2001年カンヌ国際広告祭におけるブランデッド・コンテンツの芽吹き
2003年6月のカンヌ国際広告祭の審査は、揉めに揉めていました。どの部門にも収まりきらないが、素晴らしすぎるある作品をめぐって、意見が百出していたのです。そのある作品とは、2001~2002年にかけて制作されウェブで公開された、BMWフィルムズと呼ばれる作品でした。
このBMWフィルムズは、通常のテレビCMを制作してテレビで放映するのをやめて、その予算をすべて、ガイ・リッチー、ウォン・カーウァイら有名監督7人による7本のショートフィルムを制作することに使用したものでした。20数億円の予算のほとんどは、マドンナ、ミッキーロークなど大物も出演したショートフィルム制作費と、そのショートフィルムのPRに使われたのです。
そしてそのBMWフィルムズは、公開開始の2001年4~12月で1,400万回も見られました。そしてサイトから「友達に知らせる」バイラル・メールが300万通送られるという、当時としては目覚ましい結果を残したのです。
カンヌ国際広告祭では結局、真に革新的な作品/施策に与えられる新しい部門(チタニウム部門)がその場で創設され、BMWフィルムズは初代の受賞作に選ばれました。テレビCMと比べることも出来ない、サイバー部門と呼ばれるウェブ部門でバナーと比較することも難しい、今までの部門分けには収まりきらない「真に革新的な広告コミュニケーション」ということになったのです。
10年前の広告界において、BMWフィルムズがいかに「革新的」であったかを伺い知ることの出来るエピソードです。ちなみにチタニウム部門を創ったのは良かったのですが、真に革新的な作品/施策はそう簡単には現れず、次年度から3年にわたって“グランプリ該当作なし”が続くことになりました。
私が知る限り、「ブランデッド・コンテンツ」という言い方を、ポツポツと耳にし目にし始めたのは、このBMWフィルムズ辺りからです。