本コラムでは、オンラインマーケティングに関する事例が豊富な米国のニュースマガジンや、レポート、オンライン・コンファレンスなどの情報の中から、気になるトピックを取り上げご紹介していきたいと思います。第一回目はアクセス解析に対しての日米の認識に違いについてをご紹介します。
ITアレルギーな日本
先日、とあるネット系広告代理店の方々と、マーケティングの専門家とオンラインマーケティングについて話をしていたときのこと。「アクセス解析 はマーケティングではないでしょう」の一言に軽いショックを受けました。「あれは、ツールだからね」
なるほど、おっしゃるポイントは理解できます。私自身、昨年虎ノ門で開催されたアクセス解析のカンファレンスに参加した時、同じような印象を受けたのを思い出しました。参加した多くのセッションが、「このツールを使えば、こんな事ができますよ」という技術主導のお話で、期待していた「導入して、どのようにマーケティング(=企業活動)で生かされたのか」といった事例が少なかったのです(アクセス解析に特化されたカンファレンスで、大勢の方々が参加されたという意味では画期的なイベントだったのですが)。
Webを企業活動に活用するメリットの一つは、アクセス状況などのデータを容易に収集できることです。既存のマーケティングでは、インタビュー調査などで時間とお金をかけて収集してきた情報が、Web上ではページの閲覧状況からどのような商品に関心が集まっているのか、どれだけのユーザーが直前で購入をやめてしまったのか等の情報がリアルタイムにわかりますので、より検証⇒改善をしやすくなりました。
しかしながら、Webサイトへのアクセス状況を理解するためにはツールの導入などITと切っても切れない関係があります。Webサイトを担当している多くの部署はWebの専門ではなく、ITとは無縁だった広報、広告、営業といった部署が担当するケースも多く、ツールの導入そのものがハードルとなり、Webから収集できる情報から価値を引き出すまでには至っていないようです。
Web Analysisの重要性
米国のオンラインマーケティングの分野では、Web Analysis(Web分析)がWebを活用したマーケティング活動の中で大変重要なものであるという認識が強まってきています。米国のオンラインマーケティングに特化したリサーチ会社MarketingSherpa Inc.(マーケティング・シェルパ社)のアン・ホーランド女史によると、2006年1月における米国の求人の中で、Web分析専門担当者の求人はなんと、100社!もありました。専門家不足が、米国企業にとって深刻な問題だというあらわれです。
それでは、米国と日本ではなぜこのような認識の違いがあるのでしょうか?冒頭で登場した、ネット広告代理店の方や、マーケティング専門家の方にお話を伺う中で、下記のような背景が見えてきました。
1 一般的に日本のマーケティングは、米国ほど数字による分析を重要視しない
2 ひとことでWebといっても、ネット広告は広告部門、Webサイトは広報部門、プロモーションは販売促進部門と、異なる部門がWebを使っているので、どこの部門がアクセス解析の予算を出せばいいのかわからない(結果、アクセス解析は後回しになってしまう)
3 アクセス解析ツールの導入で、どれだけ儲かるかわからない(だから、上司を説得できない)
インプレス社の『インターネット白書2005』によると、Webを活用している企業の中で、アクセス解析を定期的に行っている企業は全体の半分にも満たず(44.1%)、残りの企業は不定期に解析(29.2%)するか、あるいは現状まったく自社のWeb状況を把握できていないようです。これらの状況をひとことでまとめると、「効果や使い方がわからないから、アクセス解析は敬遠される傾向にある」といえるようです。