルール・規制
「まず、一つ目としては広告主層の未形成が挙げられる。スマートフォン広告市場が伸長しているのは事実だが、まだPC広告ほど広告主のバラエティがなく、一部の業種が大量に投下している状態だという。ロングテール型の出稿を行う広告主も少ない。次に、フラグシップ媒体の不在。メディアサイドも未だ群雄割拠の状態で、リードするプレーヤーがいない。そして三つ目は、多様かつ複雑な配信ルール・規制だ。特にAndroid OSに比べてiOSの規制は厳しく、端末IDの利用不可の問題や、OSで異なるトラッキングルールなどが課題になっている。また、個人情報保護の観点から、Android OSにおいても現在では端末IDの利用を控える風潮が主流だ」(中村氏)
スマートフォン広告の効果測定の大きなハードル
この3つ目の課題が、スマートフォンの広告効果測定にあたって大きなハードルとなっていると中村氏は語る。
「PCの場合はOSにとらわれずトラッキングが可能で、Webブラウザのみを追えばよかった。しかしスマートフォンはOSごとの規制の違いに加え、Webかアプリかというアクセスの違いがあり、複雑を極めている。これを一元化して効果を把握し、最適化を図っていくのは至難の業だ。
WebならばCookieを利用してコンバージョンを追えるが、アプリの場合は前述の端末ID利用の問題があり、同じように測定できない」(中村氏)
・端末IDの問題
・アプリ面広告
・iOS/Androidで異なるトラッキングルール
また端末IDに関しては、別の問題もあるそうだ。日本と海外とではその捉え方に差があるため、スマートフォンアプリの市場は言語の壁さえ超えればグローバルに広がっているにもかかわらず、海外のプレーヤーと同等に肩を並べるのが難しいのだ。
「実は、先ほど述べたような端末IDを回避する方法を取っているのは日本のみで、海外では、そこまで端末IDの利用に厳しくない。また、アプリを市場に出すことはできても、次にマーケティングや広告出稿のハードルが待っている。日本では広告会社ごとにトラッキングシステム機能が異なり、それに任せていることが多いが、海外では代理店文化が薄く自社で出稿することの方が主流。これらが相まって、グローバル展開がしにくい現状がある」(中村氏)
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媒体横断的にスマートフォン広告の一元管理を実現する「F.O.X」
こうした状況を、CyberZではワンタグ/ワンSDKの導入と、国内・海外とも150社を超える世界最大級のメディア連携数を実現することで解決策を提示している。同社が開発・提供する、スマートフォン広告効果を最適化するトータルソリューションプラットフォーム「Force Operation X」(以下、F.O.X)は、国内初、そして現状では唯一の効果計測テクノロジーによって、スマートフォン広告における全方位測定を可能にした。また、プロモーションニーズに応じた追加機能開発をすぐに実行できる体制を持っているかどうかもポイントとなりそうだ。
中村氏は「特に今、中長期的な広告効果指標のスタンダードになりつつあるLTVを、媒体横断で管理することがカギになる」と指摘する。そのためには、ワンタグ/ワンSDKの埋め込みだけでなく、媒体の連携が不可欠と言える。
媒体横断的にスマートフォン広告の一元管理が可能になると、レポートを一元化することができる。これにより、運用指標に基づいた本当に有効なメディアプランニングができるようになるのだ。
さらに、「ユーザー獲得の瞬間だけを見ていても広告最適化にはつながらない」と中村氏。「メディアによって、すぐに離脱してしまうユーザーと1か月続くユーザーが分かれてきたり、ダウンロードした時点、実際に使われた時点などのどのタイミングでコンバージョンとするかで成果が変わったりもする。ユーザーの重複はもちろん、こうした動向まで加味できる効果測定ツールを活用することが、成否の分かれ目になる」(中村氏)
進化する技術に対応する効果測定ツールを選ぶ
「ここまで、広告“枠”の最適化についてご紹介してきたが、同時に“人”への最適化を考えることも、今後のスマートフォン広告運用では欠かせない視点」と、中村氏は切り出す。その観点からは、リターゲティングやオーディエンス拡張、第三者配信などの手法が非常に有効だ。今後、F.O.Xは1,000アプリを超える導入実績に基づくユーザー行動分析データを、広告配信に活かしていくという。
しかし、前述したCookieの利用不可の問題などがあり、理想的な形で実現するには一筋縄ではいかない。そこで現在、Cookieを利用せずにユーザーを認識しようとする動きが起きつつあるという。
「一つは、フィンガープリンティングを活用する方法。媒体共通のID化が課題にはなるが、Web・アプリの横断的なリターゲティングが理論上は可能だ。二つ目に、Appleが広告主向けに用意しているiOSアドバタイジングIDを活用する方法。こちらは、当然iOSに限られてしまうこと、Web面やWebView内広告のトラッキングができない点が課題になる。そして三つ目は、第三者配信とDMPの組み合わせ。これがもっとも有望だ」と中村氏。
「広告主が得たデータをデータプロバイダとシンクロさせることで、媒体間でのターゲティングが可能になるのでは」と中村氏は今後の展望を述べ、講演を締めくくった。
先に述べたように、2016年には2,000億円を突破すると予測されているスマートフォン広告市場。そしてその急速な市場拡大は、アドテクノロジーの進化が牽引していくと言えるだろう。
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