オムニチャネルは危険なチャネル?
日立ソリューションズが発表した「ファンビジネス向けCRMソリューション」は、オム二チャネル化した消費者の購買行動に沿ったサービスを継続的に実施し、見込み客をファンに育成するトータルなO2Oマーケティングを支援する。ターゲットは、スポーツ、エンターテイメント、商業・アミューズメント施設など、会員サービス向上や集客を必要とする分野。
現在の消費者は、オンラインとオフラインを行き来しながら購買行動を行っている。120兆円といわれる消費支出のうち、O2Oでの購買はまだ30兆円ほどだが、将来的には全体の50%くらいまで成長すると見られている。成長が期待できるO2O市場に対して日立ソリューションズが提案するのが「ファン向けトータルCRMソリューション」だ。
O2Oマーケティングに必要な会員向け機能と運営社向け機能を網羅したプラットフォームを、クラウドサービスでスピーディに提供。ファン特性・行動履歴のプロファイリングにより、ターゲット客をファン(リピート顧客)に育成し、会員数の増加、集客力・購買率の向上を実現する。もちろん、既存のECサイトや販売管理システムと連携し、販売実績の集約も可能だ。
日立ソリューションズ 産業・流通ソリューション事業部 事業部長の西條 洋氏は「多様なデバイスを駆使して、オンラインとオフラインを行き来する消費者の行動はオムニチャネル化している。しかし、家電量販店がショールーム化している状況を見ると、オムニチャネルというのは非常に危険なチャネルとも言える。販売する側が顧客をどうとらえるか、そして顧客の購買行動に沿ってどうファン化していくか。それができなければ事業は大きくならない。今回はそのためのソリューションを提供する」と解説した。
O2Oマーケティング成功のカギは「来店時の感動を最大化すること」
続いて登壇した日立ソリューションズ 産業・流通サービス本部 主任技師の藤原英哉氏は、「O2Oマーケティングの成功のカギは、来場・来店時の感動を最大化すること」と語る。
本プラットフォームを導入することによって、オムニチャネル化する接点で得られるデータを蓄積。それを分析し、会場や店舗に「行きたい!」と思わせるサービスを提供し、ファンを育成していくことが可能になる。
「どの業界も施策はやっているが、部署間の壁、企業間の壁、システム間の壁がある。データはあっても統合的に活用できていない。今回のソリューションはバラバラになっている部分を統合し、データを集中管理して、既存のサービスも含めてPDCAをまわしていく」と語る。
今回のソリューションは、クラウドを通じて「ポイント」「QRコード会員証」「メルマガ」といった機能をコンポーネント単位で提供。既存システムに合わせて必要な機能だけを選んで利用することができる。
ファン化の過程では、見込み客をファンクラブに誘導し、さらにファンを有料会員に誘導というように、離脱率の低い、顧客価値の高いファンの育成を支援。会員組織にステージをもうけ、ステージごとに特典を与えたり、オンラインとオフラインで共通のポイントプログラムも提供することができる。
ターゲットとしている市場は、プロスポーツ、エンターテイメント、EC+店舗、アミューズメント施設、小売業、商業施設の6つ。このうち、今シーズンから本ソリューションを導入しているヤクルト球団を事例としてデモンストレーションが行われた。
チケットを買ってからも続くワクワク感
ヤクルト球団が本ソリューションを導入した目的は次の4つ。
・自社チケット販売によるチケット販売委託手数料の低減
・デジタルチケット導入による当日のチケット購入待ち時間の短縮
・利用者のデータをもとにしたPDCAマーケティングの実践
・ポイントプログラムを活用した利用者の深耕
デモンストレーションでは、ヤクルトスワローズファンのカップルがチケットを買って球場へ行くまでを社員による寸劇で紹介。まず、会員登録すると「マイページ」が用意され、ここで運営社はさまざまな情報やコンテンツを提供することができる。
オプションのチケット販売サービスでは、ぴあと協業して高機能なGUIを提供。チケット購入の際の座席指定では、座席からどんなふうにグラウンドが見えるかを確認することもできる。チケットの引取方法は4種類あり、QR発券の場合は手数料がゼロになる。さらに、チケットを買ってから試合当日までの間、マイページでは会員限定のデジタルガイドブックが閲覧可能になったり、次の試合で活躍する選手を予想するゲームも提供する。
試合当日は、スマートフォンからマイページにある発券用のQRコードを表示しておけば、発券用のiPad端末にかざすだけで発券できる。試合開始までの待ち時間にはクイズが出題され、球場で得たヒントをもとにマイページから回答する。
試合終了後も楽しめるよう施策は続く。チームが勝利するとポイントが付与されるほか、マイページで球場への来場履歴や、来場したときのチームの勝率まで確認できる。また、たまったポイントはさまざまな球団グッズと交換することも可能だ。
このように、1枚のチケットをネットで購入したことから始まる関係性を最大限に活かしてエンゲージメントを高めていく。試合を待つ楽しみ、試合当日の熱狂、試合後の余韻。ファンの気持ちの変化にまで配慮した柔軟な施策を展開することができる。
データ分析と施策立案がスムーズに
こうしたファンの行動は、本ソリューションを通じて蓄積され、データ分析によるサービス改善や施策立案につなげることができる。
ポイントをたくさん持っている人ほど来場回数が多いことがわかれば、ポイントをつかって来場回数を増やすような施策を考えることもできる。デモンストレーションでは、来場するとポイント3倍にする特典を付与することで、人気のあるビール券と交換可能なポイントを一気にためられる施策案を提案。
本ソリューションを使えば、特典をアピールするためにメールマガジンを送ることができる。3日後の試合に間に合わせたいという場合でも、送付先リストの抽出をすぐに行うことができる。もちろん、メールマガジンを送ったあとの結果の分析も可能だ。
本ソリューションが威力を発揮するのは、会員数1万人から20万人くらいの規模だというが、もちろん100万規模にも対応は可能だ。
本ソリューションは9月5日に提供を開始する。目標は、2017年までに総会員数1000万人を獲得すること。事業部長の西條氏は「日本人の10人に1人が使ってくれるサービスを目指したい」と語った。
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